最高裁が東京高裁の「再審認めない」決定を取り消し…袴田事件とは

静岡県・旧清水市のみそ会社専務一家4人が殺害された事件

 1966年、旧清水市で、みそ会社の専務一家4人が殺害された事件。この事件で逮捕・起訴されたのが当時30歳の袴田巌さんでした。その後、死刑が確定しますが、2014年に裁判のやり直しを決定。袴田さんを48年ぶりに釈放するという極めて異例の措置を取りました。

2014年、静岡地裁が再審を決定 

袴田巌さん:「戦いは勝たなければしょうがない、負けたんじゃね。負けりゃ、死ぬんだから。死んじゃしょうがねえ」

 袴田事件では、重要証拠として「5点の衣類」と呼ばれる血まみれの衣類が見つかっています。半世紀ほど前の裁判では、袴田さんが被害者を殺害した際に着ていたものと認定され、死刑判決の大きな証拠になりました。

 しかし、2012年に弁護団が最新のDNA鑑定をしたところ、血液のDNA型が袴田さんと一致しませんでした。

「5点の衣類という最も重要な証拠が捜査機関によってねつ造された疑いがある」

画像: 2014年、静岡地裁が再審を決定

2014年に裁判のやり直しを認めた静岡地裁も、この血まみれの衣類のねつ造を指摘していたのです。

2018年 東京高裁が再審決定を取り消し 

しかし、おととし6月…。

 東京高裁は、裁判のやり直しを認めた静岡地裁の決定を取り消し、再審開始を認めませんでした。ねつ造の疑いがあるとされた5点の衣類についても「具体的な根拠に乏しく、抽象的な可能性に過ぎず、捜査機関がねつ造した合理的な疑いはない」としたのです。

画像: 2018年 東京高裁が再審決定を取り消し

 一方で、東京高裁は袴田さんの健康状態を踏まえて、「逃走の恐れが高まる危険性は乏しい」として釈放維持を決定。

姉の秀子さん:「身柄は拘束されないと書いてあるので一安心です。弁護士さんに頼るしかない状況ですが、頑張って参ります」

 これに対して、弁護団は特別抗告を行い、司法の判断は最高裁に移されていました。

 そして、きょうまでに最高裁が下した「高裁への審理差し戻し」の決定。いまだ死刑囚の肩書を持ったままの袴田巌さん。来年3月に85歳の誕生日を迎えます。