泥まみれの作業後に手を洗う水もない…最大6万3000戸で断水した台風15号から1年 被災教訓に… 静岡市清水区
ふぐ料理店「食道楽」 田島彰店主
(蛇口をひねる)
Q.いまは水が普通に出るが、どう思う?
A.「本当に一番大変だった時のことを思い出す。皆さんがここで泥まみれになって手伝ってもらった時に、いまなら普通に手を洗っていただけるなと思って。やっぱり水はありがたい」
生活のなかに“当たり前”にある「水道」。ところが1年前、その“当たり前”は突然奪われてしまいました。
清水区で最大6万3000戸の断水
石田和外アナウンサー(静岡市清水区 去年9月):「こちらの住宅街、冠水しています」
去年9月23日の夜から、県内を直撃した台風15号。静岡市清水区では甚大な被害が発生しました。
伊地健治アナウンサー(興津川 去年9月):「承元寺取水口です。たくさんの流木やガレキなどが詰まってしまっているのがわかります」
清水区を流れる興津川の承元寺取水口では、大量の土砂やがれきが流入。この影響で最大6万3000戸で断水が発生しました。
市民生活に大きな影響を与えた「断水」。市内では清水区の和田島が最も断水解消まで時間がかかり、およそ600戸に飲用可能な水道水が供給されるまで13日を要しました。また、市内の浸水被害は4800件にのぼり、その爪痕は深く残りました。
店の壁には「泥水の跡」
あれから1年。
増田ディレクター:「巴川からほど近いこの場所は、およそ1年前、大規模な浸水被害を受けました。建物には今も、その時の水の跡が残っています」
巴川から20メートルほどの場所にある清水区のふぐ料理店「食道楽」。この場所でも去年発生した台風15号の猛威にさらされていました。
ふぐ料理店「食道楽」 田島彰店主:「巴川があふれたことと、上の方からの水が合流して、この辺が(冠水で)すごく深くなってしまった」
追い打ちかける断水
(去年9月24日 提供:食道楽)
これは台風に伴う大雨から一夜明けたときのもの。店の壁にはくっきりと、泥水の跡が残っています。
ふぐ料理店「食道楽」 田島彰店主:「調理場が冷蔵庫から全部ひっくり返ってしまって、もうちょっとこれは商売できないなと思った」
当時、店では床上80cmほどの浸水被害が発生。店内の椅子や畳などは全て廃棄となり、復旧のために水を抜くのも難しい作業だったといいます。
また、そうした復旧作業に追い打ちをかけたのが「断水」でした。
ふぐ料理店「食道楽」 田島彰店主:「ちょろちょろとは水が出たが、皆さんに(復旧作業を)手伝ってもらって、最後に手を洗う水がなかなかない。普段は普通に出るのに、手さえ洗えないというのが」
台風15号で経験した“苦労”。この1年間で田島さんは、“ある物の備え”を始めたといいます。
ふぐ料理店「食道楽」 田島彰店主:「これは一部だが、だいたい(2リットルのペットボトルで)20ケースくらいは置いてある。本当に飲料水が一番困ったので、少しでも貯めておこうと思って」
飲料水以外の備えも…
ふぐ料理店「食道楽」 田島彰店主:「まずはトイレの方。ちょっと流すだけでも(2ℓ)ペットボトルで3、4本かかったので、これ、たくさん別の倉庫にあるが、今から貯めると重たいので、台風が来るよっていう時には全部貯める」
田島さんはこの他にも浸水被害に備え、土嚢替わりの砂利や出入り口を塞ぐための板を用意していました。
人々の意識を変えた台風15号。1年という節目に、現在の心境は。
ふぐ料理店「食道楽」 田島彰店主:「今は普通に営業もできて、本当に幸せ。助けていただいた皆さん、それから水道・電気・ガス。本当に全てにありがたいなという気持ちで、感謝している」
1年前に経験した数日間の「断水」という未曽有の経験。被災地はその経験を“備え”に生かしていました。