「将棋界の一番長い日」…静岡市の料亭「浮月楼」で6年連続開催するワケは400年前にさかのぼる? A級順位戦は藤井五冠と広瀬八段のトップ争いで最終局に

 将棋の藤井聡太五冠の最年少での名人獲得がかかったA級順位戦最終局が2日、静岡市で始まりました。戦いの舞台は静岡市葵区の料亭「浮月楼」。6年連続での開催です。

「将棋界の一番長い日」

画像: 「将棋界の一番長い日」

 藤井五冠の対局相手は、稲葉陽八段。持ち時間はそれぞれ6時間です。先手の藤井五冠はいつも通り、初手・お茶から…。

 藤井五冠にとって、初めての「将棋界の一番長い日」。名人戦挑戦に向けた大一番がスタートしました。

 対局前日、盤や駒などを事前に確認する「検分」に臨んだ藤井五冠。1日、静岡市では気温が上がったこともあってか、室内の温度を気にする様子も…。

担当者:「今、24℃です」

藤井聡太五冠:「24℃…。ちょっと暑い…」

画像: 藤井聡太五冠

藤井聡太五冠

 今季A級初参戦ながら、ここまで6勝2敗とトップタイで最終局に挑む藤井五冠。対局場の確認にも細心の注意を払います。

 将棋のA級にはトップ棋士10人が所属し、総当たりで名人への挑戦権を争います。1日の開会式ではライバルたちが一堂に会しました。

藤井聡太五冠:「A級戦最終局、浮月楼さんに伺うのは、自分は今期が初めてになる。前期までは中継を見て楽しんでいたが、今回こういった素晴らしい場所で対局させていただけるということ、とてもうれしく思っている。今までどおり集中して対局に臨めればと思っている。皆さんに最後まで楽しんでもらえる将棋ができればと思う」

 藤井五冠とトップ争いを演じている、広瀬章人八段は―

広瀬章人八段:「この浮月楼様には毎年のようにタイトル戦のような素晴らしい舞台を用意していただいて、素晴らしい機会を与えていただいていると思っている。将棋ファンの方に楽しんでもらえるように最後までギリギリの将棋をお見せできればと思う」

 いずれかのみ勝利すれば名人への挑戦者が決まり、トップの2人がともに敗れた場合、最大5人によるプレーオフの可能性を残す最終局。

 挑戦者争いについて、渡辺明名人は―

渡辺明名人:「2敗で藤井竜王と広瀬さんが並んでいるということで、まずはやっぱりそこの2人がどうなるか」

なぜ「浮月楼」が対局の舞台に

画像: 「浮月楼」

「浮月楼」

 
 それにしても、なぜ「浮月楼」がこの重要な対局の舞台になっているのでしょうか。その背景について、静岡市の田辺信宏市長は―

静岡市 田辺信宏市長(2月27日):「家康公は天下泰平の時代、将棋・囲碁に深い関心を示し、ご自身でもたしなんだのみならず、時の実力者たちを駿府城に招き、御前で対局を行わせ、将棋文化・囲碁文化の普及に努めました」

画像1: なぜ「浮月楼」が対局の舞台に

 将棋の「名人戦」のルーツは、晩年を静岡で過ごした徳川家康にあるといいます。その「名人戦」の挑戦者争いの舞台が、最後の将軍・徳川慶喜が暮らした屋敷跡地にある浮月楼なのです。

 将棋界で最も伝統ある「名人」への挑戦をかけたA級順位戦最終局。5つの対局が一斉に始まり、深夜まで及ぶことから「将棋界の一番長い日」と呼ばれます。

画像2: なぜ「浮月楼」が対局の舞台に

 知力とともに体力勝負でもある大一番で、気になるのが昼食のメニュー。藤井五冠らに提供されたのが、浮月楼が手掛ける「将軍御膳」です。サクラエビを使ったごはんや、富士宮で育った「鱒の西京焼き」など、地元・静岡の食材がふんだんに使われています。

 実はこれまでに静岡県内で開催されたタイトル戦において、おととし7月以来、5戦負けなしと静岡との相性がいい藤井五冠。

 午後3時時点での持ち時間は藤井五冠がおよそ4時間、稲葉八段が3時間ほどとなっていて、AIによる分析では藤井五冠が優勢となっています。

内外から多くの将棋ファンが

須藤誠人アナウンサー:「こちらは大盤解説の中継映像を見られるサテライト会場になっています。県内外から詰めかけた熱烈な将棋ファンたちはモニターの釘付けになっています」

画像: 内外から多くの将棋ファンが

 将棋界にとって重要な1日とあって、県内外から多くの将棋ファンが―

藤枝市民 80代:「毎年浮月楼でやっていて、6年目かな、毎回私お世話になって。(今回は)浮月楼が(申し込みが)だめで、こちらに来た。帰れないからいつも泊まりで来る」

Q.普段は何時ごろに寝る?
A.「だいたい9時か、10時くらい」
Q.いつもより夜更かしになるが?
A.「諦める。一晩だから」

 会場に一番乗りしたという女性は…。

東京から 60代:「現場で見たくて、浮月楼は申し込みをしそびれたので、こちらの方に申し込んだ。結構早く着いちゃったので、一回お城(駿府城公園)を見に行って、また来た」

Q.帰りの予定は?
A.「サウナしきじ。24時間営業で休む場所もあるから、有名だから行ってみたいと思っていた」

愛知県から 20代:「家でも見られるが、緊張感がより味わえるかなと思って来た」

Q.あすの予定は?
A.「(仕事を)2日休みにして来た。周りの人は引いていたが、気づかないふりをしてきのう帰ってきた」
Q.なんて伝えた?
A.「将棋見てきますと言ってきた」

 きょうはファンにとっても、“一番長い日”。すべての対局が決着するのは、3日午前1時ごろになる見通しです。