災害時に対応できるか…役員10人中8人が80歳以上 市への統合には「全員の賛成」という高い壁 ある『簡易水道』の悩み 静岡・富士市
白鳥衛記者:「富士市比奈に来ています。このあたりの地域では水道を市ではなく住民が管理する簡易水道が使われています。そして、奥に見えているのが、住民の生活を支える貯水槽なんですが、こちらの管理も住民自身で行っているということです」
住民だけで維持管理
街を見下ろすように鎮座する巨大な貯水槽。富士市のこの地区には3つの簡易水道組合が存在し、そのなかの1つ「山の根簡易水道」は給水戸数520戸。およそ1350人の水を担っています。
「簡易水道」とは比較的小規模な水道事業のことで、静岡県内には20の市や町で設置されています。簡易水道は水道料金が市営の水道に比べて安いことが多いですが、基本的には住民だけで維持管理をしなくてはいけません。
静岡市で去年発生した断水では、復旧までに13日間を要しました。規模こそ違いますが、災害時には行政の力を使っても、もとに戻すにはそれなりの時間がかかります。こうしたことを背景に、当事者からは不安の声が…。
組合役員10人中8人が80歳以上。組合長は79歳
山の根簡易水道組合 仁藤宏美組合長:「できれば一日も早く。災害が起きたら対応が困るので、早く市へ統合したいというのが一番の願い」
そう話すのは、山の根簡易水道組合の組合長です。現在、組合の役員は10人中、8人が80歳以上。組合長自身は79歳で「水道管理者の高齢化」が顕著となっています。
山の根簡易水道組合 仁藤宏美組合長:「役員も高齢で、次にやる方もいない。前に東北で震災があったときは、1カ月くらい事務所に待機していた。電気が来なかったので」
東日本大震災の時には電気系統の問題だったため、発電機を借りて対応したといいますが、去年の静岡市の断水のように、突然水が止まった場合には、体力的にも迅速な対応は難しいといいます。
市営水道への統合を検討するも…
また日々の管理作業も大きな負担です。
山の根簡易水道組合 仁藤宏美組合長:「ここを上がっていって、状態を確認する。亀裂が入っていると、補修をしなければならないので、一年に一回は上がって検査をする」
こうした苦労もあり、現在組合では市営水道への統合を検討しているといいます。ところが。
山の根簡易水道組合 仁藤宏美組合長:「(利用者)全員の賛成が必要という項目がある。なぜできないかと言うと、料金がすごく安い。市の料金の3分の1くらい。なかなか統合には向かっていかない」
また、貯水槽の処分は組合で行わなければならないため、統合への課題は山積しています。
去年の台風15号によって注目を集めた「水道」の被災。隣町でもある静岡市の教訓を目の当たりにしているからこそ、「断水した後のこと」に不安が募ります。
山の根簡易水道組合 仁藤宏美組合長:「災害時の安心感に温度差がある。一日も早く市に統合してもらいたいと思っている。もうそれだけ」