全校児童16人…今年度50年の歴史に幕を下ろす小学校 思いを込めて描いた30メートルの壁画 静岡・森町
静岡県西部の森町にある森町立三倉小学校。50年前に開校した、自然豊かな里山にある小さな学校です。全校児童は16人。子どもの減少により、来年度からは森小学校との統合が決まっています。
思い出が詰まった大きな壁画づくり
この日、グラウンドに集まった人たちがしていたのは…。
三倉小
「三倉小の校舎を描いている」
「この学校がなくなっちゃうから、今のうちに残しておきたいと思って」
閉校する学校への感謝を込めた壁画づくりです。全校児童と保護者がプールの壁に大きな絵を描くことにしました。
全長約30メートル。歴史が詰まったキャンバスに、思い思いの絵を描いていきます。企画したのは校長先生です。
三倉小学校 萩原義顕校長:「いつまでも心に残る。そんな作品が皆で描くことができないかなと思って、この壁画作りを考えた。表現力というのは子どもたちの良さの一つ、そういったものが最後に壁画を作ることで描ければ、子どもたちも自信がつくのでは、と」
壁画のテーマは「三倉の風景、現在、未来、夢
準備を始めたのは1カ月前。校長先生の思いに賛同した保護者も協力し、壁に生えていたコケを掃除し、ペンキを塗って下地を作りました。
壁画のテーマは「三倉の風景、現在、未来、夢」。どんな絵を描くのかは、5、6年生を中心に子どもたちが考えました。
Q 今何を描いている?
3年生:「イノシシです。私の地区にイノシシとかが出るから。大きいしすごく力強そうな感じ」
4年生:「シカを描いています」
Q どうしてシカにした?
4年生:「家の近くにたくさん2匹ぐらい一緒に行動しているのを見るから」
Q (シカは)かわいい?
4年生:「はい」
この土地の自然と共に成長してきた子どもたち。
緑色の壁に表現するのは「現在」、大好きな動物や魚など、三倉が誇る豊かな自然が描かれていきます。
そして、白色の壁には「未来」を描きます。
5年生:「将来の自分と動物を描いてます。未来の私が(この絵を)見た時に、それになってなかったら、もっと頑張ってほしいから描きました。歌手になりたいです」
子どもたちの将来の夢も…
3年生:「自分が未来でこの小学校が統合しても、学校になってそこの先生になっているところです。教えるのが上手な先生になりたいです」
多くの子どもが自分の将来像を描く一方で、こんな子も…。
6年生:「三倉は夜になるととても色んな星が見えるので、僕はここが統合した時に天体観測所が建てられるという夢を描きました」
Q 三倉の好きなところは?
6年生:「星が良く見えるところと、生き物がたくさんいて自然豊かなところです」
浜松市出身の絵本作家も協力
子どもたちが描く〝今と未来″の三倉地区。その2つの架け橋となるのは、今回のイベントをサポートした浜松市出身の絵本作家・スズキコージさんです。
絵本作家 スズキコージさん:「もう素晴らしい。皆豊かだ、表現が。これから皆世の中に出ていくわけだけど、そういうのを無くさずに。本当に楽しく(描いてほしい)」
思いが詰まった壁画が完成
三倉小に思い入れがあるのは、子どもたちだけではなく、保護者や地域の人たちも同じです。
保護者代表:「この小学校を思い出してもらえるような、あそこに行くとこういう絵があるというものになれば。心安らげるような、ほっこりするような場所になったらいいなと思う」
一筆一筆、丁寧に彩られていくキャンバス。この日訪れた約50人の思いが込められていきます。そして、4時間半後…。
地域のみんなの思いが詰まった作品が完成しました。
壁の上部にあるのは…「感謝」の文字。地域、学校、先生に感謝の気持ちを込めて。ひらがなの「ありがとうございます」を組み合わせて書き上げました。
三倉小学校 萩原義顕校長:「寂しいことでもあるが、子どもたちはまた新しいステージで、新たなところで人との関わりが始まる。ここに育ったことを誇りに思いながら次のステップでも頑張って、自分の良さをいかしてもらいたい。
長い歴史に幕を下ろす三倉小学校。ふるさとに描かれた思いのこもった壁画がこの地域と子どもたちの未来を見つめていきます。