土石流災害から1カ月…妻を亡くした71歳「どこかから妻が帰ってくるんじゃないかと…」 静岡・熱海市

 20人以上が犠牲になった土石流災害から3日で一カ月。残された人たちは、いまも癒えぬ悲しみと向き合っています。

画像1: 土石流災害から1カ月…妻を亡くした71歳「どこかから妻が帰ってくるんじゃないかと…」 静岡・熱海市

亡くなった田中路子さんの夫(71)
「やっぱり色々考える、なんで一緒に逃げなかったって。だけどこんなものが来ると思わないから、一緒に連れ出すという感覚はなかった。あれもこれも考えても…、どうしようもない。ほんとの後の祭り」

 こう話すのは、妻の路子さんを土石流で失った71歳の男性です。知人の安否を確認しようと、15分ほど家を出た間に、自宅に土石流が直撃。

 男性は発災直後から妻を探すため現場に何度も足を運んでいました。

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亡くなった田中路子さんの夫(4日)
「(午前)11時25分に不在着信が来ている。で、25分、26分、32分、42分、それで気が付いて、俺が47分に発信したけど、応答がなかった」

 その後、8日になって、路子さんは遺体で発見され、火葬されました。約40年間連れ添ってきた最愛の人に、突然別れを告げることとなりました。

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亡くなった田中路子さんの夫(14日)
「3歳の孫が棺の中に紙飛行機を折って入れた。その後に外に出たら、(孫が)母親に『ばぁばが紙飛行機に乗ってお空に行っちゃった』って。そういう話をするようになるとすごく、3歳児の心に傷がついてんのかなって」

 去年8月には、息子から夫婦での箱根旅行をプレゼントされ、これからは孫の成長を見守りながら、穏やかな老後生活を送る予定でした。

「どこかから帰ってくるんじゃないかと…」

画像: 「どこかから帰ってくるんじゃないかと…」

最愛の人を失った災害から一カ月。男性はやりきれない思いを感じていながらも、仕事を再開し少しずつ前を向き始めました。

亡くなった田中路子さんの夫
「ちょっとした気持ちの整理をつけたいなと思う。やっぱり前には進まないといけない。だけどまだ実感的に(妻が)どっかから帰ってくるんじゃないかって。そういう気持ちもある。これを教訓に日本全国で、自治体がちゃんと(盛り土を)把握して、指導していかないと。こういうことがどこでも起きるようになる」