彼女が自動販売機でケーキを売るワケは? こだわりはグルテンフリー 静岡・函南町

 静岡県函南町の住宅街でユニークな自動販売機を発見しました。12個ならぶボックスの中にはケーキやクッキーが入っているんです。

画像1: 彼女が自動販売機でケーキを売るワケは? こだわりはグルテンフリー 静岡・函南町
画像2: 彼女が自動販売機でケーキを売るワケは? こだわりはグルテンフリー 静岡・函南町

それでは 実際に買ってみることに…。いろいろと並んでいますが、今回はロールケーキ3個で1000円という商品にします。

「500円硬貨を2枚1000円分を入れます」
「鍵をあけて商品を取り出しますと、中には、箱に入ったロールケーキが3個ありました」

 ユニークな自動販売機 その正体はケーキと焼き菓子の販売機でした。

親を介護しながらケーキを売る 選んだのは自販機での販売

画像1: 親を介護しながらケーキを売る 選んだのは自販機での販売

 この洋菓子を作っているのは 「ケーキ・デポ」のオーナーパティシエ、野田孝子さん。27歳の時に洋菓子の世界へ。静岡県三島市内でケーキ店のオーナーパティシエを務めた後、東京のホテルのパティシエとして働いていた経歴をお持ちの方。

ケーキ・デポ オーナーパティシエ 野田孝子さん:「親の介護をしているので、普通のケーキ屋さんのように対面販売することが難しいと思いました。そこで自動販売機でケーキを販売することにしました」

画像2: 親を介護しながらケーキを売る 選んだのは自販機での販売

 2008年当時、野田さんは49歳。東京のホテルでパティシエとして働いていましたが、高齢の両親の介護をするために仕事を辞めて実家の函南町に戻りました。そして自宅を改造してケーキを製造するためのキッチンを造りました。両親の介護を1人でしつつ、その合間にお客さんの要望に沿ったオーダーメイドのケーキを作り、販売しました。

父親は寝たきり…対面での販売は難しく

画像: 父親は寝たきり…対面での販売は難しく

Q.野田さん1人で両親の介護をしたのはどうしてか?
野田さん:「私の両親なので最後まで私が責任を持って、しっかりと介護をしたいと思いました。施設に預ける提案もありましたが、自分が本当に最後まで両親の面倒を見たという心残りのない介護をして、両親にも喜んでもらいたいという気持ちが強かったので、1人で介護をしました」

 認知症を患っていた 母親「タイさん」は3年前に95歳で亡くなりました。現在は 足が不自由でベットから起きあがれない父親の晴彦さん(93)の介護をしています。

Q.現在の状況は?

野田さん:「3年前に無事に母親を見送ることができました。2人の介護から1人の介護になってケーキを作る時間が増えました」

ケーキを作る時間は増えたが…

画像: ケーキを作る時間は増えたが…

 ケーキを作る時間は増えましたが、自宅で父親の介護は続いています。対面での販売をすることはできません。新型コロナウイルスの影響もあり、なんとか販路を増やそうと思いついたのが、自動販売機での販売でした。
 県の持続化補助金を利用して両替機、自動販売機を店の駐車場に4月1日に設置しました。

スタート好調 夕方補充しても、朝には…

野田さん:「始めたばかりなのもあって、夕方5時か6時には8割方が空になってしまう。そこからちょっと追加分を作るんですけれど、夜にコンビニ感覚で、散歩の途中に買ってくれるので、朝見てみると、売り切れている時もある」

 取材したこの日の朝、「ケーキの自動販売機」は売り切れ状態です。野田さんは 午前6時30分から ロールケーキ、チョコレートケーキ、チーズケーキ、クッキーを作っては包装、作っては包装を繰り返していました。忙しい状況に見えますが、野田さんはとても楽しそうです。

野田さん:「想像力をかき立てて配合とか自分なりのものが出来ますので、そういう意味でも とても楽しいです」

 野田さんに販売方法などをアドバイスしている商工会の前島さんに、野田さんの人となりについて聞きました。

函南町商工会 経営指導員 前島浩樹さん:「とても真面目な方で何事にも一生懸命やる方ですね。ケーキやお菓子作りの技術がとても高い」

こだわりはグルテンフリー

画像1: こだわりはグルテンフリー

 この店の自動販売機で売られているケーキと焼き菓子は、すべてグルテンフリー。小麦粉を使っていないのです。でも どうしてグルテンフリーにこだわるのでしょうか?

野田さん:「アレルギーの人向きのケーキはあまりおいしくないというイメージがあります。けれども、ケーキはお誕生日やお祝いの日に食べる、楽しくておいしいものでなければいけないものだから、アレルギーを持つ人にもアレルギーを避けながらおいしく召し上がっていただきたいと思って、グルテンフリーのケーキを作っています」

画像2: こだわりはグルテンフリー

小麦粉の代わりに米粉を使った「米粉のキャラメルロール」

 自動販売機で売られている人気のケーキがこちら。その名も「ほんとうにおいしいチョコレートケーキ」(2個800円)。フランス産のチョコレートを2種類使用、濃厚なチョコレートの旨味が口いっぱいに広がります。

 こちらは「米粉のキャラメルロール」。小麦粉の代わりに米粉を使ってあり、スポンジはくちどけが良く。

画像3: こだわりはグルテンフリー

 ほろ苦い自家製キャラメルソースはくせになります。4月1日から販売を開始した「ケーキ・デポ」の自動販売機、お客さんの反応は?

◎函南町からの来店客(自販機は2回目)
「グルテンフリー自体がなかなかお菓子ではない。私自身が健康に気をつけていて、なるべく小麦粉は取らないようにしている。なので米粉のクッキーとかケーキがあるので、とてもうれしい」

◎函南町からの来店客(自販機は初めて)
「ケーキの自動販売機はいいアイデアだと思いました。遠くに行かなくても、近くで買えるというのがこんな時期ですからね」

毎月6種類 1年で72種類のケーキを

 野田さんは 大好きなケーキ作りが存分にできる新たな環境に喜びを感じています。

野田さん:「アレルギーの方でもおいしく食べられる米粉のケーキを、地元の食材を使って、旬に合わせて毎月6種類ずつ、1年で72種類のケーキを作っていきたいと思います。おいしく楽しいケーキをこれからも作っていきます」

 「ケーキ・デポ」の自動販売機は24時間営業。小麦粉以外のアレルギー対応のケーキの予約も受け付けています。