ふるさと納税『戦国時代』 お得な「訳あり返礼品」に注目…「体験型」や他県の市町と協力も 静岡県

 競争が激化している「ふるさと納税」。物価高が続く中、「ふるさと納税」の返礼品も「お得」に注目が集まっています。

「体験型」返礼品

沼津市 小学3年(22日)
「最初は怖いと思いましたがやってみたら楽しかった」
「初めてでもこんな作品が作れるのがすごいと思います」

画像1: 「体験型」返礼品

 沼津市内の鉄工所で「溶接」を体験しているのは小学生。鉄製の「フォトフレーム」を作っています。実はこれ、沼津市の「ふるさと納税」で新たに加わった「返礼品」の1つなんです。

 ちなみに、燃えにくい作業着に身を包み、防護ヘルメットを着けて火花を散らして溶接しているこちらの方は市長です。

沼津市 頼重秀一市長
「体験型学習と言われるように、何でも実際に体験してみるというのはすごく良いことだと思う。特殊な技術を学んだり自分で体験する機会はないと思いますので、素晴らしい機会を提供していただいた」

画像2: 「体験型」返礼品

競争が激化する「ふるさと納税」

 年々競争が激化しているとも言える「ふるさと納税」。昨年度の納税額が75億7400万円と過去最高になった焼津市に県内の各市町も追いつけ!追い越せと新たな試みを始めています。

 沼津市と同じように「体験型返礼品」を企画しているのは、南伊豆町や長泉町。長泉町では自然を感じられるコテージの宿泊割引きを8月から始める予定です。

画像: 競争が激化する「ふるさと納税」

静岡市は中部横断道沿線の5つの市と「ジャムの詰め合わせ」

画像: 静岡市は中部横断道沿線の5つの市と「ジャムの詰め合わせ」

 静岡市は山梨県や新潟県など中部横断道沿線の5つの市と「ジャムの詰め合わせ」を開発。ふるさと納税を通じた「静岡市のPR」に力を入れ始めています。

「訳あり返礼品」

 県内でも各市町で様々な試行錯誤がされているなか、こんな「返礼品」も登場しています。

はねうお食品静岡工場 吉村和志工場長:「こちらが訳ありのたらこになります」

画像1: 「訳あり返礼品」

 吉田町住吉にある「はねうお食品 静岡工場」。こちらで作られているのが「たらこ」です。主に大手スーパーやレストラン、弁当店などに出荷されていますが、生産製造の過程でどうしても「規格外」などが出てしまうといいます。味や品質は正規品と変わらないため、こうした商品を「訳あり返礼品」として取り扱いを始めました。

はねうお食品静岡工場 吉村和志工場長:「こちらが訳ありのたらこになります」

Q.どのあたりが訳ありなんですか?

A.「このような形で、たらこの腹が切れてしまった薄皮が切れてしまったものを訳あり品としている」

Q,作業する中でどうしても訳あり品は出てしまう?

A.「作業も手作業で丁寧にやっているんですが、どうしても皮が薄いものですから、(薄皮が)切れてしまうことがあります」

 品質と味にこだわりがある「たらこ」。それを一つ一つ手に取り、筋などを取り除いていきます。そこで出た「訳あり品」を正規品より割安にして箱にぎっしりと詰め、完成したのが、「訳あり 切れ子 たらこ」という「返礼品」。

 たらこが1キロ入って、こちらは寄付金額1万円。物価高の影響もあり、人気の返礼品だといいます。

画像2: 「訳あり返礼品」

「訳あり」がダントツ1位

はねうお食品静岡工場 吉村和志工場長:「私どもはふるさと納税でたらこと辛子明太子(の商品)を何種類か出しているんですが、(訳あり切れ子たらこが)断トツで1位です」

 お弁当用に小分けにして冷凍保存したりするなど、様々な使い方ができると消費者側の反応もいいそうです。

はねうお食品静岡工場 吉村和志工場長:「つぶつぶ感がはっきりしていまして、味付けもあっさりしているものですから、誰が食べてもおいしいかなと。私たち(が作った)おいしいたらこをたくさん食べていただければ、と思います」

 このはねうお食品の訳あり「切れ子のたらこ」は去年、吉田町の数ある返礼品の中で6番目の人気だったといいます。

画像: 「訳あり」がダントツ1位

吉田町企画課シティプロモーション部門 八木紀行統括
Q.訳ありの「切れ子たらこ」の人気の要因は?
A.「物価高で家庭用の消費のニーズが高まる中で、正規品に比べ切れ子(たらこ)の量が多いことも好評の要因」

街の声も『廃棄はもったいない』『すごくお得』

画像: 街の声も『廃棄はもったいない』『すごくお得』

 実際に、ふるさと納税を利用しているという街の人たちからは、「わけあり品」についてこんな声が…。

静岡市から:「別に訳ありって言っても、味が変わらなくて安いんだったら、そっち(訳あり)の方が良いかなとは思いますけど」

東京から:「形が曲がっていたり、大きさがバラバラだったりで出せない(出荷できない)ものを廃棄するのはもったいない。それをふるさと納税で安く買えたりとかは良いと思う」

大阪から:「ちょっと傷があるぐらいで安く納税でもらえるなら、それで良いかなと思う。協力したい、もったいないから」

千葉から:「(訳あり返礼品で)寄付金の金額が下がると、その分いろんなところのやつが頼めるのですごくお得」

 全国の「ふるさと納税」を扱う「さとふる」によると、去年の「訳あり返礼品」の数は2019年に比べて登録数が33倍以上の増加に。寄付件数も17.6倍に増えているといいます。

 また、利用実態調査によると、全体の34%の人が訳ありの返礼品に申し込んだことがあると回答。さらにその中でおよそ4割の人が物価上昇が返礼品選びに影響したと回答しました。

あの『焼津市』は42品目の「訳あり返礼品」

 実は、昨年度の「ふるさと納税」の納税額が過去最高となった焼津市でも、「訳あり返礼品」の数が42品目と県内では断トツの数です。

焼津市ふるさと納税課 山下浩一課長:「令和3年度ですと9000件ぐらいだったものが、令和4年度ではおよそ1万4000件と訳あり品の寄付は伸びている」

 訳あり返礼品の寄付が増えている中、返礼品を準備する事業者にも変化が出てきたと言います。

画像1: あの『焼津市』は42品目の「訳あり返礼品」

焼津市ふるさと納税課 山下浩一 課長:「味はしっかりとしているんですけれど、その商品として規格に満たないものを。通常は処分をしていたりだとか、対応をしなくてはいけないものを、こういった訳あり品としてまとめて事業者側としてもそれを販売できるという。チャンネルが出来てきている」

 焼津市が取り扱う「訳あり返礼品」の中でも、人気の1つだというのが市内の練り物店「はの字食品」の返礼品。

 大正10年創業の老舗店で作られているのが、弾力のある食感で食べ応えのある「さつま揚げ」です。主にスケソウダラを原料に使い昔と変わらぬ製法で一つ一つ丁寧に製造しています。

はの字食品 服部隆史社長
Q.どれが訳ありの品なんですか?

A.「ほんのちょっとなんですけれど、ゴボウが外側に出てきてしまっている。本当は真ん中にきれいに巻かれていないといけない。これは正規品としては使えないのでこれは訳あり品の扱いになる」

画像2: あの『焼津市』は42品目の「訳あり返礼品」

 製造する中で 形が不揃いだったり、規格外の重さなど訳ありのさつま揚げがでてしまいます。もちろん味に変わりはありません。

いい販路がないか…行きついたのが『ふるさと納税』

 寄付金額 1万円で ゴボウ天、イカ天、丸揚げ、角揚げの4種類と、日替わりでもう一品の訳ありのさつま揚げが入った袋450gが5袋。全部で2.2kgと量もたっぷりです。

画像1: いい販路がないか…行きついたのが『ふるさと納税』

はの字食品 服部隆史社長
Q.訳ありの返礼品を始めたきっかけは?
A.「(以前)焼津さかなセンターで直営店を運営していた。コロナの影響もあって店舗を撤退した。店舗でも、訳あり品(のさつま揚げ)を販売していた。訳あり商品の売り場がなくなってしまうということで、何か良い販路はないかというので、行きついたのがふるさと納税の返礼品だった」

 原材料費の高騰もある中で、食品ロスを減らしたい企業側とお得に商品を手にしたい消費者側、さらには寄付金額を増やしたい自治体側と「訳ありの返礼品」にはそれぞれの期待が集まっています。

画像2: いい販路がないか…行きついたのが『ふるさと納税』

はの字食品 服部隆史社長:「訳あり品の行き場がないということになると、どうしても廃棄したり食品ロスに繋がる。訳あり品を購入して召し上がっていただくことで、食品ロスの削減部分にもなる
消費者の方がお買い得にお得な量でお求めいただけるという点で、すごく意味のあるものだと思う」

 競争が激化する県内の「ふるさと納税」事情。今後も新たな動きが出て来るかもしれません。