【独自 音声入手】「中国はルール無用の悪党」…プロデューサーの外国人差別発言で大道芸W杯 3年ぶり開催に「黄信号」 /今週の静岡

 これは9月、静岡市内で行われたボランティアスタッフの講習会で配られた資料です。そこには「日本人とは?」という題目や、「善徳や品性を、日本人は生まれながらに持っている」といった内容のほか、「中国人は一人だと龍だが、二人だと虫になる」ということわざを使い、日本人が優れているという趣旨の記載も…。

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 資料の冒頭に目を向けると「プロデューサー」の肩書で、1人の名前が記載されています。この資料を作成したのは、奥野晃士氏。静岡県が補助金を出しているSPAC(スパック)・静岡県舞台芸術センターに所属する俳優で、海外での活動実績も豊富な人物です。

画像: 【独自 音声入手】「中国はルール無用の悪党」…プロデューサーの外国人差別発言で大道芸W杯 3年ぶり開催に「黄信号」 /今週の静岡

 奥野氏はこの資料をもとに、どのような話をしたのか、静岡朝日テレビは、講習会当日の音声を入手しました。

奥野氏(当日の音声)
「今年は“日本人だけ”を集めてやる、国内の最高峰の人たちを集めてやる。この日本人だけでやるということを逆手にとって、これに価値を見いだす、日本というのを全面に押し出すのはどうだという感じで、一つの開き直りみたいな感じのコンセプトを立てて見たらどうだろうかと…」

「中国とか見てると、ルール無用の悪党たちみたい」

 奥野氏によると、最大の魅力の一つである海外アーティストの穴を埋めるために「日本」というテーマを全面に打ち出す狙いがあったといいます。ところが、アーティストや来場客への「おもてなし」に触れた場面でこんな発言が…。

画像: 「中国とか見てると、ルール無用の悪党たちみたい」

奥野氏(当日の音声)
「今、本当に中国とか見てると、ルール無用の悪党たちみたいな感じにどうしてもなってくる。これは今に始まったことではなく、中国っていうのは易姓革命の皆殺し文化がずっとある。権威と権力が一体化している。でも日本は、権威と権力を分断している。
ステキな芸をしていただくためには、やっぱ気持ちよく舞台に立っていただくということが必要なんだ。そういう気遣いとかおもてなしっていうのは、何も新しく学ぶことじゃない。自分たちの先祖が築き上げてきたものなので、それを思い出すことが必要」

 2時間行われたという講習会のうち、奥野氏は、1時間以上に渡り持論を披露する独演会状態。

 一方、プロデューサーになった経緯について、奥野氏の口から出たのはあの人の名前でした。

奥野氏(当日の音声)
「10年くらい前に田辺市長にとある会合で会いまして、今はやっているフラッシュモブとか、そういうものが街を歩いていたら突然パフォーマンスが始まったりとかね、そんな街をつくりたいんだ、と言って、ちょっと君、SPACだったら協力してくれないか、と言われたことがあったんです。なかなか3年経っても4年経っても、そういう話は一切来ず、ここへ来て、こういう状況なので奥野くんどうですかと紹介してくれた人がいて、その人を信じるしかないかと、お受けしますという形で就任させて頂きました」

スタッフから疑問の声も…

 講習が終了すると、聞いていた一部のスタッフからは、疑問の声が…

スタッフ
「そもそも大道芸ワールドカップっていうのは開かれた大会であって、確かにたまたま今年はそういうふうな社会的状況によって、海外からたまたま呼べない状況だけであると思ってます。やっぱり静岡市内には外国人の労働者の方であったり、学生の方だったり、そういう方もたくさん関われて、それをちょっと置いてきぼりにするようなことを、ちょっとこの文面から印象を持ってしまうというところが非常に危険かなと思っています」

奥野氏
「これを上意下達でやりましょうっていうんじゃなくて、僕なりにそうやって一つのなんか共通項を見つけようと思った時に、これが一番範囲を網羅するじゃないかって、
それに取りこぼされる方についてっていうのは、これは、正直日本文化っていうのは、つまり、そういうのを全て受け入れて成長してきた」

 ただ、この日、奥野氏が発言を撤回することはありませんでした。しかし、この書類が公になると、SNSを中心に批判の声が急増。奥野氏は6日、自身のSNSで「内部講習の資料に偏った内容を掲載し、それが大道芸ワールドカップそのものの思想であるかのように紹介したのは、私の完全な間違いだった」と謝罪しています。

 また、奥野氏が所属する劇団SPACの宮城聡総監督も、自身のYouTubeチャンネルで、「大道芸ワールドカップにとって、決して許されない考え方」であると指摘。

奥野氏は解任、実行委員長は辞任

 実行委員会は7日、今回の件について会見を開きました。

杉山茂之委員長
「今回の件で多大なご迷惑をお掛けしまして、誠に申し訳ございませんでした」

 会見の中で奥野プロデューサーは謝罪をした上で、発言はあくまでも個人の見解だということを強調しました。

画像: 奥野氏は解任、実行委員長は辞任

奥野氏
「まずは今般、私が研修会で作成した不適切な資料、及び発言で多くの方にご心配とご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。大道芸ワールドカップは世界から多くの方が集まるイベントで、国籍・性別・年齢等に関わらず、誰もが参加できるイベントです。私の考えがあたかも大道芸ワールドカップの理念であるかのように、誤解を与えてしまったことを本当に申し訳なく思っております。それが決してそうではなく、私個人の考えです。大道芸を楽しみにしていた市民の皆様、アーティストの皆様、そして実行員会の皆様、ボランティアの皆様、スポンサーの皆様に改めてお詫びを申し上げます」

 この会見で杉山茂之実行委員長は、奥野氏の解任と、自身の辞任を発表しました。

杉山委員長
「大道芸実行委員会はこれまで広く海外に向け、開かれた大会であることを旨として運営をして参りました。今回の奥野プロデューサーの発言は、和のイメージを押し出していこうというコンセプトがあったとしても、それを大きく逸脱するもので、決して看過することはできません。今回の問題の発言をした奥野プロデューサーにつきましては解任をいたします。それと共に任命責任もあり、コンプライアンス欠如の責任を取りまして実行委員長である私は辞任をさせていただきます。今後につきましては隣にいます猪股副委員長が委員長代理を務めまして、関係者と協議や調整の上、11月の大会の開催可否を検討して参りたいという風に思います。この度は本当に申し訳ございませんでした」

 開催まで1カ月を切ったタイミングでの事態。大会への影響は避けられません。

記者:今回の来月予定されている大会の演出内容や項目に、奥野プロデューサーの色はどれくらいの割合で関わっている?

猪股氏:「オープニングセレモニーの一部とファイナルセレモニーの一部に奥野プロデューサーの演出の色が出ている」

記者:オープニングとファイナル?

猪股氏:「オープニングとファイナルです

記者:この部分というのはどうする?

猪股氏:「そこは全く新しくというか、そこは新しいやり方で進めていく」

記者:一新する?

猪股氏:「はい、一新です」

 杉山委員長の辞任を受け、今後、代理として開催の可否を関係者と協議することになった猪俣副委員長。問題発言のあった場に同席していたことについて記者から指摘されました。

記者:海外の方に対する差別であったり、そこに対しては猪俣さんは中立でしたか?

猪股氏:「まあ、奥野さんの考え方は別に、個人の考え方で、その講習会の時に押し付けているような感じではなく、僕はこう考えますみたいな感じだったので、だからこうしようねという感じではなかったんですよね。なので、まあ一つの考え方として僕は聞いてました」

 3年ぶりの開催直前に混乱の様相となった大道芸ワールドカップ。開催の可否も不透明な状況です。

記者:大会開催の可否はいつ頃までに判断する?

猪股氏:「再来週の頭には決めたいと思っている」

記者:再来週の何日ぐらいに?

猪股氏:「23、24とかですかね」

(10月8日放送)