ウイルス増殖を抑える効果に期待…大量生産に成功したアミノ酸に注目 静岡・袋井市
中野結香アナウンサー:「袋井市の工場に来ました。一見普通の工場ですが、熱い視線が注がれています。その理由は、新型コロナウイルスの新しい治療法の開発につながる期待が持たれているからです」 製薬会社「ネオファーマジャパン」の袋井工場。工場の中に入ると、発酵槽と呼ばれる金属製の容器が並んでいます。ホワイトボードには「ALA」の文字。
こちらの工場では、バクテリアを使って、アミノレブリン酸を生産しています。
こちらが、「5-アミノレブリン酸」=『5-ALA』の結晶です。
チーフサイエンティストの田中徹さんは、この「5-ALA」に向き合って33年が経ちました。 ネオファーマジャパン チーフサイエンティスト 田中徹さん:「生命が生まれる根源の部分に関わったような。36億年くらい前に、生まれた化合物。生命にかかわるような化合物の大本が、このアミノレブリン酸。ですので、大本の物を作ろうというところから始まった」
世界で初めて、大量生産に成功
「5-ALA」は日本酒や納豆などの発酵食品に多く含まれているアミノ酸です。ヒトや動物、それに植物など、あらゆる生命体の細胞の中で作り出されるもので、「生命の根源物質」とも呼ばれています。今、期待が寄せられている理由は、長崎大学の研究で、新型コロナウイルス増殖を抑える効果が確認されたからです。
袋井工場で「5-ALA」の生産が始まったのは、4年前。30年以上の研究が実を結び、世界で初めて、大量生産に成功しました。
Q.私たちの生活の中で、5-アミノレブリン酸はどういったところで使われている?
田中徹さん:「例えば、アミノレブリン酸を肌に塗ると、ミトコンドリアの機能が上がるので、代謝水が増える。それで、みずみずしい肌になるという化粧品がある。最先端のところでは医薬品にもなっていて、これは、がんを可視化する」
スキンケア用品だけでなく、医療用品でも利用されているといいます。
植物の成長も早い
さらに…。 中野アナ:
「工場の隣ではイチゴの栽培実験がおこなわれています。実際にこちら、5-ALAの肥料を使って育てられたイチゴと、そうでイチゴが並んでいます。こちら、肥料が使われていないものと比べると、使われたものは、すでに色づいていて、サイズも一回り大きく成長が早いことがよくわかります」
同じ時期に植えたイチゴ。5-ALAが入った肥料を与えた方は、成長のスピードや糖度が増すそうです。
カイワレを使った実験映像では、早く成長していることがわかります。
長崎大大学院教授「増殖をゼロにする」
この技術に注目したのが、治療薬の研究、開発をしている長崎大・大学院の北潔教授です。
長崎大大学院 北潔教授
「もともと私たちがマラリアの薬として開発中の5-ALAですね、アミノレブリン酸が効くのではないかと思いまして、まず試験管の中で試してみたら、間違いなく、完全にゼロにする。増殖を。それでこれを、ぜひ人の治療、予防に使いたいということで、現在研究を進めています」
「感染」とはウイルスの表面にあるスパイクタンパクと細胞の表面にあるACE2という受容体が結合し、ウイルス内の核酸が細胞の中に侵入することです。
「5-ALA」を投与するとPP9という化合物が作られます。このPP9がスパイクタンパクに付くことで、細胞表面の受容体と結合することを妨げ、感染を抑える効果が確認されました。
長崎大大学院・北潔教授:「スパイクタンパクという、とげとげがウイルスの周りに突起が出ていますね。ウイルスはあれを使って細胞を狙って、入っていくが、5-ALAが体の中に入ると、最終的にヘムというものを作る。そのスパイクタンパクにこのヘムとかその前駆体が結合するという証拠があった。ですから実際にそこに結合して、細胞への侵入を阻害すると」
北潔教授:「この5-ALAの特徴は、われわれ自身が持っているアミノ酸。だから、非常に安全」
次のステップは臨床研究。軽症患者らに実際に投与して、症状が改善されるかなどを分析します。
北潔教授:「臨床研究は、ちゃんとヒトで、効果があるということを示すという。どれくらいの量が必要なのかとか、そういう細かなデータをこれからきっちりとっていく必要があるので、歯がゆいが、一つ一つをやって皆さんに期待にきっちりと応えられるようにしていきたい」
袋井発のアミノ酸「5-ALA」。世界でまん延している新型コロナの治療薬となる可能性を秘めています。
田中徹さん: 「本当に新型コロナを撲滅するにはちゃんと物が作れないといけない。それは相当の数が必要。もしこのアミノレブリン酸が本当に効くよということが証明されて、供給しようと思えば、この工場で、しっかり作れる体制があるから、大きな夢のある仕事だと思っている。」
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