新型コロナ4床のために一般病床70床の閉鎖が必要 民間病院「将来的な経営問題が大きくなる」 静岡・焼津市

 全国的にいぜん深刻なのがコロナ病床のひっ迫です。厚生労働省の去年11月末時点のデータを見ると、病院数は民間が圧倒的に多い一方、新型コロナの患者の受け入れが可能と報告した割合は圧倒的に民間が少ないのが分かります。

画像1: 新型コロナ4床のために一般病床70床の閉鎖が必要 民間病院「将来的な経営問題が大きくなる」 静岡・焼津市

 そうした中で今、民間の病院が岐路に立たされています。政府が民間病院でのコロナ病床の増床を求めているのです。

林輝彦アナウンサー:「焼津市にある民間病院、甲賀病院です。現在、こちらの病院では新型コロナウイルスの患者を受け入れていませんが、準備は着々と進んでいます。その準備の背景には苦渋の決断がありました」

 高齢者のリハビリを始めとした慢性期医療に力を入れる焼津市の甲賀病院。現時点で県からの要請はありませんが、コロナ患者を受け入れられるように病棟の確保を整えています。ただ、そこにはきわめて高いハードルがありました。

林アナ:想定では何人ぐらいコロナ患者を受け入れられそうですか?

甲賀病院 甲賀美智子理事長:「4人にしようと思うんですね。ただ、そこに1単位の看護体制を作るためにね1病棟は閉鎖しなければいけないので、おそらく70床が閉鎖される形になる」

 コロナ病床4床のために、一般病床70床を犠牲にしなければならないのです。院内感染を防ぐために1つの病棟をコロナ病棟に変更。その病棟のスタッフをコロナ病棟に充て、現場で従事するスタッフを一般病棟と完全に切り分けなければなりません。専門的な人材の確保も必要です。

林アナ:感染症専門の医師というのは?

甲賀病院 甲賀美智子理事長:「呼吸器の内科医がいません。最初の時点で静岡県の方から『受け入れるつもりはあるか』と聞かれたときに、当院は呼吸器内科の専門医がいないので、受け入れる事は出来ません、と言っています。ただ、それでも受け入れろということであれば、受け入れる準備はあります」

画像2: 新型コロナ4床のために一般病床70床の閉鎖が必要 民間病院「将来的な経営問題が大きくなる」 静岡・焼津市

 さらに、民間ならではの深刻な問題が…。

甲賀病院 甲賀美智子理事長:「だいたい1床一日5万円ぐらいですので、70床で1日350万円です。だから1カ月で大体1億のお金が出て行く事になります。短期間であれば、何とかなると思うんですけれども、長期にわたると、将来的に大きい負債になると思います。それと風評被害、そこにコロナ患者さんがいるとなったら外来の患者は減るし、入院患者も当然減ります」

 そうした中で、政府は先月22日、患者受け入れの勧告を拒んだ医療機関名を公表できる感染症法の改正案を閣議決定しました。改正感染症法は、あさってにも成立する見通しです。

 ただ、そもそも受け入れ設備が整っていない病院も少なくないとみられ、甲賀理事長は病院名の公表は患者の受け入れ拡大につながらないとみています。やはり、財政面での支援が不可欠だといいます。

甲賀病院 甲賀美智子理事長:「赤字を補てんされるわけでもないし、将来的な経営の問題が大きくなると思う。きちんと(行政が)補てんすることがあればいいですけど、(国が重症病床1床あたり)1500万円出すからいいでしょうという感じでは、民間はなかなか踏み切れない」

 県は病床確保のために病院への財政支援を強化する方針で、回復したコロナ患者を受け入れた病院への助成や、コロナ患者の受け入れ病院でクラスターが発生した場合に最大5000万円を支給するなどの新たな支援策を打ち出します。