「届け出通りなら崩落しなかった」 再検証求める声に川勝知事は『やることはやった』 28人死亡の静岡・熱海市の土石流災害

静岡県砂防課 大野正敏班長:「規制条例の届け出内容 盛り土15mで施工されていれば、盛り土全体が崩落しなかったと考える」

画像: 「届け出通りなら崩落しなかった」 再検証求める声に川勝知事は『やることはやった』 28人死亡の静岡・熱海市の土石流災害

 おととし7月、熱海市伊豆山で発生した土石流災害。災害関連死を含み28人が死亡しています。甚大な被害を及ぼした原因は“違法な盛り土”です。盛り土があった土石流の起点。この土地の前所有者は当時、熱海市に対して高さ15mの盛り土を行うと申請していました。これは規制の範囲内の高さです。ところが、実際には土砂がおよそ50mの高さまで積み上げられていました。県は去年9月、検証委員会の最終報告書で実際に業者が造成していた高さ50mの盛り土の崩落過程を解析。「激しい雨で盛り土の中の地下水が上昇し、急激に柔らかくなった土が滑って、最終的に盛り土全体が崩落した」と分析していていました。

申請通り高さ15mなら崩落しなかった

 ところが、違法な高さとの因果関係には言及されず、改めて検証がされていました。そして29日、県はその検証結果を明らかに。

静岡県砂防課 杉本敏彦課長:「今回の50メートルの大規模崩落は、現場を見てわかるように、盛り土の表面だけが落ちるのではなく、基盤からごっそり滑り落ちていった。今回の15メートルの場合、基盤面からごっそりいくようなことはないということがわかった」

画像: 申請通り高さ15mなら崩落しなかった

 つまり、届け出通り、規制範囲内の15mの高さにとどまっていれば、「盛り土への地下水流入が少なく土が柔らかくなる現象は起きなかった」と結論付けたのです。去年、検証委員会で最終報告された「地下水の流入」についても
高さ15mの盛り土であれば土が柔らかくなる現象は起きなかったとしています。では、違法な盛り土を監視できていなかった行政側に責任はないのでしょうか。去年5月、県が設置した第三者委員会は「断固たる措置をとらなかった行政姿勢に問題がある」と総括しました。

再検証求める声に…「必要ない」

 これに対し今年2月、県議会特別委員会は、「県の第三者委員会の検証は十分ではなく再検証するべき」と報告書をまとめ、川勝平太知事に提言していました。これに対し28日、川勝知事は…。

静岡県 川勝平太知事(28日):「行政対応検証委員会のほうは、どうしてああいうことが起こったのかを包み隠さず、関係者が資料を提供し発言するということで行われたと理解している。適応の法令とか県と市の連携とか、県と担当部局の連携とか、いくつかあったが、この件については、言っていることはよく分かるが、基本的に二度とこういうことが起こらないようにするには、どうしたらいいかという観点でひとつひとつみていただいたところ、差し当たって全てもう一度検証し直すには至らない」

 改めて検証をおこなわない考えを明確にした川勝知事。これには様々な意見が…

画像1: 再検証求める声に…「必要ない」

ネット上の声
「土石流は、県の落ち度もあり、再検証した方が良い」

ネット上の声
「人が何人も亡くなった熱海土石流の検証をあやふやに終わらせた」

 28日の会見では、記者から再検証しないことについて追及される場面も…。

Q.外部の方々に判断を仰ぐのが検証ではないか?
A.今、それについて、(県に対する)訴訟でも論点になると思うが、そういう場に委ねていいと思っている。
Q.再検証しないという判断?
A.はい
Q.なぜ?
A.やるべきことをやったから。これまでの対応で十分であると考えている

画像2: 再検証求める声に…「必要ない」

 土石流災害をめぐっては、責任の所在を明らかにするため、遺族らが県や熱海市に対して賠償を求める裁判を起こしています。