のり不作で高騰…特売会では箱買いする消費者も「半年分ストックします」 のり問屋や弁当店から聞こえる『悲鳴』 静岡
のり問屋:「今まで何十年ものり店をやってきたが、今まで経験したことがない不作で、しかも相場がすごく高騰したので大変な1年だった」
スーパー:「全体的にのり(の価格)は上がっている」
弁当店:「このままずっと不作が続くとどうなるのかな、というのはすごく心配」
のり問屋や弁当店から聞こえてくる悲鳴。のり業界で今起きている異常事態とは!?
のり問屋…「のりの特売会」には列が
午前9時ごろ、静岡市清水区の工場直売所にできた行列。一番早い人は開店30分前の午前8時半に並んだそうです。みなさんのお目当ては…。
静岡市民60代:「のりです。買うものは決まっています。箱買いします。半年分ストックしておきます」
おにぎりやお弁当に欠かせないのり。工場直売所を営業するこちらのサスヨのりは、1837年、江戸時代に創業したのり問屋です。普段から工場直売はやっていますが、12日に始まったのは、半年に一度の、「のりの特売会」、「サスヨのり祭り」です。例えば、有明産の焼きのりは、通常4320円するところを4000円に。
開店と同時に大量ののりを手に取る客。先ほどの女性も宣言通り、箱買いです。買うものは決めていたため、誰よりも先にレジに並びました。中にはのりと缶詰、合わせておよそ6万円分を買い込む人も
静岡市民60代:「友人の分とか、子どもたちの分とか、全部合わせて注文とってきたので、(特売会は)うれしいです、助かります」
価格が3倍になった商品も
大人気の「のりの特売会」ですが、お客さんが群がる背景には“大きな理由”が
静岡市民70代:「のりがすごく(価格が)上がっていて、全体的にちょっと(価格が)上がっている」
サスヨのり 桜田昌隆専務:「今まで何十年ものり店をやってきたが、今まで経験したことがない不作で、しかも相場がすごく高騰したので大変な1年だった。(のりの仕入れ値は)上物だと倍以上、一番高い時には3倍ぐらいの値段のものも、のりを確保するために仕入れた」
実は今、のりが不作のため値上がりしているんです。変化があったのは今年の1月ごろから…。
こちらののり問屋でも一番人気の有明産板のりが3000円から1000円値上げし、4000円になりました。いったいなぜなのでしょうか?
海水温の上昇などが原因か
サスヨのり 桜田昌隆専務:「ここ何年か、地球の温暖化現象で海水温の上昇で、のりが段々いいものが取れなくなってきた。それに加えて今年は九州地区の雨が少なかったので、海の栄養塩が非常に少ない状態が続いて完全な不作になった」
国内最大の養殖のりの産地である九州の有明海では、赤潮の発生などで記録的な不漁となり、その影響で全国有数ののりの生産量を誇る佐賀県では、販売枚数が9億枚あまりと、昨シーズンの半分ほどにとどまっています。これによって「のり」の価格が全国的に高騰しているんです。
サスヨのり 桜田昌隆専務:「(仕入れ)価格の高騰で、スーパーにのりを販売するときに(卸売り)価格を値上げしたり、当然売れ行きも落ちてくるから、会社としての対応が難しい」
スーパーでは 500円を超える商品が並ぶ
のりの価格高騰の影響は静岡市内のスーパーでも…。
こちらのスーパーでは板のりから味付けのりまでおよそ30種類ののりを取り扱っています。やはり「値上げ」になっているようです。
ヒバリヤ駒越ベイドリーム店 大柳徹店長:「全体的にのり(の価格)は上がっている。新のりが取れる去年の12月から年をまたいだ今年1月、そのタイミングで値段が上がった」
のりの不作が影響し、仕入れ価格と販売価格が例年に比べ、1.2倍から1.5倍上がったといいます。
そんな中、少しでも安くのりを提供しようとこんな工夫も。
ヒバリヤ駒越ベイドリーム店 大柳徹店長:「非常に値段が高い商品。500円を超えるような板のりばかりになってしまったので、こういった形で月間奉仕品として、なるべくお客様に手に取ってもらえるように値段を少しでも下げさせてもらっている」
月間奉仕品の割引はおよそ1割から2割。少しでも買い物客に手を伸ばしてもらえるよう、販売価格を抑えようと店側も工夫を凝らしています。しかし、今月からはのりの主要メーカーが一斉に値上げに踏み切ったこともあり、のりの価格高騰は今後も全国的に続く見通しだといいます。
ヒバリヤ駒越ベイドリーム店 大柳徹店長:「年内12月まではこの価格で据え置く。また、新しく新のりができるが価格の上昇に関しては様子を見てということで、このまま続くのではないかと言われている」
のり弁屋「このままずっと不作が続くと…」
様々な物価高騰が叫ばれる中、のりにも押し寄せてきた値上げの波。のりが主役となる商品を扱う店からは不安の声が…。
のり弁屋 佐々木辰哉店主:「今年限りだったら何とかなると思うが、その先また、このままずっと不作が続くとどうなるのかなというのはすごく心配」
焼津市内に店を構える「のり弁屋」。のり弁を中心に30種類ほどのお弁当や丼ものを販売していて、地元のみならず、県内各地からも客が訪れるお弁当屋さんです。
そんな人気店のこだわりが…。
のり弁屋 佐々木辰哉店主
Q.こちらののりはどこ産を使っている?
A.「有明海産ののりです。確か佐賀のだったと思う。味・香り・歯切れの良さ、そこら辺を総合的にバランスを見て、のり弁当に合うような、かけたおかかに合うような味で選んでいる。いろんなのりを試して、これがいいと思って今はこれを使っている」
こだわりののりですが、弁当に使用する量は多く、のりの価格高騰は店にとって大きな痛手となっています。
のり弁屋 佐々木辰哉店主:「(仕入れ価格は)のりに関しては1.5倍くらいになる。油は倍ですね、200%以上ですね」
様々な食材や調味料の値上げもあったことで、お弁当の販売価格を1割から2割上げるという苦渋の選択をしたといいます。
のり弁屋 佐々木辰哉店主:「のりだけに限らず、いろんなものがどんどん値が上がっているので、(客には)何とか無理して納得してもらっていると思っている。のり弁屋なんで、のり弁をやめるわけにはいかない。このままずっと不作が続くと、(有明海産ののりが)ないという話になっちゃうと思うので、そうなった時はしょうがない。手に入るのりでできる限り最高のものを作っていこうと思う」
食卓に欠かせない食品がまた1つ、値上げという形で私たちの頭を悩ませています。