カツオの街を揺るがす『窃盗事件』 漁協職員らが関与し計量通さず抜き取り『横流し』 静岡・焼津市
船員「少しずつだったらわからない」
焼津漁港に水揚げする船員:「(水揚げしたカツオを)はかりにかけないで、そのままやってる(横流し)というようなやつは、昔から次々に、なっていますからね。(漁協の中で)引き継ぎ引き継ぎみたいになってますから」
こう話すのは、カツオではありませんが、焼津漁港に水揚げする漁船に乗る男性。カツオ漁船と同じ漁港に出入りするため、漁業関係者らからカツオ窃盗の実態についての話が耳に入ってきているといいます。
焼津漁港に水揚げする船員:「たくさんじゃなくて、ちょっとぐらいずつなら、あまり分かりませんからね。何トンあげたのか。少しだったりしたら」
計量せずに抜き取られ
焼津漁港での「カツオの窃盗」が明らかになったのは去年10月。水揚げされた冷凍カツオ、およそ4トン、時価74万円相当を盗んだとして、当時水産加工会社の社長だった男や、焼津漁協職員だった男ら4人が逮捕されました。
その後、同様の窃盗被害が相次いでいたことが発覚。合わせて7人が逮捕されました。水揚げされた冷凍カツオは通常、業者が競り落とした後に漁協が計量します。しかし、警察によると、一部のカツオは計量されずに抜き取られ、水産加工会社に横流しされたということです。
被害を受けた会社の男性:「当社の船が赤道付近まで1週間から10日かけて行って、何週間もかけて魚を取ってきます。非常に危険な作業でもありますし、乗組員が洋上で取った魚をですね、横取りされるなんていうのはとても許せる話ではない」
被害を受けた会社の男性:「過去の入庫記録を見たら、毎回3~4パレット(1パレット=約1500kg)ずつやられていた。微量だから気づけない」
被害者の弁護士 河村正史弁護士:「この3年間だけでも、実質的な全部の漁業会社の被害を考えたら、億という数字にあるのはほぼ確実だろう」
不正は20年以上前から
焼津漁協の内部調査では、職員による不正は、少なくとも20年前から行われていたことが明らかになりました。水産加工会社から見返りとして現金を受け取り、社員旅行や遊興費にあてられていたことも分かっています。
明るみに出た不正に焼津市民は。
焼津市民(70代男性)
「もう恥ずかしいというのが、一番じゃないですかね。焼津と言えばほんとに魚、特にカツオ、それが有名になっているところに、水を差すような形じゃないかなと思いますけどね」
焼津市民(70代女性)
「焼津市民としては恥ずかしいと。カツオの水揚げ日本一とかね、騒がれてほんとにね、全国に広まっていたのにね、こんなことでね、焼津の街が、もうほんとに、恥ずかしいやら悔しいやらですね」
一方で、近くに住む人が、今回の事件で逮捕されたというこちらの男性は。
焼津市民(50代男性)
「近くに捕まった家があったので。結構ね、昔から町内会に色々配ったりしてくれたりというお金はどこから出たのかとかね、急に会社が大きくなったりしたとかね。ばかに儲かってるなぁっていう感じ」
第2.第3の事件も相次ぎ発覚
また、2月、新たに発覚した「第2の窃盗事件」で県警は関係先を家宅捜索。5月には焼津漁港で水揚げされたカツオが鹿児島県に横流しされていたとして鹿児島県の卸売販売元代表の男性ら7人が逮捕されましたが、先週この男性らは不起訴となりました。この、いわゆる「鹿児島ルート」をめぐっては、神奈川県の運送会社元社長(49)ら3人が窃盗罪で起訴されています。
さらに7月。
久須美舞記者
「今、県警の捜査員らが青い箱を持って焼津漁協の建物の中に入っていきました」
県警は新たに、去年3月、焼津漁港で県内の船会社が水揚げした冷凍カツオおよそ17トンが盗まれた事件に漁協が関与したとみて家宅捜索に入りました。いわゆる「第3のルート」の捜査も動き出したのです。
漁協組合長「第三者機関を設置して1日も早く問題解決を」
県から措置命令を受け、再発防止策を迅速かつ着実に実行すること。そして改善状況の報告を3カ月ごとに行うことを求められた焼津漁協。
今回の不祥事を受け辞任した組合長の後任として7月就任した焼津漁協の橋ケ谷長生組合長は。
焼津漁協 橋ケ谷長生組合長
「再発防止とか、いろんな施策を組合自体、また、第三者機関を設置いたしまして、今後、弁護士さんを交えましていろんな問題の解決に1日も早く皆さんの信頼を得るようなことを思いまして、そういうような格好で、今後も進めていきたいと思います」
「カツオの街・焼津」を大きく揺るがした窃盗事件。失墜した「焼津ブランド」の再建への道筋は、まだ不透明な状況です。
(8月23日放送)