静岡市が民間事業者の誘致を目指すワケは? 「アリーナ構想」紆余曲折の末、東静岡駅北口に 清水駅前には「新スタジアム構想」も

静岡市 田辺信宏市長(3月2日):「これからのアリーナは、やはり今まで静岡でできなかった大規模なコンサートをしたり、あるいは国際レベルのスポーツの試合をしたり、そういった規模感を伴いつつ、事業性も高めていくという取り組みにしたいと思っています」

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 田辺市長がそう語るのは、静岡市の「アリーナ誘致構想」についてです。

「アリーナ構想」最大のポイントは市が民間の事業者を「誘致」すること

杉澤洋佑ディレクター:「静岡市が誘致を目指しているアリーナは、東静岡駅の北側、こちらのエリアに想定されています。駅が近いだけではなく、あちら側には静岡鉄道や国道1号が通るなど、交通アクセスも良い場所です」

画像1: 「アリーナ構想」最大のポイントは市が民間の事業者を「誘致」すること

 候補地となっているJR東静岡駅北口の、市が所有する土地。現在はスケートボード場として利用されていて、その広さはおよそ2.5ヘクタールあります。これは神奈川県にある横浜アリーナに迫る広さです。

 今回のアリーナ構想の最大のポイントは、市が民間の事業者を「誘致」するということ。

 「誘致」とはいったいどういうことなのでしょうか?

県政担当 根方ゆき乃記者:「自治体が土地を貸す代わりに、企業に『自分の街に来てください』ということ、これが誘致です」

 東静岡のアリーナは静岡市が土地を貸し、民間事業者が施設を建設し運営をするとみられます。

 ちなみに、袋井市にあるエコパアリーナは施設は県の所有物。指定管理者として県サッカー協会グループが管理や運営をしています。

画像2: 「アリーナ構想」最大のポイントは市が民間の事業者を「誘致」すること

県政担当 根方ゆき乃記者:「静岡市によると、財政負担の軽減が見込めること、そして民間ならではの運営によって行政ではできないようなイベントの開催であったり、大物アーティストを呼べるという目論見があるということです」

市民文化会館跡地に誘致する構想も…専門家から反対意見相次ぎ断念

 今回、東静岡が候補地となった「静岡市のアリーナ構想」。実は過去に紆余曲折ありました。

画像: 市民文化会館跡地に誘致する構想も…専門家から反対意見相次ぎ断念

杉澤洋佑ディレクター:「県庁や静岡市役所がある静岡市の中心部にあるのが、こちらの静岡市民文化会館です。静岡市では当初、この市民文化会館の跡地にアリーナを誘致したいという構想がありました」

 今から44年前の1978年に開業した静岡市民文化会館。市は老朽化している市民文化会館の建て替えを検討し、7000人規模のアリーナやホールを建設する案を公表していました。

 ところが、専門家らによる委員会では反対意見が相次いでいたのです。

委員(当時:2018年):「全ての良い機能を持った施設をつくるのはスペース的に困難。あそこは景観もいいので(建物は)残したい」

委員(当時:2018年):「現場のところにアリーナを建設するのは無理。例えば東静岡の跡地にアリーナを造るのは大賛成」

 そして、田辺市長は…。

静岡市 田辺信宏市長(2018年):「敷地の制約だとか、交通上の課題などが明らかになり、アーティストに選ばれる魅力あるアリーナを駿府町地区(市民文化会館エリア)に整備することは難しいという意見でしたので、私としてはそれを十分尊重していきたい」

 結果的に、市の試算で採算が取れるとする8000席以上の規模が確保できないことが判明し、市民文化会館の跡地を使ったアリーナ構想は断念。

 その後、4年の歳月を経て進み出した“東静岡プラン”では、最大1万席程度の規模が想定されていて、市の試算では年間123億円の経済波及効果が見込まれていることも明らかになりました。

JR清水駅南口にはサッカーの「新スタジアム構想」浮上

 そんな静岡市で今、市民からもう1つ注目を集めていることが…。

画像: JR清水駅南口にはサッカーの「新スタジアム構想」浮上

杉澤洋佑ディレクター:「JR清水駅の南口に来ています。こちら道路を挟んで奥側に見えるのが、民間の石油会社の油槽所です。この広大な土地の一部にサッカースタジアムを新設する案が浮上しました」

 国内の石油元売り最大手であるエネオスが所有する13万㎡の広大な土地。2015年には出力110万キロワットのLNG火力発電所の建設計画が持ち上がりましたが、地元の理解が得られずに計画が中止に。
事業者側は土地について「ゼロベースで利用法を考えたい」としていました。これに当時、川勝知事は…。

静岡県 川勝平太知事(2018年):「やはりサッカー場が欲しいというのがある。IAIスタジアムが(J1の)基準に合わないという課題が指摘されている中、あそこの土地を活用するというのは1つの候補」

 一方、田辺市長もスタジアムの移設の必要性を前回の市長選で有権者に訴えていました。

田辺信宏市長(2019年:静岡市長選):「将来、新しいスタジアムを移転するのは、このJR清水駅の近辺しかないということを皆さんにお伝えしたい」

エスパルスサポーターは「清水に残ってほしい」

 この計画にエスパルスサポーターは…。

エスパルスサポーターA:「昔から日本平はいいスタジアムですよ。サッカー専用で。でもやっぱりちょっと遠いし、やっぱりエスパルスのサポーター、相手のサポーターが来てもらって「いい」って思えるスタジアムって欲しいじゃないですか」

エスパルスサポーターB:「(日本平が)名残惜しい感じはあるんですけど、これからもサポーターが増えてくれるなら、駅のほうにあってもいいかなって感じている」

エスパルスサポーターC:「静岡(葵区・駿河区)に持っていかれちゃうよりは、清水に残って欲しいのは絶対ですね。『オレンジの人』がいっぱい歩いていた時代に戻ってくれたら、また活気が出るんじゃないかなって」

川勝知事「エスパルスは静岡の財産」

 ここへきて再浮上した「新スタジアム構想」。川勝知事は…。

川勝知事(7日:月曜):「私はこういう構想は5~6年前から持っています。あるいは清水エスパルスの試合を見に行きますね。そうすると試合それ自体は興奮のるつぼになるわけですけど、帰り混みますね。そして人数も2万人ちょっとしか入らないと。だから今のJリーグの基準にあってないというのはすぐわかります。ですから、なんとかしなくちゃいけないなと。かねてより思っていました」

Q.県も費用負担で協力してほしいという話になった時には、検討しなといけないという思いはある?

A.「あります。清水エスパルスは静岡県の財産ですね。ですからそれぞれ役割分担というのがあると思いますけど、誰にもわかる形で構想を実現するために、それ相応の汗をかくというふうにしたい」

画像: 川勝知事「エスパルスは静岡の財産」