熱海土石流の損害賠償裁判 静岡県と熱海市が原告側補助に加わる方針 被害者の会は難波県理事に電話で参加要請
熱海土石流災害の民事訴訟で、原告側弁護団が静岡県と熱海市に原告側を補助する形で裁判に参加を求める文書を送りました。
熱海市長「被災者の側に立って何かできることは」
熱海市
斉藤栄市長:「訴訟告知をされたということで、それを受けて我々として被害者の会の皆様に、我々が補助参加する、そういった対応も選択肢としてあるのではないかと打診させていただいたことは事実です」
24日午前、定例会見を開いた熱海市の斉藤市長は、土石流による被害をめぐって損害賠償を求めている裁判に、熱海市が原告側の「補助参加」という立場で関与する意向を明らかにしました。
熱海市
斉藤栄市長:「被告側から訴訟告知を我々が受けたことについては、ちょっと困惑を禁じ得ないというのが率直なところであります。そして、熱海市として、被災者の皆様の側に立って何かできることはないかと。こういうことを考えた結果であります。当然、これは議会の了解も必要だと考えていますので、調整を行った上で最終的に決まることだと思っております」
去年7月、熱海市伊豆山を襲った大規模な土石流。大量の盛り土が被害を拡大したとされていて、災害関連死を含め27人が死亡、今も1人の行方がわかっていません。熱海市議会の百条委員会では、現在と前の土地所有者がそろって証言。2人は、いずれも危険性の認識や管理責任を否定した上、その他に証人となった関係者の証言も食い違いが多く、判然としない結果となりました。
一方、県と熱海市の対応については―
行政対応検証委員会 委員長
青島伸雄弁護士:「本件における行政対応は、失敗だったと言えると思われます」
県の第三者委員会は、最終報告で「組織的な対応の失敗」と結論づけ、初動で対応を誤ったことで、なし崩し的に造成が進められた可能性を指摘しました。そして、土石流による遺族や被害者ら84人が、盛り土があった土地の現在と前の土地所有者や造成に関わった業者らに対して、58億円余りの損害賠償を求めた裁判が始まりました。
第一回口頭弁論で被告側はいずれも請求棄却を求め、全面的に争う姿勢を示しました。その上で…。
現土地所有者の代理人
河合弘之弁護士:「買う時もあそこに盛り土があることを知らなかった。
その盛り土が危険だということも知らなかった。安全工事の指導等は、熱海市からありません。10年近い期間、何もなかった。市も県も2012年10月19日以降、ほとんど記録がない。何をやっていたかというと、時々見回って草が生えているから大丈夫みたいな話で、県の過失も明らか」
現在の土地所有者の代理人は、県と熱海市、熱海市の斉藤市長に対して、法律や条例などに基づく適切な対応をしなかった責任があるとして、裁判に参加する機会を与える「訴訟告知」の手続きを行ったと明らかにしました。「訴訟告知」とは、訴訟の当事者が関係する第三者に対して参加を求めるとともに、第三者が訴訟に参加しなかった場合にも、「訴訟告知」をした当事者が敗訴した判決の効力を第三者に及ぼすことができる制度です。
原告側代理人
加藤博太郎弁護士:「様々な方に責任があったからこそ、これだけの大惨事が起きてしまったと思っていますけども、だからといって、盛り土を行った方々、あるいは長期間にわたって危険な盛り土を放置してきた方々の責任というのは逃れることはできないと思っています」
難波県理事に参加を電話で要請
被害者の会の瀬下雄史会長は、土石流を担当する県の難波理事に対して、23日に電話で「原告側で何らかの形で参加してほしい」と要請したといいます。
静岡県
難波喬司理事:「どういう形で参加するのが原告の皆さんの力になれるのか、それを検討した上で原告の皆様の意向をもう一度確認・相談して、県としての考えを決めたいと思っている。すぐに検討を始めて、できるだけ早急に答えたいと思っている」