川勝知事と田辺市長の意見が平行線…６２億円かけた歴史博物館がプレオープン　静岡市

静岡市　田辺信宏市長（２２日）：「とても意匠を凝らした建築・設計・展示になっているので、歴史が楽しくビジュアルにわかりやすく学べる教育施設と、観光施設を両立した運営を期待したいと思っている」

川勝知事「駿府城を再建し博物館機能を」と提案　田辺市長は時間がかかると

　１９８０年代に構想が始まった静岡市のビッグプロジェクト。２０１５年には基本計画が策定され、本来なら去年開館していたはずでしたが…。

静岡県　川勝平太知事（２０１６年１月）：「ただなるハコモノを造るというのは無駄遣い。突然その場所に６２億円を使って造るということにはもう少し再考を要する。反対という事です」

　２０１６年、川勝知事は「歴史博物館」は必要としながらも、６２億円もの事業費がかかることから反対の意向を示しました。さらに…。

川勝知事：「やっぱり駿府城を造ると。それを博物館として機能を持たせると」

　当時持ち上がっていた駿府城公園での天守閣再建構想。知事はまず、公園内に駿府城を再建し、そこに博物館機能を持たせることを提案。ところが…。

田辺市長（２０１８年１月）：「（知事の提案の）実現可能性…発掘調査は始まったばかりですし、この発掘調査も文化庁とのやり取りの中で、かなり長期にわたることが想定される。そのあと天守台のこともあります。となると、博物館、いつのことになるか分かりません」

　田辺市長は川勝知事の提案を否定。両者譲らず平行線のまま時が流れました。

川勝知事「歴史博物館は必要だがここに建てるのは別の話」　田辺市長「世界を意識した都市経営を」

川勝知事（２０１８年１１月）：「この城(駿府城)自体が歴史博物館じゃないかと思っている。歴史博物館が必要なのは知っているが、それをここに建てるのは別の話。一旦ガラガラポンにするべき」

田辺市長（２０１８年１１月）：「知事が静岡市はハコモノ建設をやめてしまえばと。そんなことおっしゃったの？　世界を意識した都市経営の中、必要な所作をしていく、適正にその理念の中で投資していく」

　自身の会見の場でけん制し合う２人。するとその翌年、県は駿府城公園内の発掘　調査で豊臣時代の石垣が発見されたことを踏まえ、意見書を市に提出しました。

「駿府城跡地の遺構は、それ自体が博物館機能を有しており、将来を見通せば二重投資となるリスクがある。」

　県が計画の棚上げを求めると田辺市長は…。

田辺市長（２０１９年３月）：「新たな付加価値として、今回の発掘調査の成果として、この（豊臣の）遺構が見つかった。全体として、これから静岡の歴史を体感してもらうエリアとして進めていくということなので、まったく二重投資ではない。歴史文化施設や東御門、巽櫓、坤櫓、そして発掘調査中の駿府天守台の遺構を全体をフィールドミュージアムとして、一つの博物館に見立てた計画です。まさに新しい博物館の形、フィールドミュージアム」

新型コロナ対策の予算捻出に事業を一時凍結

　発掘現場と歴史博物館が離れていることを利用し、エリア全体を盛り上げようと、事業を進めた静岡市。ところがその翌年…

田辺市長（２０２０年５月）：「海洋文化施設、清水庁舎、そして歴史文化施設です。一旦、停止をしたという決断をきょう機関決定した」

　新型コロナウイルスの対策に予算を念出するため、事業の一時凍結を余儀なくされました。

田辺市長（２０２０年５月）：「私自身、経済の活性化を公約に掲げておりました。しかし世界的な危機で、この経済的な苦境に陥っているので、ここに集中をすると」

　紆余曲折あった歴史博物館。２２日、田辺市長は…。

Ｑ．当初、あの知事から反対意見があったりと、いろいろ紆余曲折もあったと思うが、ようやくオープンにこぎつけた。過去を振り返って、改めて今のお気持ちを聞かせてください。

田辺市長：「城下町の歴史のある静岡市ですので、やはり歴史を誇りに思う市民が増えてほしいと思っていた。昭和の終わりのころからの静岡市の懸案事項でもありました。先人たちの思いを一つ形にできたと、感無量の気持ちであります」

　　（７月２３日放送）