当初予算案の修正案可決…川勝知事側近の報酬ゼロ 知事野党「正常な行政の形に」 与党「原案提出前に言うべき」 静岡県

「本修正案に賛成の方はご起立願います。起立多数と認めます。ご着席ください。本修正案は可決することに決定しました」

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 静岡県政史上2度目の異例の事態となりました。17日に閉会した県議会。可決されたのは、川勝県政13年目にして最大となる総額およそ1兆3600億円の新年度予算です。

可決されたのは「修正案」

 ただ、成立したのは県が示した“当初予算案”ではなく、知事と対立する最大会派・自民改革会議を中心にまとめられた“修正案”でした。

画像: 可決されたのは「修正案」

 今回、自民改革会議が問題にしたのは、知事が任命する「非常勤特別職」。その報酬をカットするという修正案です。

 特別職の退任を迫る自民改革会議。県議会最終日の朝、川勝知事は覚悟を決めているようでした。

静岡県 川勝平太知事(17日):「きょうはともかく議会がお決めになることですから、そのときまで、はい」

Q.可決された場合、再議するお考えはいかかでしょうか?

A.「2人も潔いですね。辞任する意向を示されましたでしょう、ね」

非常勤特別職とは…

 そもそも、非常勤特別職とは、地方公務員法で「専門的な知識・経験に基づいて助言などを行う立場」とされています。
しかし…

県議会総務委員会委員長 自民改革会議 河原崎聖県議:「篠原特別補佐戦略官および土屋特別補佐官については、専門的な知識・経験、または執権を有するか、および職務内容が助言の範疇で成立するかの2点について、納得感のある説明がなされているとは言い難い。東郷補佐官については、助言を継続的に受けることが県民生活に必要であると認めるに至る説明は得られておらず、また職務実態に比べて報酬が過大であるとの意見もありました」

画像: 非常勤特別職とは…

 異例の報酬カットとなったのは、川勝知事が任命した3人です。

 県庁内で知事の“側近中の側近”として知られ、政策全体の総合調整を担う、特別補佐・戦略監の篠原清志氏(65)。

 東部・伊豆半島地域の振興と東京オリンピック・パラリンピックの運営を担当した土屋優行氏(66)。

 そして、元外交官で2011年から地域外交を担当する特別補佐官に就任した東郷和彦氏(77)の3人です。

 それぞれの報酬は篠原氏と土屋氏が月90万円、東郷氏は月60万円ですが、修正案では交通費などを加えた3447万円がカットされました。

 自民改革会議は、篠原氏と土屋氏について、地方公務員法で定める「助言」の範疇(はんちゅう)を逸脱していると批判。東郷氏については、勤務実績に対する報酬の多さを指摘しました。

 東郷氏が今月、執務に当たったのは18日時点で計7日。平均すると週2回程度の勤務で、報酬は月60万円です。

野党・自民改革会議「正常な行政の形が取れる」

 知事の“側近人事”にくぎを刺し、対決姿勢を鮮明にしたようにも見える自民改革会議。県議会終了後、野崎代表は―

画像: 野党・自民改革会議「正常な行政の形が取れる」

自民改革会議 野崎正蔵代表:「逸脱した行為をそのまま見過ごすことができないということで、今回修正を出させていただいて、可決・成立したことは正常な行政の形が取れるということで良かったと思っております。特別職に関しましては、誰がどの基準で決めているのかというのがはっきりしないということなので、今回それに基づいて(報酬の)月額制を日額制に変えるという委員会もありましたので、そうしたことをしっかりやっていただければと思います」

 過去に静岡県政で当初予算案が修正されたのは、2016年に浜松市の新野球場建設に関する事業費が減額された1回のみです。

与党・ふじのくに県民クラブ「当初予算の原案を出す前に言うべき」

 知事与党とされる県議会第2会派の「ふじのくに県民クラブ」は自民改革会議のやり方に疑問を呈しました。

画像: 与党・ふじのくに県民クラブ「当初予算の原案を出す前に言うべき」

ふじのくに県民クラブ 佐野愛子会長(17日):「そのようなお考えがあるのでしたら、当初予算の原案を出す前に言ってくるべきだと思います。県政を停滞させるだけであって、決して、県政の発展や推進に伴うやり方ではないと思います。今回、知事は再議を出さなかったので、まだ、よかったのですが、本当に県の予算の執行を止めかねることにもなりますし、このようなやり方に対しては本当に憤りを感じます」

特別補佐・戦略監の篠原清志氏「遺憾であり、残念」

 修正案の可決だけでも極めて珍しいにも関わらず、その内容が「非常勤特別職」の報酬をカットするというのは、まさに異例中の異例。報酬が予算化されず、篠原氏と土屋氏は今月で退任。東郷氏も留任は難しい状況です。

画像: 特別補佐・戦略監の篠原清志氏「遺憾であり、残念」

 特別補佐・戦略監の篠原清志氏は静岡朝日テレビの取材に対し、いまの思いをコメントしました。

篠原氏:「県の施策、事業がより良いものとなるように、自らの経験、知識に基づく助言を行なってきた。しかし、不本意にもこのような結果になったことは、遺憾であり、残念である。県議会議員の多くの方と、長年、ともに県政の発展のために仕事をしてきた。今回の議論の中で、それらの実績、成果を無視されたことも残念でならない」

 県議会終了後、川勝知事は―

静岡県 川勝平太知事(17日):「土屋優行君並びに篠原清志君、非常勤特別職についていただいておりますけれども、お2人につきましては法に定めるところの専門的な知識・経験または識見を任用時において有していたと判断いたしまして任用したものであります。この度ご指摘をいただきました点は真摯に受け止めまして、今後の運用におきましては改めて法の趣旨を徹底してまいります」

                    (3月19日放送)