緊急事態宣言で公演キャンセル相次ぐ…10-11月の公演予約はゼロ 感染対策はビニールの壁…コロナ禍で苦境の演劇業界 静岡市
静岡市に3年前にオープンした定員80席の小劇場、やどりぎ座。支配人を含めて劇場を運営するスタッフは3人。ここを拠点とする劇団も主宰していて、7人の団員が在籍しています。
新型コロナの感染が拡大する前、県外の劇団も公演をするなど活気に溢れていましたが、現在かつてない窮地に立たされています。
人宿町やどりぎ座 蔭山ひさ枝支配人:「イベントや公演で5団体ぐらいキャンセルが出ている、(中止の)検討中の人も4、5団体ぐらい。(演劇は)10月、11月がシーズンになるので、(例年)毎週違う団体の方が公演されているっていう状態でしたけど、今年は10月、11月は予約入ってません、まだ一件も」
今月末にやどりぎ座で公演を予定していた劇団は、公演中止の決定の理由についてこう話します。
静岡あくとねっと 望月夏哉さん:「緊急事態宣言という形になりまして、かなり関係者からも不安の声が出たので、なんとなくお芝居をやることが悪いことをしてるような、ちょっとそういう後ろめたさみたいなものがあるという話も出たものですから、これは中止にしようという決断になった」
併設のバーカウンターも酒類の提供禁止要請で
やどりぎ座では公演の後、観客と出演者などが演劇の感想を語り合うためのバーカウンターを併設しています。
劇場運営の収益が落ち込む中で、バーの営業が頼りでしたが、酒類の提供停止要請に従って、8日から閉鎖を余儀なくされています。
人宿町やどりぎ座 蔭山ひさ枝支配人:「本当は お芝居を見ていただいた後、皆さんと一緒に最後の感想をそのまま俳優と演出家とお客さんと一緒にいるところで、いろいろお話をさせていただくのが、うちのスタイルだったんですけど、終演後のバー営業とかを入れて、なんとか営業している状態だったので、コロナが始まってから三本柱の二本折れている状態になっているので、中々大変」
俳優の周りをビニールで囲んで
やどりぎ座は対象外ですが、緊急事態宣言の適用によって1000平方メートルを超える劇場などには、収容率を50%以内にすることなどが要請されています。
前例のない苦しい中での活動が続く演劇業界。しかし、やどりぎ座ではコロナ禍でも自分たちの演劇を模索しています。その取り組みのひとつが、徹底した飛沫防止対策です。演技を行う俳優一人ひとりの周りをビニールの壁で囲んでいます。
人宿町やどりぎ座 大石宣広理事:「ビニールのキューブに入って、その中でこのキューブを動かしながら演出でお客さんとの間にもパーテーション」
蔭山さんと大学の演劇部から20年来、苦楽を共にしてきた大石さんは、コロナ禍だからこそできる演劇の形があると話します。
人宿町やどりぎ座 大石宣広理事:「今このコロナ禍で出来ないこと、出来ないことを探すのではなくて、出来ることを探していくそれが重要だと感じるようになった」
やどりぎ座という劇場の名前はひとつの木に別の草木が共生する「宿り木」のように、劇場が観客、劇団、作品の拠り所になるよう名付けました。
演者や客たちが再び戻って来られるように活動を続けています。
人宿町やどりぎ座 蔭山ひさ枝支配人:「演劇は不要不急だという声はずっとあるんですけど、演劇が好きで、それによって心が救われている方が少なからずいるというのは手ごたえとして感じたので、この劇場をこれからも何とか続けていかなきゃいけないなという気持ちにはなりました」