おいしさの秘密は餌と水 新たな静岡の特産候補「三保サーモン」養殖の現場

林輝彦アナウンサー:「静岡市清水区三保にやってきました。こちらがサーモンの養殖場、建物が結構大きいです。この中にサーモンの水槽があるので、早速入っていきましょう。まず靴底と手の消毒をします。広いですね。思っていたよりも建物の奥行きがあって、ずらっと水槽が並んでいます。あ、いました!1匹1匹が大きいですね、しっかりしています」

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20個の水槽に計1万5000匹のニジマス

 20個の水槽の中で養殖されているのは、およそ1万5000匹のニジマス、その名も「三保サーモン」。この水槽の中には大きく育った600匹ほどが水の流れに沿って泳いでいます。半年ほどで成熟し、出荷されます。

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 養殖事業を手掛けるのは東京都の総合リース会社・日建リース工業。事業開発部の高橋亮平さんに話を聞いてきました。

Q.半年でどれくらいの大きさに成長する?

日建リース工業 事業開発部 高橋亮平主任:「手の平サイズの200グラムくらいのものを入れて、そこからおよそ半年で大きいもので2.5キロくらい。小さいものがだいたい1.2~3キロ」

ヒミツその1 おいしい「餌」

 良質なサーモンを育てるために欠かせないのは“餌”です。

林アナ:「餌を見せていただいてもいいですか? 思っていたのと違う。もっとこう小さい小魚かと思ったら、『ザ・エサ』ですよね。食べられるんですかこれ!?」

高橋さん:「もちろん食べられます。体に悪いもの一切入っていないので」

画像: ヒミツその1 おいしい「餌」

 サーモンの餌を恐る恐る口に入れてみると…

林アナ:「おいしい! 鰹節をギュッと凝縮させたような、カツオのうま味が口いっぱいに広がります」

高橋さん:「醬油を垂らしてちょっとあぶると、おつまみになっちゃうくらいおいしい」

林アナ:「サーモンはこのおいしい餌を食べて育っているんですね」

高橋さん:「そうですね。この餌の味で、サーモンの味が決まります」

 水槽の上に立って、餌やりの時間です。

日建リース工業 事業開発部 佐藤豊さん:「一カ所じゃなくて、全体的にいきわたるように(餌やり)」

ヒミツその2 寄生虫がいない「水」

 こうして育てられている三保サーモン。養殖は去年11月からスタートし、1年が経ちました。なぜ三保で養殖されているのか…そのワケは“水”にありました。

林アナ:「いけすの中の水、すごく透明で透き通っていますね」

高橋さん:「三保の松原でとれる地下海水を使っています」

 三保の地下海水は、豊富なミネラル・栄養分を含んでいます。また、「養殖に最適」と言われるある理由が…

高橋さん:「三保の地下海水はほとんど酸素がないという特性上、寄生虫がいません。寄生虫がいない水をかけ流しという形でずっと使っているので、きれいな水しかありません。餌も狙った餌しか食べさせることができないので、環境を完全に人間がコントロールできるというところが大きな違いかと思います」

 天然のサーモンには、餌を通して“アニサキス”という寄生虫がいます。そのため、食中毒予防として冷凍や加熱をする必要があります。しかし、餌や水にこだわった三保サーモンにはアニサキスがいないため、その必要がありません。生きたまま流通できるので、新鮮な状態で食べられます。肝まで食べられるそうですよ。

高橋さん:「かなり我々の方で安心安全なサーモンを作れるのではないかと、そういうコンセプトでやっています」

ヒミツその3 水温の安定

 こちらの養殖事業は、ある人の発案で始まりました。

林アナ:「サーモンの養殖のきっかけとなった人物がこちらにいらっしゃいます。東海大学の秋山先生です」

東海大学海洋学部の秋山信彦教授です。三保特有の地下海水に着目し、数十年来、研究を積み重ねてきました。

東海大学海洋学部水産学科 秋山信彦教授:「ここの下が井戸になっていて、水中ポンプが中に入っていて水をくんでいます」

 水深25mから汲み上げられ、サーモンの水槽に運ばれる地下海水。寄生虫がほとんどいないことの他に、もう1つ珍しい特徴が。

画像: ヒミツその3 水温の安定

東海大学海洋学部水産学科 秋山信彦教授:「地下海水がとれる所は全国で幾つかあるんですけれども、これだけ水温が安定している水っていうのはなかなかないですね」

 この日の水温を計ってみると18.6℃。水深が深く外気温の影響を受けないため、1年を通して19度前後と水温が変わりません。これにより通年の出荷が可能になります。

 養殖場に隣接している秋山教授の研究施設にも、地下海水を汲める井戸が。

秋山教授:「そこに水面が見えていますよ」

林アナ:覗いてみてもいいですか?

秋山教授:「これは水深23mの所から水を汲んでいます」

汲み上げた水に触れてみると…

林アナ:「(水に触ってみて)あ、冷たいですね。なめてみてもいいですか?…ちょっと薄めの海水みたいな感じ。海水ほど塩分が強くないです」

秋山教授:「沿岸の水ってすごくしょっぱいじゃないですか、そういう感じではないですよね」

林アナ:「全然しょっぱくないです」

秋山教授:「塩分を測ると外洋の海水とほぼ同じ。海水と成分が若干違うんでしょうね」

 三保サーモンの養殖事業は、企業と大学、さらに地元の金融機関や静岡市の支援もあり、着々と進められています。そして、この三保サーモン、すでに食べられる場所があるんです。

三保サーモンを堪能

画像1: 三保サーモンを堪能

林アナ:「河岸の市にやって来ました。いろんな種類があります。お魚に塩辛、奥には干物まであるんですけれども、その向かいにあるんです。三保サーモンです」

 河岸の市、市場館にある「ふかくら」。店頭には三保サーモンを堪能できるセットなどが並んでいます。

 その隣には、海鮮丼とお寿司が。イートインスペースで食べることができるんです。

画像2: 三保サーモンを堪能

ふかくら 藤波正伸店長:「おまちどうさまです。歯ごたえが全然違いますから。きょうたまたまメスだったので、たまごも、三保サーモンのいくら。サービスです」

 しょうゆをかけて、いただきます。

林アナ:「鮮やかできれいです。(食べて)おいしい! すごく、ほどよい歯ごたえで、舌触りが滑らか。サーモンのうまみが口いっぱいに広がります。生臭さが少ないです」

ふかくら 藤波正伸店長:「養殖独特の脂臭さもだいぶないと思いますよ」

林アナ:「三保サーモンと違うサーモンと比べてみて、色や艶は違いますか?」

ふかくら 藤波正伸店長:「全然違いますね、切っている感じがもう、全然違います。弾力と脂の感じというか、本当生き身の魚を切っている感じ。本当、天然に近いと思う」

林アナ:「ここで召し上がる方は静岡の方が多い?それとも県外?」

ふかくら 藤波正伸店長:「ほぼ県外の方が多い。でも地元の人も三保のサーモンテレビでやっていたと、三保の方とかけっこう買いに来てくれる。話のネタに買わなきゃって」

 まだまだ知らない人も多い三保サーモン。地元で養殖した良質な魚をもっと手に取ってもらいたいと販売店も期待を寄せています。

ふかくら 藤波正伸店長:「食べてもらえれば、うまい魚なので新たな魚というので、有名になってくれればいいなと思う」

「三保サーモン」を第二のウナギへ

画像: 「三保サーモン」を第二のウナギへ

 そして、17日、静岡市清水区で開かれたのは三保サーモンの記者発表会です。

日建リース工業 関山正勝代表取締役:「是非この、三保サーモンを第二のウナギへ」

 新たな静岡の特産とすべく、静岡市は「しずまえ鮮魚」として、アピールを始めています。

静岡市 田辺信宏市長:「この三保サーモンのプロジェクトは大変、総合計画上、静岡市、重要なところに位置づけている公民連携プロジェクトです。静岡市は本気になって、世界に売り出していきたい決意しています」

 そして、河岸の市以外でも生の三保サーモンを食べられるようになりました。大手回転寿司チェーンの「かっぱ寿司」が静岡市内の3店舗で、17日から三保サーモンを使用した限定メニューの販売を始めました。

コロワイド 野尻公平社長:「今回のこの三保サーモンの陸上養殖はSDGSとか、ESGと言われますけど、持続可能の食材調達という意味でも本当にこれから必要になっていく」

 会見後に行われた試食会。さっそく試食した人は…

試食した関係者:「アニサキスのアレルギーがあって、魚食べるのが何年かぶりなんです。だからめっちゃおいしいです。身のほぐれが食感というか美味しいなと思います」

日建リース工業 関山正勝代表取締役:「サーモンというのは、世界中の人が食べる、という意味で、世界の人に受け入れていただけるお魚なんですよね。この三保サーモンを楽しみに、静岡市にいらしていただいて、静岡市の発展に貢献できればと考えております」