巣ごもり需要で人気の模型作り…木製にこだわるメーカー「ウッディジョー」開発中の新作は「海外に行けないので…」 静岡市

 国内最大級の模型の祭典、「静岡ホビーショー」。今年は11日から5日間に渡って開催されます。新型コロナの影響で おととしは中止に。去年は規模を縮小しての開催でした。全国から模型関連のメーカーが集まり、プラモデルやラジコンなどの新製品がお披露目されるホビーショー。今回は3年ぶりに一般公開も予定されているので、にぎわいが戻ってきそうです。

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巣ごもり需要で人気の模型作り…木製にこだわるメーカー「ウッディジョー」開発中の新作は「海外に行けないので…」 静岡市

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木にこだわる「ウッディジョー」

西尾梓アナウンサー:「模型の街・静岡で、ひときわ異彩を放つメーカーがこちら、ウッディジョーです。模型と言えばプラモデルが一般的ですが、ウッディジョーでは木でできた模型づくりにこだわっているんです」

画像: 木にこだわる「ウッディジョー」

 静岡市駿河区にある「ウッディジョー」は、木製模型の企画から設計、製造、販売までを手掛ける模型メーカー。今年 設立から20年の節目を迎えました。帆船をはじめ、お城やお寺などの歴史的な建築物の模型が人気の商品。細かいところまで忠実に再現された精密な造形で、多くのファンの心をつかんでいます。ホビーショーには2003年から毎年参加。もちろん今年も出展しますよ。

ホビーショーに出展するのは

 ホビーショーに向けた準備が進むなか、社内を案内していただいたのは、常木則男社長、現在81歳。今も商品の企画などに携わる ものづくりの現役です。ウッディジョーという会社の名前も、社長の名字・常木から来ています。この春 発売されたばかりの新商品から、現在開発が進む新しい企画までホビーショーに出展する模型の数々を、一足先に見せていただきました。

画像1: ホビーショーに出展するのは

 全国的にも珍しい 木製の模型を作っている「ウッディジョー」。「静岡ホビーショー」に向けて準備中のところにお邪魔しました。

西尾アナ:ホビーショーに出展するのはどれ?

ウッディジョー 常木則男社長:「ホビーショーに備えて こんな風に飾ったらどうかなと飾ってみた。本番になったら多少変わるかもしれないが、こんな感じでやりたいなと思っている」

画像2: ホビーショーに出展するのは

西尾アナ:今年の新商品は?

常木社長:「これは珍しい軍船。うちは船も城も作っているので。新製品の中には銀閣寺も…、有名な建物だから作りました」  

 こちらも4月に発売されたばかりの新商品。徳川家康が祀られている日光東照宮の「陽明門」です。どっしりとした重厚感に加え、絢爛豪華な飾り細工の1つ1つまで精密に再現されています。

 ウッディジョーの得意分野、帆船の模型では「黒船」もホビーショーに出展。5月下旬に下田で開催される「黒船祭」が近いということもあり、少しでも祭りの盛り上げになればと、展示を決めたそうです。

模型で再現する苦労も…

 他にも注目の模型は、日本各地のお城。たくさんのお城をずらっと並べるのにも理由があるんです。

ウッディジョー 常木則男社長:「どこか お城に行ったことはありますか?」
西尾アナ:「岐阜出身なので岐阜城」
常木社長:「大きいなと思っただろうが、この城は全部1/150の縮尺なので
比べるとこんなに小さい。これを見ると初めて えぇっ!と思うことがある」

画像: 模型で再現する苦労も…

 縮尺を統一したお城の模型を並べることで、大きさの違いが一目瞭然。日本各地にあるお城を、その場で見比べて楽しむこともできます。ただ 模型で忠実に再現するためには、それ相応の苦労もあるそうです。

ウッディジョー 常木則男社長:「例えば岐阜城も、役所に行って図面を見せてもらったが、貸し出すことはできないと。その場で見てくださいって、見ていても分からない。ある程度頭に入れ込んで、寸法も昔の寸法で書いてあるから分からない。だから現場に行ってみんなで測っていたら、警備員が飛んできて『何してるだ!』って。役所で許可をもらってきましたと言ったら『あっどうぞ やってください』って。そんな風に怒られながらも、いかに忠実に再現するかということをやっている。楽しいですよ」

木製模型を始めたワケは…ご先祖様

西尾アナ:なぜ木製模型を始めた?

常木社長:「うちの先祖に静岡浅間神社を建てた棟梁がいる。その当時は名字がなくて名前だけだったが、たぶん大工をやっていたから常木と付けたのではないか。大学の先生に聞いてみたら『たぶんそうだと思う」ということだった。先祖が木に関わっていたから、模型を木でやろうと。常木ですから」

 徳川家康が駿府城や浅間神社を造るため、全国から腕のいい職人を集めたことがきっかけで、木工産業が発展したと言われる静岡。その文化を受け継ぐウッディジョーでは、模型の材料となる木材の加工から自社で行っています。木で作る模型の魅力について常木社長は…。

西尾アナも挑戦

ウッディジョー 常木則男社長:「例えば法隆寺の五重塔は何百年も残っている。だから西尾さんが何か作ったら、80歳になったときにも、そんなに変わらずあると思う。ぜひ今のうちに挑戦してください。自分が作った物は、あそこ(作るのに)苦労したなって思い出がある。だからぜひ挑戦してみてください」

西尾アナ:挑戦したいです。

画像: 西尾アナも挑戦

 模型を作ったことがない私に 常木社長が薦めてくれたのが「東海道五十三次シリーズ」。歌川広重の浮世絵を立体で表現するというアイデアや、江戸時代の風景を思い起こさせる木の風合いなど、まさにウッディジョーらしさが詰まった模型です。その中でもパーツ数が少なく、初心者でも比較的作りやすいという薩?峠に挑戦しました。

西尾アナ:「初めての模型作りなので、どうなるか分からないが頑張ります!」

 最初に作るのは富士山。本体となるパーツを切り抜いたら、山の中腹部分を表現する 色違いのパーツを張り付けます。この青いパーツ、実は紙のように薄い木でできているんです。

西尾アナ:「ボンド塗りすぎちゃったかも…、どんどんいきます!」

 薩?峠のガケを表現するパーツも全て木の板。大きさも厚さも様々なパーツを、切り抜いてはボンドで接着することを繰り返します。こうしてパーツを重ね合わせることで、立体感を演出。地道な作業を続けて完成した作品には、作った人の性格が出るんだそうです。

西尾アナ:「どうしよう…、下を固定しよう」

 作り始めてから3時間以上が経過。いよいよ最後の仕上げです。

西尾アナ:「できました!すてきな模型ができあがりました。今は達成感がすごいです」

新企画「ヨーロッパの街並みシリーズ」を企画したワケは

 アイデアを生かし、幅広いジャンルの製品を作り続けているウッディジョー。ホビーショーで初披露する新しい企画も、現在開発しています。それがこちら、「ヨーロッパの街並みシリーズ」。なぜ 洋風の建築物を企画したのか 理由を聞きました。

画像: 新企画「ヨーロッパの街並みシリーズ」を企画したワケは

ヨーロッパの街並み担当 柴田紗美さん:「コロナ禍になって海外旅行にもなかなか行けないなかで、家で模型を作りながら旅行気分を味わってほしいと思って開発しました。 これはイギリスの田舎町にある茅ぶき屋根の家。この屋根が茅ぶきを表現している。下地は木の板があって、その上に木の粘土をつけて、その上から木のようなパウダーを付けている。これはイタリアですね。イタリアは石造りの家が多いので、木で石造りを表現するのがなかなか難しくて、本当にいろいろ試行錯誤した」

 しっくいの様なザラついた仕上がりになる塗料や、レンガに見立てた木のパーツを壁の一部に張り付けることで、石造りを表現しています。こちらはドイツにある木組みの家。スイッチを入れると明かりが点くようになっています。

 イタリアに留学して彫刻を学んだ経験もあるという柴田さん。自然のものを材料にした ものづくりが好きだったことから、ウッディジョーに入社したそうです。

ヨーロッパの街並み担当 柴田紗美さん:「(ホビーショー初出展について)どんな意見が出てくるか、楽しみでもあり、ちょっと怖いなというのもある」

パーツ分けの設計現場は

 新たに企画した作品を組み立て式の模型として商品化するには、パーツごとに分けなければなりません。パーツ分けの設計をしているところを見せていただきました。

設計担当 荒田茂さん:「京都にある国宝の醍醐寺の五重塔。これを模型化している。どういう風に部品の組み合わせをしていくか、どういう所を強調するか省くか。実際は1つ1つの部品がこのような組み合わせになっているが、それを模型にするためにこの通りに作っていたのでは製品化にならない。いかに単純化して、なおかつ見栄えよく、それと組み立てやすさ」

画像: パーツ分けの設計現場は

 パソコンで設計した通りに木の板を加工するのが、この「レーザー加工機」。機械だからこその精密な動きで、小さなパーツも正確に作ることができます。ただ、全てのパーツにレーザー加工機を使っているわけではなく、職人の手作業でしか作れないパーツもあるそうです。商品の箱詰めも、手作業で丁寧に。ウッディ―ジョーの繊細な木製模型は、人の手と機械の力が1つになって作られていました。

 コロナ禍で「巣ごもり需要」が高まり、一時 生産はフル稼働。商品の売れ行きは ひと段落したそうですが、現在、新たな問題を抱えています。

ウッディジョー 常木則男社長:「今はウクライナとロシアが戦争している。ロシアから材木が入ってこないウッドショックで品物がなくて困っている。うちには『ウッディジョー通信』という冊子があって、お客さんから『作った』連絡をくれる。(過去のものを)見直していたら、ウクライナの人が投稿してくれていた。だから何とか仲良くやってほしい。みんなで模型を楽しんでもらえたらなと心が痛みます。早く収まればいいなと ただただそれを念じるだけで…」

 争いが無くなることを願う常木社長は、こんな夢を持っています。

ウッディジョー 常木則男社長:「やっぱり静岡の人は駿府城が欲しい。お客さんからも作ってほしいと要望があるが、(駿府城は)図面がない。当然この時代だから、自分の城の間取りを人に見せたりしない。家康は用心深かったから(図面は)ない。家康といえば日本を平和な国にした人だから、なんとか製品化できたらいいなと思っている」