【リニア】「これでは全く検討できない」 JRの提案に静岡県の専門部会で批判相次ぐ

JR東海 金子慎社長(21日):「東京電力といろいろ調整しながら案を練っているということではなくて、今回もこういう案を出しますよということをお知らせしておりますが、何かそういう今の段階で細かなやりとりをしているということではありません」

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【リニア】「これでは全く検討できない」 JRの提案に静岡県の専門部会で批判相次ぐ

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 21日、JR東海の金子社長が語ったのは「田代ダム案」についてです。

JR東海 担当者(4月):「静岡県側から山梨県側に流出するトンネルの湧水量について、ちょうど同じ時期に、ちょうど同じ量の発電のための大井川からの取水について田代ダムで抑制し、結果として大井川に還元する案でございます」

川勝知事「これはトンネル工事とは別」 JR東海社長「地域の懸念解消が目的」

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 4月の県の専門部会でJR側が示した水の全量戻し案である「田代ダム案」。これに当時、川勝知事は…。

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静岡県 川勝平太知事(5月):「これはトンネル工事とは別です。これを戻すからトンネル工事していいということは全くありませんね。(“全量戻し”は)トンネル工事中に出る湧水を戻すという、これが国の有識者会議でもそういう中身ですよっていうふうに言われていますから。ですからこの表流水の話は、これはJR東海さんの力による地域貢献の1つということで、これが本当に戻ってくるなら、これはもう本当にありがたく感謝したいと思います。

 JR東海に対して「感謝したい」と話した川勝知事。この発言に、金子社長は…。

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JR東海 金子慎社長(5月):「提案の目的は地域の皆さんの水利用に対する懸念の解消であります。そういう目的に立ち戻って理解をしていただきたいと思います。私のほうから“地域貢献のため”というふうなことを申し上げたことはありません」

 2人の発言によって、より注目が集まっている、田代ダム案。今週、県の専門部会で協議する場が設けられました。ところが…。

静岡大学客員教授 森下祐一部会長:「ちょっとこれでは全く検討できないというのが私の率直な感想です」

JR東海が示した「田代ダム案」に静岡県の専門部会は…

静岡県 難波喬司理事(20日):「前回の専門部会で、県外流出量と同量を大井川に戻す方策として、JR東海から2つの案が示された。こちらの方策は実現に向けて多くの課題があるので、具体的なデータに基づいて実現できるのかどうか、対話を進めてまいりたい」

 20日に開かれたリニア問題に関する県の専門部会。この専門部会で4月にJR東海が示したのが「田代ダム案」です。

 大井川に30近くあるダムの中で最も上流に位置する田代ダム。1928年に完成した歴史のあるダムです。田代ダムでは大井川から水を取水していて、水は山梨県早川町にある東京電力の田代川第二発電所で水力発電に使われています。

 この田代ダム案では、リニアのトンネル工事によって県外に流れ出る水と同じ量を田代ダムへの取水時にコントロールし、大井川の水量を維持する考えです。

「実現性のないものに期待感を持たせると不信感が出る」

 20日の会議では田代ダム案に関する議論の進展が期待されましたが…。

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県の専門部会 静岡大学客員教授 森下祐一部会長:「ちょっと、これでは全く検討できないというのが私の率直な感想」

専門部会の委員からは、JRの説明に対して批判が相次ぎました。

JR東海担当者:「田代ダムへの取水を抑制して、大井川へ還元できる水の量がどの程度になるか、公表されている河川流量の実測データがないため、当社が計測している実測値を用いて検討しました」

 今回新たに示されたのが、田代ダム案の実現可能性を検討したシミュレーションです。

 JRは月に1回、田代ダムの上流で大井川を流れる水の量を測定しています。このデータに基づき、最も川の水量が少なくなる冬場でも、田代ダムの取水を抑制して大井川に還元することは可能であると説明しました。

 一方で、検討には不確実性が伴うとしています。

県の専門部会 静岡大学客員教授 森下祐一部会長:「説明では冬季の発電維持流量について触れていなかったが、それは必要ないという東京電力の見解をお持ちか」

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JR東海 中央新幹線推進本部 澤田尚夫副本部長:「冬季の発電維持流量、我々は承知していない。特に公開もされていないので、今回の解析ではそこは加味していない。ここは(東京電力に)問い合わせをしているが、具体的な数字はいただいていない」

 森下部会長は、田代ダムでの発電施設を維持するためには、渇水期の冬場で、毎秒1.62トンの水が必要と指摘。今回の分析ではそれが考慮されておらず、不十分と批判しました。

県の専門部会 静岡大学客員教授 森下祐一部会長:「前回の専門部会でこの案を出された時に、私が『渇水期は大丈夫でしょうか』と質問したら、『東京電力ともデータのやり取りをしていて渇水期にも対応できます』と答えていた。このような取水抑制を本当にやるのであれば、東京電力と十分な協議が必要」

JR東海 中央新幹線推進本部 澤田尚夫副本部長:「きょうは用意できていないが、そこだけ東京電力と話したい」

 また、河川法に関して問題はないのかとの指摘も―

JR東海 中央新幹線推進本部 澤田尚夫副本部長:「我々は何か法律の問題の認識はないが、そこは専門家にお聞きしてお答えしていこうと思っている」

画像3: 「実現性のないものに期待感を持たせると不信感が出る」

県の専門部会 神戸大学教授 大石哲教授:「前回、明確ではなかったかもしれないが、そういうことが法的に認められるのかということについて懸念は示したはず。私の懸念に対して全く反論が出ないというのは、遺憾であると申し上げざるを得ない」

 難波理事も釘を刺しました。

画像4: 「実現性のないものに期待感を持たせると不信感が出る」

静岡県 難波喬司理事:「実現性があるかどうかが非常に重要で、実現性のないものを妙な期待感を持たせて、人に説明するのは不信感が出る。期待感がある分だけ不安もあり、不信感も出る可能性がある。工学的な実現性の問題と法律的な実現性の問題と両方を詰めた上で出した方がよい」

 会議はおよそ3時間にわたりました。

JR社長「専門部会のリクエストにお応えできるよう東京電力とも相談して対応する」

静岡県 難波喬司理事:「健全な議論がされるというのが大事で、健全な議論のためにはデータや関係者の調整をしっかりやるべきだと思う。そのあたりをしっかりJR東海に詰めていただきたい」

 JR東海も取材に応じました。

Q.冬場は(田代ダムで)毎秒1.62トンの取水量を維持する、これを承知だったのか。承知していたとすれば、なぜ今回の試算に反映しなかったのか。

JR東海 中央新幹線推進本部 澤田尚夫副本部長:「承知してはいない。というのも、その資料は今オープンになっていない。県にも確認した。教えてくれという話もしたが、オープンになっていないということだったので、おそらく、東電のデータを使っても厳しい条件になったり、日によっては、きょうは全部ゼロ以上だったが、マイナスになることがあるとは思う。ただ、それでB案(=田代ダム案)がダメということではなくて、何らかのオプションを考えなければならないと思っている。その辺を含めて関係者と調整していきたい」

 翌日、会見を開いた金子社長は…。

JR東海 金子慎社長:「私たちが持っていないデータもありますが、また(県の専門部会の)リクエストにお応えできるように、東京電力とも相談をして対応していきたいと思います」

                                  (7月23日放送)

画像: JR社長「専門部会のリクエストにお応えできるよう東京電力とも相談して対応する」