川勝知事「ハコモノは無駄遣い…」 田辺市長「先人達の思い、感無量…」 平行線のまま静岡市歴史博物館がオープン ここへきての川勝知事の本心とは…

7月23日にプレオープンした静岡市の歴史博物館。「ハコモノを造るのは無駄遣い」と批判し、反対の姿勢を示してきた静岡県の川勝知事、現在は何を思うのでしょうか。

川勝知事「内覧会は陳情と重なり見られなかった」

画像1: 川勝知事「内覧会は陳情と重なり見られなかった」

静岡県
川勝平太知事:「内覧会のときには陳情がありまして。重なったので見られなかったんですけど、報道によれば、当時の道と石垣が保存されたということを大変喜んでおります」

 26日、川勝知事が喜んでいると語ったのは、23日にプレオープンを迎えた静岡市の歴史博物館についてです。静岡市の歴史や徳川家康、今川義元の功績を伝えるため、総事業費およそ62億円をかけ、家康が晩年を過ごした駿府城公園の隣に建てられました。

画像2: 川勝知事「内覧会は陳情と重なり見られなかった」

静岡市 
田辺信宏市長:「教育施設と観光施設を両立した運営を期待したい」

 田辺市長肝いりの“五大構想”のひとつに位置付けられる「歴史文化の拠点づくり」。その中核を担うのが、この歴史博物館です。2015年には基本計画が策定され、本来なら2021年に開館していたはずでしたが…。

「ハコモノを造るというのは無駄遣い…」

画像: 「ハコモノを造るというのは無駄遣い…」

川勝知事(2016年会見):「ただなるハコモノを造るというのは無駄遣い。突然その場所に62億円を使って造るということには、もう少し再考を要する。反対ということです」

 川勝知事は歴史博物館の必要性に理解を示す一方、巨額な事業費に反対の意向を示していました。

川勝知事(2016年会見):「やっぱり駿府城を造ると。それを博物館として機能を持たせると」

 当時持ち上がっていた駿府城公園での天守閣再建構想。知事は、まず公園内に駿府城を再建し、そこに博物館機能を持たせることを提案します。

田辺市長(2016年会見):「(知事の提案の)実現可能性…発掘調査は始まったばかりですし、この発掘調査も文化庁とのやり取りの中で、かなり長期に渡ることが想定される。そのあと天守台のこともあります。となると、博物館、いつのことになるか分かりません」

けん制し合う知事と市長

画像: けん制し合う知事と市長

 田辺市長は川勝知事の提案を否定。平行線をたどります。

 川勝知事(2018年会見):「この城(駿府城)自体が歴史博物館じゃないかと思っている。歴史博物館が必要なのは知っているが、それをここに建てるのは別の話。一旦ガラガラポンにするべき」

Q:知事が、『静岡市はハコモノ建設をやめれば』と…?

田辺市長(2018年会見):「そんなことおっしゃったの?世界を意識した都市経営の中、必要な所作をしていく。適正にその理念の中で投資していく」

 互いに、会見の場でけん制。

 2019年、県は駿府城公園内の発掘調査で豊臣時代の石垣が発見されたことを踏まえ、静岡市に意見書を提出します。

意見書:「駿府城跡地の遺構は、それ自体が博物館機能を有しており、将来を見通せば二重投資となるリスクがある」

 計画の棚上げを求められた田辺市長は―

田辺市長(2019年会見):「新たな付加価値として、今回の発掘調査の成果として、この(豊臣時代の)遺構が見つかった。全体として、これから静岡の歴史を体感してもらうエリアとして進めていくということなので、まったく二重投資ではない。
 歴史文化施設や東御門、巽櫓、坤櫓、そして発掘調査中の駿府天守台の遺構を全体をフィールドミュージアムとして、一つの博物館に見立てた計画です。まさに新しい博物館の形、フィールドミュージアムですね」

紆余曲折を経てのプレオープン

事業の必要性を強調した田辺市長でしたが…。

田辺市長(2020年会見):「一旦停止という決断を機関決定した」

 新型コロナの感染拡大による財政悪化により、事業の一時凍結を余儀なくされました。

 紆余曲折あった歴史博物館のプレオープンに、田辺市長は―

Q.過去を振り返って、改めて今のお気持ちを聞かせてください

画像: 紆余曲折を経てのプレオープン

田辺市長(22日):「城下町の歴史のある静岡市ですので、やはり歴史を誇りに思う市民が増えてほしいと思っていた。先人たちの思いをひとつ形にできたと、感無量の気持ちであります」

 歴史博物館は、2023年1月のグランドオープンまで土日のみの開館。静岡市によりますと、最初の週末ではあわせて3166人が訪れたということです。

川勝知事の本心は…?

歴史博物館を評価したようにも思えた川勝知事ですが、本心は違うところにあるようです。

川勝知事:「むしろ今度は、この近代的な歴史博物館がもう出来上がってしまいました。
 そうではなくて、駿府城を今あるデータに基づいて再現しようという動きになればいいなと。そして、そこに今川の遺構、博物館を造るときに掘って、結局埋めてしまいましたでしょう。そういう馬鹿なことはしないで、遺構でせっかく見つかったものはきちっと保存しながら、見られるようにして、上は天守閣を含めて駿府城を再建するという方向にいく。そういうきっかけになったら、歴史博物館の意味も出てくるんじゃないかと思いますね」

画像: 川勝知事の本心は…?

 “駿府城の再建構想”に、意欲をにじませました。

川勝知事:「(駿府城公園で)天守閣の遺構が見つかったので、ここはぜひそういう方向に市長さん、あるいは市当局が動いてくださると、私は多くの市民・県民が意味を持てるんじゃないかと思っております」