土石流の逆境から街を元気に 老舗旅館が新たな挑戦 スイーツ開発やワーケーション対応まで 静岡・熱海市
「生糸(きいと)モンブラン」
まさに糸のように細いクリームをまとっています。 およそ1年前、熱海銀座にオープンした「kiito(きいと)」には、この味を求めて多くの客が訪れています。店をプロデュースしたのは、市内でも有数の老舗、古屋(ふるや)旅館。創業は江戸時代中期、1806年です。
古屋旅館
内田宗一郎 社長:「熱海温泉自体も非常にお客様が急激に減っていった時期でございました。そんな時だからこそ、新しい価値を熱海の中に提供させていただいて、お客様に喜んでもらおうと」
土石流災害が観光の街・熱海を直撃
観光の街、熱海。新型コロナで客足が減っている中、追い打ちをかけたのが、去年7月の土石流でした。連日メディアで伝えられる被害状況。
古屋旅館
内田宗一郎 社長:「大変不幸な災害でございましたので、もちろん商売に対する影響はございました。強く影響を受けたのは7月いっぱい。海開き等も見送られていることもあり、8月も引き続き影響を受けたように記憶している」
伊豆山地区からは数キロ離れている古屋旅館でも予約のキャンセルが相次ぎました。市の試算では土石流による観光業の損失は、およそ15億5000万円にのぼります。
熱海の街に少しでも元気を…
暗い話題が多い熱海に、少しでも元気を。再び熱海に客足を。そんな思いで古屋旅館が挑戦したのが、スイーツのプロデュ―スですが、ほかにもー。
三浦徹記者:「机やイスが並んでいるこちらのスペース。最新のシェアオフィスのようですが、実は旅館の中の一室です」
200年の歴史を感じさせない、スタイリッシュな内装。リモートワーク用のスペースです。フリードリンク制でWi-Fiはもちろん、個室や会議室もあります。
古屋旅館
内田宗一郎 社長:「15分、30分、長くても1時間、ちょこっとワークとでも申しますか、そういった、主目的はレジャーの旅行なんだけど必要にかられてほんの少しだけお仕事をしたいというお客様に使っていただけてるのかなと思います」
進化を続ける熱海市
従業員のために社員寮も新設しました。
古屋旅館
内田宗一郎 社長:「お客様を喜ばせたり、笑顔にさせたりする商売でございますので、まずはその働くスタッフが幸せで無ければいけないという思いでそういったことを行っている」
観光業界全体が苦しむ中、熱海市では今こうした積極的な設備投資が行われていると言います。
熱海市 観光建設部
立見修司 次長:「お客様が入らない時期に、次のお客様を迎え入れるための準備をしっかりしていただいているような宿泊施設が非常に多い。ああいう災害があった後にも、熱海にはまだまだお客をひきつけるだけの魅力があるという風にとらえていただいておりますので」
古屋旅館
内田宗一郎 社長:「今ある資源を生かし、今までになかった資源を発掘する。そういうところを愚直に、みんなで知恵をだしあっていくことが大切なのかな?それができれば、引き続きお客様に選ばれやすい温泉場であれるのかなと思う」
愚直に一歩、一歩。逆境を乗り越え熱海市は進化を続けます。