ジュビロ磐田のJ1昇格条件をデータで検証「前例なき挑戦」
前半戦を終え、2位に勝ち点13点差
25日に放送した静岡朝日テレビ「スポーツパラダイス」(金曜夜11時10分)では、シーズン折返しのタイミングに合わせて、J2ジュビロ磐田のJ1昇格の条件について、データから検証した。
2チームが自動昇格となった2012年以降で、シーズン折り返し時に2位と最も勝ち点差があったのが、2016年の清水エスパルスの9差。続いて2013年のV・ファーレン長崎と2019年の横浜FCで8差。この3チームのシーズン後半戦に共通する項目をデータスタジアム(株)の協力で洗い出してもらい、条件を検証した。
今年のジュビロは折り返し時点で2位と勝ち点13差。ここから巻き返して昇格するのは、「前例なき挑戦」と言える。番組では、それを成し遂げるのに必要なことは「まずは守備から」という結論に至ったが、ここでは、番組内で紹介しきれなかったデータを紹介する。
カギを握るセットプレーからの得点
攻撃に関するデータでは、上記の巻き返しJ1昇格を果たした3チーム(2016年の清水、2017年の長崎、2019年の横浜FC)は【セットプレーの得点が後半戦に増加】していた。(画像1)
2016年の清水は、前半戦4点しかなかったセットプレーからの得点が、後半戦には12点に増加。シーズン序盤に肋骨を骨折し戦列を離れていた大前元紀が、9月に復帰したことが大きいと思われる。2017年の長崎は、前半戦14点、後半戦16点と、さほど差はないが、2019年の横浜FCは、前半戦7点から後半戦12点に増えている。これは2019年シーズン途中に磐田から移籍加入した中村俊輔の存在が大きいと思われる。
「セットプレーで点が取れる」という事実は、拮抗した展開でも精神的な余裕を保てることや、相手守備陣へのプレッシャーになることなど、副産物も大きい。
今シーズンの磐田には、上原力也という優秀なキッカーがいるが、過密日程を考慮してターンオーバー気味の選手起用がなされているため、常にキッカーを務める状況になっていない。山本康裕やルリーニャら他のキッカーとの連携を深めるか、できる限り上原を起用するか。
「枠内シュート」を打たせないために
守備のデータでは、【枠内に打たれたシュートが少ない】ことが挙げられる。(画像2)
2016年の清水は34.5%でリーグ3位、2017年の長崎は29.5%でリーグ1位、2019年の横浜FCは37.3%でリーグ5位なのに対して、今シーズンの磐田はここまで43.4%で21チーム中19位に留まっている。
では、シュートを簡単に枠に打たせないためにはどうすればいいのか? これに関しては「Football LAB」というサイト内の「DataStadiumアナリストに訊く」というコラムで、データスタジアム(株)のアナリスト・久永啓さんが興味深いことを書いている。
『ちなみに、これは私独自のデータですが、クロスを上げる選手に1.5mの距離で対峙できていると、ブロックしたり、ミスを誘ったりすることができます。Jリーグを見ていると目の前に立っているのに相手との距離が遠すぎて自由にクロスを上げられるシーンが結構あるんですけど、名古屋のサイドバックはその距離感も落とし込まれていると思います。』(Football LAB「DataStadiumアナリストに訊く」vol.2「失点の少なさには、理由がある。守備が光る名古屋グランパス」より引用)
クロスを簡単に上げさせない。シュートを簡単に打たせない。局面でのディフェンスの「あと一歩の寄せ」が、ジュビロ磐田の守備を改善する第一歩になるかもしれない。
勝ち点13差からの「前例無き挑戦」。地元メディアのスポーツ担当者としては、間違いなく歴史に残るであろう「昇格ドラマ」を、ぜひ見てみたい。
(静岡朝日テレビ「スポーツパラダイス」プロデューサー・小林悟)