あれから3カ月…気田川の氾濫で大きな被害を受けたキャンプ場は今 復旧への大きな障害は2つ 新キャンプ場建設も… 浜松市
新東名・浜松浜北ICから車で30分
新東名高速道路・浜松浜北ICから車でおよそ30分。浜松市天竜区にある“小川の里オートキャンプ場“です。ここは、浜松市と連携して、藤田さん一家が運営しています。昼は川遊び、夜は満点の星空が楽しめるなど、県内外から年間5000人の客が集まる人気の施設でした。ところが…。
大雨で目の前の気田川が氾濫
伊地健治アナウンサー:「きょうも雨で流れが激しくなっています。浜松市・天竜区の小川の里キャンプ場です。夏休みを迎えて、営業再開というのが目標だったんですけれども、ご覧いただいている通り営業は出来ていません。ここはテントサイトだった場所です。当時、一面に泥がありましたが、泥が無くなり、代わりに砂利が敷かれています。ただ、所々に廃材のようなものが積みあがっていて、テントサイトには見えない状況です」
3カ月前の6月2日、県内を襲った記録的な大雨。その影響で、目の前を流れる気田川が氾濫。川から溢れ出た濁流は、キャンプ場の全てを飲み込みました。その1週間後に取材したようすがこちらです。
藤田眞朗さん「こちらを向いているのが管理棟ですね」
伊地アナ「あれ管理棟ですか。」
藤田さん「こういう形でここにありました」
伊地アナ「えっ!管理棟が?」
藤田さん「一段高いところにこっち向いて。それがあそこまで動いちゃった」
伊地アナ「管理棟のところに木の看板があって、案内受付って書いてあるんですけど、あの面が川を向いてここに立っていたんですか。10mぐらい移動してますよね」
施設の拠点となる管理棟は、90度回転しながら、10mほど
押し流されていました。トイレに隣接するシャワー室は、完全に破壊されています。
さらに、鮮やかな緑が映えるテントを張るスペースは大量の泥で、覆われていました。
当時、復旧のめどについて、長女の綾さんはこのように話していました。
長女・綾さん:「個人的にはできれば一か月~二か月くらいでは(復旧したい)。これから夏本番も来るし、秋からは本格的なキャンプシーズンになるので、それまでには復旧作業を終わらせてオープンさせられたらいいなと思っています」
あれから3カ月近く…
しかし、8月24日、再び現場を訪ねると、現実は厳しいことがわかりました。
伊地アナ「6月の災害からですね、藤田さんのキャンプ場来ましたけど、ひっそりしています。これ営業はまだ再開出来ていないという事ですか?」
藤田さん「そうですね、その通りだと思います」
伊地アナ「この辺り、駐車場のラインが見えていますけども、ここ30cmくらい泥が堆積している状況でしたよね?」
藤田さん「そうですね、長靴が抜けないような状態で」
伊地アナ「ここによけた泥があります、前はだいぶ20~30cmくらいの高さの泥が駐車場も全部覆っていたような感じですけど、だいぶ固まったんですね」
伊地アナ「駐車場の外側に泥をよけていますけど、泥は全部ここに溜まっているだけなんですか? つまりここから泥はここから外に持ち出してはいないんですか?」
藤田さん「そうですね」
濁流が運んできた大量の重たい泥。駐車場脇に寄せたものの、搬出などの処理は、まだ出来ていません。
伊地アナ「あ~、ここに受付の小屋があった場所」
藤田さん「管理棟ですね」
伊地アナ「管理棟が流されて、向こうの方に移動していましたけど、管理棟なくなっていますね。」
濁流によって流され、破壊された管理棟は、重機などを使って、自分たちで解体したそうです。
伊地アナ「これ水道が折れちゃってますね。小屋が流されたときに、折れちゃったんですかね?」
藤田さん「折れました。」
折れて、使えなくなった水道。水道の復旧もいまだ出来ていません。
伊地アナ「こっちは一面に泥があったはずですけど、全部砂利になっていますね」
一面、泥で覆われていた、テントを張るスペース。泥は取り除かれ、代わりに砕石がしかれていました。
藤田さん「仮設的にと思って、砕石を買って入れました」
将来的には、芝生のスペースに復したいそうですが、この秋の再開を目指し、砕石をひいたそうです。
伊地アナ「解体したり、砂利なんかにかかったお金はいくらくらい?」
藤田さん「最低でも百数十万円だと思います」
なぜ復旧できないのか
運営再開までには、お金もかかるし、まだまだ時間もかかるようです。3カ月近く経っても復旧できない現状に、長男の一輝さんは…。
長男の一輝さん「単純な作業で言えば、おそらく6,7,8月あれば、(復旧)完了はしたんですけど」
課題はいったいどこにあるのか? 土地を所有し、復旧にもあたっている浜松市に聞くと、問題点が2つあると言います。
【課題その1 受け入れ先が見つからない“泥”】
農地整備課 黒柳健さん:「堆積した土砂が“泥土”と呼ばれるものでして、本来でしたら埋め立ての処分地に搬出するところですが、水分を多く含んでいて、埋め立てに適さないという事で、現在受け入れしていただける処分地が見つかっていない状況になります」
【課題その2 取り換えが必要な“水道”】
黒柳健さん「水道につきましては、圧力タンクと言って、井戸から水をくみ上げる装置の損傷が確認されて、一部の部品交換だけでは機能の回復が出来ないことがわかりまして」
圧力タンクはオーダーメイドのため、製造から工事まで、およそ3カ月間かかるそうです。
新たなキャンプ場建設を計画
そしてこの日、一輝さんは、ある場所へ案内してくれました。車を走らせること、およそ10分で到着したのは…
伊地アナ「ここはどんなことを考えている場所なんですか?」
藤田一輝さん「ここはですね、新しくキャンプ場を、また一つ新設しようと考えている」
伊地アナ「本当に川の対岸は山の斜面があって気持ちのいい場所ですね」
小川の里から、気田川の上流へおよそ5km。ここにキャンプ場を作る計画を、去年から立てていました。
伊地アナ「川の近くでまた小川の里みたいな、川が増水した時に被害にあわないか心配はこの場所はない?」
藤田一輝さん「リスク、可能性はあります。実際に(6月2日の)洪水の時に、ここも状態を見たけど、あのレベルで5~10cmくらい浸かった。キャンプ場の運営に影響は少ないと判断した」
伊地アナ「また新たなキャンプ場ができるという事で、小川地区はこの秋にだいぶ盛り上がるというか、話題になりそうですね」
藤田一輝さん「そうですね、活性化はしてくると思いますので、僕らだけじゃなくて近隣の方も非常に協力的で応援してくれるので、みんなで盛り上げていきたいなと思います」
少しずつ前へ進もうとする、藤田さん親子。しかし、その一方で、なかなか復旧できないキャンプ場への、もどかしさを抱えていました。
(8月26日放送)