価格高騰の波 あれもこれも… 動物園はエサ代以外でもピンチに 重油高騰で苦境の銭湯には明るい話題が…

来園客(母親):「今ごはん食べてる。葉っぱが大好きなんだって」

来園客(子ども):「大きくなって」

動物園のエサ代が高騰

大好物の笹の葉を食べていたかと思えば、今度はリンゴをぱくり。静岡市の日本平動物園の人気者「レッサーパンダ」。おいしそうにエサを食べる様子も、来園客の人気を集めています。レッサーパンダのエサは飼育員が毎日食べやすいように煮たり、カットしたりして用意しています。
 しかし今、このエサ代が高騰しているのです。

Q:最近飼料高騰していますが、動物園のエサはいかがですか?

画像1: 動物園のエサ代が高騰

日本平動物園 飼育員 
川合真梨子さん:「そうですね。ちょっとずつ上がってきている感じはしますね」

 日本平動物園で飼育している動物は140種、600匹ほど。多くの動物がいるためエサ代は膨大です。鶏肉や馬肉、野菜などを食べるホッキョクグマの1カ月のエサ代は、およそ30万円。草やリンゴ、サツマイモなどを1日およそ50キロ食べるアジアゾウは、月およそ17万円。動物園全体のエサ代は年間およそ4500万円にのぼります。
 それが今、ロシアのウクライナ侵攻などを背景に海外から食材が入りにくくなっている影響でエサ代が高騰。今年度はエサ代として4800万円の予算を組んでいますが、予算をオーバーする可能性もあり、やりくりは厳しい状況だといいます。

画像2: 動物園のエサ代が高騰

日本平動物園 飼育員 
川合真梨子さん:「基本的に動物にあげる量とか品質は変えることができないので、対応には困っているところです。(食材の)種類を変えても食べてくれる動物もいるんですけど、種類が変わると食べなくなっちゃう動物もいるので、なかなか全てを変えることはできないですね」

夏冬の光熱費や燃料費も…

負担が増しているのは、エサ代だけではありません。

日本平動物園 
野田邦洋 主任主事:「全体的に燃料代とか光熱費が上がってきているのは感じておりますので、これからやっぱり夏場とか、冬場、電気代とか燃料費がかかる季節は不安があります」

画像: 夏冬の光熱費や燃料費も…

 動物たちが生活するスペースで空調を使ったり、水を汲み上げるポンプを動かしたり、動物園の運営にも欠かせない光熱費や燃料費の値上げが重くのしかかっています。
 コストの増加に直面している日本平動物園ですが、当面は入園料を据え置きエサをできるだけ安く仕入れるなどして、対応するということです。
 一方、やむを得ず値上げに踏み切った施設もあります。沼津市の「あわしまマリンパーク」では4月に入場料を200円値上げして、2000円に。島に船で渡るため、燃料費高騰の影響が大きかったということです。
 また裾野市の「富士サファリパーク」では入園料は変えずに今月からジャングルバスの乗車料金を1400円から1500円に値上げ。コストが増した分を園内の施設利用料に転嫁した形です。

銭湯にも影響が…

影響が多岐にわたっている、エネルギー価格の高騰。こちらにも影響が…。

画像: 銭湯にも影響が…

富士見湯 
吉川隆之オーナー:「浴場で使う、沸かす、A重油 1500リットルをこちらに貯めております。それで、中に行きますと、そのA重油をこちらで沸かすような形、ボイラーになっています。(重油1リットルで)昔は65円とか、68円という時代もありました。それから80円ぐらいに上がって、最近は90何円というのは見えています」

 1955年から営業している、富士市にある「富士見湯(ふじみゆ)」。富士山の雪解け水を汲み上げて沸かした、なめらかなお湯が特徴の、地元に根付いた銭湯です。お湯を沸かすために使っているのが重油。その価格は10年前に1リットル65円でしたが、現在は93円。ここ10年で1.5倍ほど上がっています。
 

 世界的に高止まりしているエネルギー価格。資源を輸入に頼っている日本にとって、その負担に拍車をかけているのが円安です。13日の為替市場は、アメリカが週内にも大幅な利上げをするとの見方が強まったことで、円を売ってドルを買う動きが広がり、一時1ドル=135円台前半まで下落、およそ24年ぶりの安値を付けました。

日本銀行 
黒田東彦総裁:「最近の急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、経済にマイナスであり望ましくない」

 日米の金融政策の違いを背景に急激に進行する円安。日銀の黒田総裁は「金融緩和を粘り強く続ける」と従来の主張を繰り返しました。

ひとり暮らしの新規客

「ここ30年で一番高い」という重油の価格に、オーナーも頭を悩ませています。

富士見湯 
吉川隆之オーナー:「厳しいです。それは厳しいです。その分ボイラーを新しいのに変えたり、メンテナンスしたりして、維持するしかないですし…」

 経営は苦しくなるばかり。入浴料を上げてコストの増加分をカバーしたいところですが、そこにあるのは条例の壁。銭湯など公衆浴場の入浴料は県の条例で450円と決められていて、変えることができないのです。さらにシャンプーやボディーソープなどの仕入れ価格の上昇にも直面。苦境は長引きそうですが、わずかながら明るい話題も。

 ガス代や電気代が上がっている影響なのか、特に一人暮らしとみられる新規の客が増えているそうです。

画像: ひとり暮らしの新規客

富士見湯 
吉川隆之オーナー:「なかなか銭湯の良さを維持していくのが大変だと思っています。大変苦しいんですけど、世の中いろいろ(値段が)上がっていますよね。上がっていることによって、逆にお客さんが増えているような形はあります。ありがたいです」