台風15号から半年 壊滅的な被害を受けた「油山温泉・元湯館」は今 静岡市葵区
海野博樹さん:
「建物の中はですね、中にあったごみというか、当時使っていた家具や家電、書類ですとかそういったものは一度撤去しているような状態です。ですので空っぽ。中には建具と土砂だけが あるような状態です」
創業50年以上の歴史を誇る「油山温泉・元湯館」。
静岡市葵区の山間部油山地区にある、貸切温泉です。
2022年9月23日
去年9月23日。
これまでに経験したことがないような大雨が襲いました。
川のように流れ込む濁流。
瞬く間に外に止めてあった車を飲み込みました。
海野博樹さん
「まさにどうすることもできない状態で、逃げることもできなければ、土砂を止めることもできない状態であったものですから。その時の思いとして、この場所がリセットされてしまうという感覚はありました」
高さ2メートルの濁流は壁や窓を破り、旅館の中は大量の土砂とがれきに埋め尽くされました。
およそ1カ月後
それからおよそ、1カ月。
石田アナウンサー
「ここが川のように濁流が流れていたところ?」
海野加奈子さん
「今はようやくアスファルトが見えて元が道路だったと分かってきたが、濁流がここで全部木や石が詰まってしまい、積もっている状況です」
静岡市街地から旅館に続く一本道が寸断され、重機が入ることができませんでした。
復旧が進まない中、元湯館ではある取り組みを始めました。
海野加奈子さん:
「(SNSで)皆さまにクラウドファンディングとかしてみたらどう?という声をたくさんいただいて、それから始めてみたらいいと思って、やり始めた」
2カ月足らずで、680万円ほどの支援が集まりました。
この資金は今後、新たな建て直しに向けた設備購入費や建物の清掃・解体作業費にあてるということです。
静岡県の被害は
土砂崩れや浸水、断水など県内各地に大きな被害をもたらした台風15号。
静岡県のまとめによりますと、全壊家屋は9棟、半壊・一部損壊の家屋は5000棟以上、床上・床下浸水は10000棟近くに上ります。
またこれまでに100件以上の中小企業などの事業者から県への補助金の申請があり、県は新年度以降も支援を続ける方針です
半年後
被災から半年。
館内はいまも電気が通らず、あの日から一度も旅館に明かりがつくことはありません。
こちらは風呂あがりの宿泊客にくつろいでもらおうと、漫画や本を置いたロビーです。
畳や座布団は土砂に突き上げられ、この場所はいまも時が止まったままです。
海野さんは、もう一度この場所で営業を再開するため、ある決断をしました。
海野博樹さん:
「今月終わりか来月のあたまから、建物のほうは残念ながら一度全て解体させていただくような運びとなっております。基礎の部分が大きなダメージを負っておりますので、なかなかこのままこの建物を使うというのは難しい状況です」
去年12月、専門家の調べで建物基盤部分の危険性がわかり、年明けに建物を解体することを決めました。
そして、県の砂防工事が完了したら温泉の営業の再開を目指します。
工事の完成目途は、およそ3年後。
海野博樹さん:
「まだ長い年月がかかると 承知しております。私たちども、一度折れかけてしまった気持ちをもう一度奮い立たせて、なんとか再建への道を進んでいこうかと思っております」
お客さんの笑顔を胸に、一歩ずつ前へ。
再建への道のりを歩み続けます。