街中から30分の「日本一便利な田舎」 山あいの集落に「日本の原風景」…若者や家族連れにも人気に 静岡市清水区

 ゴールデンウイーク初日の4月29日。あいにくの天気となりましたが、たくさんの人がレトロな雰囲気のお店の前に。そのお目当ては…。

富士宮市40代女性:「チョコチップほうじ茶ジェラート」

富士市 中学1年生:「これはいちごミルクです。いつも見る景色とは違って、いつもよりおいしく感じます」

画像: 街中から30分の「日本一便利な田舎」 山あいの集落に「日本の原風景」…若者や家族連れにも人気に 静岡市清水区

 ここは、静岡市清水区の「両河内地区」。JR清水駅から北へ20kmほどのところにある、山あいの集落です。

「山あり川あり、畑あり、田んぼあり」の風景

スミス春子アナウンサー:「こうして歩いているだけでも、空気が澄んでいてとってもおいしいんですよね。鮮やかな緑、それから濃い緑のコントラストがきれいです。川のせせらぎも聞こえて、なんだかほっとするような場所です」

 みずみずしい新緑に清々しい川のせせらぎ。両河内地区には、古き良き、日本の原風景が、大切に残されています。

画像: 「山あり川あり、畑あり、田んぼあり」の風景

 神奈川県出身で、35年前に両河内地区に移住してきた加藤伸一郎さん(63)。この風景に魅せられた1人です。

NPO複合力 加藤伸一郎代表:「山あり川あり、畑あり、田んぼありで、日本の原風景がそのまま残っているところなんですね。清水の街から30分で来られる、そういう場所でもありますので、僕ら日本一便利な田舎という言い方をしてるんですよね」

過疎化が進む集落…NPO法人を立ち上げ活性化進める

 ただ、時代とともに、両河内は過疎化が進んでいきました。人口も減り、にぎわいもなくなり、田畑も荒れていくようになってしまったのです。

 そこで加藤さんは、地元の有志と共同で10年前に両河内の活性化を進めるNPO法人を立ち上げました。

画像: 過疎化が進む集落…NPO法人を立ち上げ活性化進める

 その活動拠点が、先ほどのジェラート店が入っている建物です。

NPO複合力 加藤伸一郎代表:「もともとは納屋だったんですよ。それを(NPOの)会員みんなでリフォームしましてね、屋根は張り替えて、壁をきれいにして、コンクリートを打って、中のほうも、水回りとかいろいろ手を加えて、それでお店にしたんです」

スミス春子アナ:「改築されたんですね」

若者や家族連れも訪れる場所に

 一つ一つ手作業で作られた、ジェラート店。この取り組みが大当たりしました。両河内には、これまで比較的年配の方が訪れていましたが、若い年齢層や家族連れも集まるようになったのです。

画像1: 若者や家族連れも訪れる場所に

 この店で人気なのが、両河内のお茶、久能のイチゴ、庵原のミカンが盛られ、清水が表現されているジェラート「清水盛り」です。

スミス春子アナ:「うーん。うわー、甘酸っぱい。みかんまるまるそのまま使ってるような味ですね」

画像2: 若者や家族連れも訪れる場所に

 入り口では看板ヤギの「さっちゃん」が出迎えてくれて、エサやり体験もできる、こちらのジェラート店。土日祝日のみの営業ではありますが、いつも、お客さんでにぎわっています。

両河内の原風景を守る…5000平方メートルの田畑借り受け、再生進める

画像: 両河内の原風景を守る…5000平方メートルの田畑借り受け、再生進める

 一方で、加藤さんたちが取り組んでいるのが、両河内の原風景を守る取り組みです。

スミス春子アナ:うわー。きれいですね。

NPO複合力 加藤伸一郎代表:「これが太陽の光に当たると金色に輝くんですね。これも5月の中頃に刈り取りをする予定ですけど、それの直前はほんとに黄金色で、ものすごいきれいですよ」

 高齢化が進み、手入れされなくなった土地が増えてきていた両河内地区。そこで、加藤さんたちは、およそ5000平方メートルの田畑を借り受け、再生を進めています。

 紹介してくれたのは大麦畑。初夏の風を受けて、さらさらと揺れる様子は、まさに日本の原風景です。ここでは毎年、200kg近くの大麦が収穫され、両河内エールという地ビールの材料に使われています。そして、加藤さんが、一番気に入っているという場所に連れていってくれました。

NPO複合力 加藤伸一郎代表:「こちらが小麦の畑になります。」

スミス春子アナ:小麦。わー、先程の大麦よりも少し背が低いですね。

NPO複合力 加藤伸一郎代表:「そうですね。また、刈り取りもさっきの大麦は5月の半ばですけど、これは6月に入ってから収穫をするもので。粉にして、パンにしたりとかパスタにしたりとか、ピザにしたりとか、そういうふうにして使う予定でいるんです。こういう麦の風景をやっぱり残したいと言いますかね、皆さんに見ていただきたいですね」

里山や農業を考えてもらえるきっかけになる場所に

 青々とした穂が、両河内の風景に溶け込んでいる小麦畑。麦は6月収穫されます。そして、その後はここに、そばが植えられ、秋にはそば畑になるということです。

 少しずつ再生されてきた、両河内の風景。この景色に魅せられ、人も集まるようになってきました。

富士市 40代:「すごい良い環境ですよね。川もあって、子どもたち遊ばす場所もありますし、自然がいっぱいでいい所だと思います」

富士宮市 70代:「ここはもう、とにかく自然が豊かで良い人たちが多い。とてもフレンドリーな方ばっかりで、居心地がいいですね。こういうところで緑いっぱいのところにいると、緑が近い。この感覚が全然違います」

画像: 里山や農業を考えてもらえるきっかけになる場所に

 さらに、田植えや稲刈りなどの農作業体験や、タケノコ掘り、田舎暮らしの体験など、様々なイベントも企画され、それとともに、両河内に、にぎわいが生まれるようになりました。

 これからの両河内について、加藤さんは。

NPO複合力 加藤伸一郎代表:「街の人たちが気軽に遊びに来て、自然を体験してもらったりとか、またはご自身の生活の中で、中山間地とか里山とか、農業とか、そういうものを少しでも考えてもらえるようなきっかけになる場所になればいいなと思っていまして、たくさんの人が来て、ここで元気になって帰っていただければありがたいですね」

 日本の原風景を守りながら、地域の活性化も進められている、清水区・両河内地区。新しい里山の形がここにあります。