メロン500円のアメリカで1万3000円の「クラウンメロン」で勝負 コロナ禍の苦境で新たな販路求め…勝算は? 静岡・袋井市

 静岡県が全国に誇る名産品「クラウンメロン」。極上の味わいはもちろんのこと、その難しい栽培技術や厳しい品質管理体制などから、静岡が生んだ「メロンの最高級ブランド」として愛されてきました。

画像: メロン500円のアメリカで1万3000円の「クラウンメロン」で勝負 コロナ禍の苦境で新たな販路求め…勝算は? 静岡・袋井市

 そんなクラウンメロンが、1月から アメリカ本土に初輸出。現地のショッピングセンターで販売を開始したというのです。

メロンと一緒に英語のパンフレットと専用の化粧箱も

 現地でも売れ行きは好調。今では毎週のように注文が入るほどの人気ぶりだそうです。ということで、袋井市にある農協へ行ってみると…。

画像1: メロンと一緒に英語のパンフレットと専用の化粧箱も

 行われていたのはクラウンメロンの梱包作業。このフィルムがアメリカ輸出には欠かせないそうです。

クラウンメロン支所 海外担当 鈴木陽介チーフ
「アメリカ向けのメロンを我々が開発した鮮度保持のフィルムに入れる。より長持ちするように梱包しなおして発送する作業を行っている。4~5日くらいで現地に届くスケジュールになっている」

 これまでも香港、東南アジアを中心に輸出されてきたクラウンメロン。去年11月、日本からアメリカ本土へのメロンの輸出が解禁になり、12月に初めての商品が発送されました。今はカリフォルニア州のロサンゼルスにある 日本企業が展開するショッピングセンター10店舗に週1回のペースで出荷しています。

静岡クラウンメロン 海外担当チーフ 鈴木陽介さん
「初めてアメリカ本土に行くということで、やっぱり(現地の)お客さんに、もっとクラウンメロンを知ってもらいたいと思って、英語のパンフレットと専用の化粧箱をメロンと一緒に送って売り場で活用してもらっている」

画像2: メロンと一緒に英語のパンフレットと専用の化粧箱も

 アメリカで流通している一般的なメロンは表面がツルツル。価格も500円程度ですが、クラウンメロンは現地で1万3000円ほどで売られています。それでも、その値段や見た目の珍しさなどが現地で話題になり、徐々に手に取る人が増加。主に富裕層から人気だといいます。

「手ごたえはいい」

 世界最大のマーケットであるアメリカ本土への進出は、コロナ禍で苦しい状況に立たされていたクラウンメロンにとっては久々の明るいニュースとなりました。

画像1: 「手ごたえはいい」

クラウンメロン支所 中條文義支所長
「現状では毎週のように送って1日か2日で完売しているので、最初の手応えとしては良いかなと。4年ぐらい前からアメリカも輸出解禁してほしいとお願いをして、やっと去年の11月に解禁されたということで。期待と希望で胸を膨らませて今取り組んでいる」

 去年、おととしの緊急事態宣言で主要な取引先である首都圏の百貨店やホテルが軒並み休業。メロンの相場は落ちこみ、売り上げが4割から5割減った月もあるといいます。さらに、去年は海外への輸出が禁止となり、一時期は国内外の販路を断たれる状況に追い込まれました。

クラウンメロン支所 中條文義支所長
「全く人流が止まってしまって、メロンも売れなくなってしまった。 我々のメロンはもともと高級な果物ということで、人流が止まったり店が休業したときは通常メロンが流れていないところに流して“しのいだ”と言ったら変ですけど、値段も買いやすい値段に落としてやってきた」

画像2: 「手ごたえはいい」

 決して「生産者の血と汗がつまったメロンを捨てるようなことがあってはならない」と冷凍カットメロンやピューレなど加工品の展開にも力を入れ、消費拡大へ向け試行錯誤を積み重ねる日々が今も続いています。

生産者は…

画像: 生産者は…

 一方で、生産者は。

生産者 岩本将俊さん
「あと20日間ぐらいで収穫となります」

 現在、県西部を中心に200人を超える生産者。岩本さんも20年ほど前に父親である先代の後を継ぎ、クラウンメロンを栽培しています。

生産者 岩本将俊さん
「僕はまだ子どもが小さいのでメロンをやめることはできないですし、袋井の名産品をこれからも守っていくという気持ちで頑張ろうと思った。やっぱり原油価格も高くなって非常に苦しい時が続いているので、心が折れそうになる時もあった」

 コロナ禍でメロンの相場が落ちるだけではなく、去年から原油価格が高騰。ハウスを温めるため、1年中重油を使う生産者にとっては大打撃となりました。経営が悪化し泣く泣く廃業を決断した生産者も数人いるということです。

 生産者にとって厳しい状況が続きますが、アメリカ本土への初輸出については期待感を口にします。

生産者 岩本将俊さん
「今までは農家にとしては、自分で(メロンの)値段が決められないというのもあるし
 それが海外に向けて繁忙期以外でも売れるようになれば収入もとても安定すると思 うので大いに期待しています」

クラウンメロン支所 中條文義 支所長
「東南アジアで(輸出量)9割ぐらい占めているのが、アメリカ一国でも東南アジア以上の需要があると読んでいるので、もうひとつの大きな市場として膨らめば、組合員にとってはメロンを作る励みにもなるし、アメリカの輸出が拡大することを目指して今のところ取り組んでいます」