静岡5区 細野氏圧勝も吉川氏復活 誤算?どうする自民党入り

細野豪志氏は選挙戦の第一声で、こう宣言しました。

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細野氏:「安全保障に万全を期す国家を作りたい。そのために自民党入りが必要だ。ご理解いただけませんか、皆さん。政治生命をかけた、最大の決戦である」

かつて、民主党のプリンスと呼ばれた細野氏。今回はただひとり、無所属での戦いでした。

選挙となれば、以前は応援で全国を飛び回る日々でしたが、今回は地元に張り付いての「ドブ板選挙」を展開しました。

細野氏:「非常に厳しい選挙です。負けたら政治生命終わります」

現在は、二階派の「特別会員」という立場で、自民党入りを目指しています。選挙期間中は、これまでであれば考えられない、支援者へのこんな呼び掛けも。

細野氏:「比例区では公明党。書いていただけませんでしょうか。」

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細野氏の行動は「変節」という批判も浴びましたが、選挙戦が始まれば各地に、「細野党」といわれる熱心な支援者たちが集まりました。「負けたら政界引退」という宣言も、陣営の引き締めにつながったようです。

支援者の男性:「あんたが自民党に行こうが共産党に行こうが。俺はどんなことがあっても応援する」
細野氏:「ありがとうございます」
支援者の男性:「大差で勝たなきゃだめだで。今度(自民党)公認とるんだから」

細野氏:「無所属で厳しい、いろいろな風当たりも含めて厳しい批判もあるっていうことを、皆さんよくわかっているので、それを乗り越えようと一緒に戦っていただいている方が多い」

ただ、細野氏から離れていった支持者も。

元支持者の女性:「全部裏切られたじゃないですか。私たちがどういう思いでずっと応援してきたと思います?」
細野氏:「でも自衛隊は必要ですから」
元支持者の女性:「それはわかりますけど、それはどうでもやりようがあるでしょ」
細野氏:「共産党は自衛隊を認めていない」
元支持者の女性:「共産党の話じゃないんです、あなたの人間性を言ってるんです」
細野氏:「安全保障で、共産党と組むのは私はどうしてもできないんです」
元支持者の女性:「いや、だって公明党とは組んでるじゃないですか。公明党と反対のこともやってるじゃないですか。みんな考えが違ってそれを合わせてうまくやっていくのが政治でしょ?」
細野氏:「それは私の考えで選んだんです」
元支持者の女性:「そうでしょ、それはあなたの考えでしょ。それが私は裏切られたって言ってるの。もうずーっと応援してきたんだから」

元支持者の女性:「許せない。私たちに、本当に理解してもらえる話してないもん。私らは裏切ったと思ってる、裏切られたと思ってる。だってずーっと自民党批判してたんですもん。だからもう、信念のない人だなって」

細野氏は、このときの出来事を後日、演説で語っていました。

細野氏:「その女性は私が野党を離れて与党に行くということについて、どうしても納得できなかった。比較的メンタルが強い私もですね、ちょっとがっくりきました。ただ、やっぱりこういう声にも丁寧に答えていかないといけない」

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一方、自民党・岸田派の吉川赳氏。自分こそが「正統な自民党公認候補」であると主張し続けました。

吉川氏:「自民党の正統な議席を皆様と共に守れるのかが、私のこの戦いに課せられた使命。何がなんでも負けられないんです」

支援組織や業界団体を挙げた総力戦で挑んだ吉川氏の陣営。自民党の福田達夫総務会長は、細野氏を次のようにけん制しました。

自民党 福田総務会長:「選挙が終わって我々の公認でない方が勝ったら、その方を自民党に入れる。そんな約束はしたことありません。無所属の方が、どんなに背が高くたって、どんなにかっこよくたって、どんなに仕事ができると威張ったって、仕事にならない。皆さんには還らないんです」

この集会のあと、「比例復活の可能性」について聞かれた吉川氏は。

吉川氏:「(Q比例区での復活当選が繰り返されてきたと思うが、今回もそういう結果になったら正直な気持ちというのは?)まず今回、自民党全体が非常に厳しい戦いを展開している。なので私は比例当選というのは可能性としては極めて厳しい、それ自体が極めて厳しいと思っている」

また立憲民主党の小野範和氏は、これまで細野氏に投票してきた野党票の取り込みに力を入れていました。

小野氏:「民主党として(細野氏を)支持していたけど裏切られたと。もう誰も応援できないという人もいるので、そういう人たちをもう一度振り向いていただけるように信じられる政治を作っていきたいと思います」

そして、選挙戦最終日の夜。細野氏の地元・三島市の演説会場には大勢の支持者たちが。細野氏は最後の訴えで、吉川氏の比例復活を許さない「圧倒的勝利」を誓いました。

細野氏:「私をカムバックさせていただけないでしょうか。簡単にはいかないかもしれない。しかし、あの選挙があったから、細野豪志はカムバックした。あの厳しい厳しい逆風の選挙、奇跡を起こして乗り越えたから、細野豪志は国政の中枢に戻ってきた。それだけの結果を必ず出します。どうぞ細野豪志に力を貸していただきたい」

そして、おとといの投票日。投票を済ませた静岡5区の有権者に話を聞くと…。

細野氏に投票した女性(70代・主婦):「細野さんはいろいろなことがあったが、皆の話を聞いて人物で細野さんに入れた」

吉川氏に投票した女性(50代・パート):「国とのパイプが太い方の方が安心して任せていただけるかなと思ったので自民党に入れた。地道に活動している様子をテレビで見たし、これまでの実績も考えて投票させていただいた」

細野氏に投票した女性(50代・会社員):「(細野氏の)ブログを見たら、はたから見ると党を変えたりしていて、不信なのかなと思ったが、それには一貫した自分の考えがあってというのがよく伝わってきたので」

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細野陣営:「バンザイ、バンザイ、バンザイ」

細野氏は12万7000票あまりを獲得、自民党の吉川氏にダブルスコア以上の大差をつけて圧勝しました。

細野氏(当選の弁):「なぜ野党から与党に移るのか。この選挙区では有権者の理解を得ることが出来たのではないか。きょうをもって私、細野豪志は政治家の第二の人生をスタートした」

細野氏の支援者のひとりは、この票差を見て、「これで吉川氏の比例復活はなくなった」と確信し、自民党入党に向け、大きく前進したと感じたといいます。ところが。

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吉川氏の事務所。小選挙区での敗北が決まり、さらに惜敗率も48%という厳しい結果になり、重い空気に包まれていました。

しかし、日付が変わった午前0時半ごろ。吉川氏の比例東海ブロックでの復活当選が決まったのです。

愛知県で立憲民主党が苦戦し、小選挙区で落選した自民党候補が少なかったことが、吉川氏を比例復活の当選ラインに押し上げました。

事務所にあらわれた吉川氏は。

吉川氏:「東海ブロックの仲間たちが奮闘していただいた結果、議席をこぼれ落ちるような形で頂くというような数字だと私は思っている。あえて表現をするならば完敗、私自身は完敗だったと思う」

吉川氏は小選挙区で敗れたことの悔しさを滲ませながら、万歳三唱を聞いていました。

一夜明け、JR富士駅前では、離れた場所に吉川氏と細野氏の2人が、それぞれ通勤客らに当選の挨拶をしていました。

結局、静岡5区は、保守系の議員が2人いるという構図は変わらないまま。細野氏にとっては、自民入党に向けた戦略の練り直しを迫られる形となりました。

吉川氏:「(Q細野氏が過半数の得票をとったということを強調していたが?)冒頭から保守分裂と言われ方をしたり、しかも極めて劇場型の『負けたら引退』というような、そういったものにお付き合いさせられたなという部分はある。ただそれだけではなくて、先ほど言ったように私自身の力量不足、これは露呈したのでしっかりと研さんしてまいりたい」

今後も自民党の静岡5区支部長を続けたいとの考えを示した吉川氏。今のところ、自民党県連の対応にも変化は見られません。

自民党県連 野崎幹事長:「吉川赳候補が公認候補として受かった。それは自民党が持っていた議席を再生したということなので、そのままだという姿勢にならざるを得ない。

一方、この人は細野氏について。

川勝知事:「岸田さんの派閥に属する方がダブルスコアで負けた区がある。そういう意味で、これは大きな『台風の目になる』と思っていて、岸田政権に対して、大きく台風になるのか、単なる熱帯低気圧程度に終わるのか、このあたりは注目したい」