袴田さんの再審公判5月結審、判決は8月ごろか…弁護側「警察の違法捜査に踏み込んでもらいたい」
1966年、旧清水市で一家4人を殺害したとして死刑が確定している袴田巌さんの再審、やり直しの裁判は16日から公判が再開し、5月の結審へ重要な局面が続きます。
袴田巌さん(86)は1966年、旧清水市で勤務先のみそ会社専務一家4人を殺害したなどとして死刑が確定しています。去年10月から静岡地裁で再審が始まり、初公判で姉のひで子さんは「弟・巌に真の自由をお与え下さい」と訴えました。
去年は5回の公判が開かれ、主に確定審や再審請求審で取り調べられた証拠について、弁護側、検察側双方が立証に臨みました。
弁護団事務局長 小川秀世弁護士:「今までやってきた部分というのは確定審の本当に蒸し返しで、全然新しいことはないし、特に5点の衣類について一番重要な犯行着衣であるということに関して、(検察は)ほとんど立証はできていない」
小川弁護士の指摘する犯行着衣とは、事件から1年2カ月後に工場のみそタンクから見つかった血の付いた5点の衣類のことです。検察側は、これが袴田さんが犯行時に着ていたものだとし、一方の弁護側は「捜査機関がねつ造したもの」と反論。5点の衣類の一部を法廷で示すなど再審の最大の争点となっています。
3月には3日連続で検察側、弁護側双方が請求した法医学者らの証人尋問が予定されていて大きな山場を迎えます。
再審公判は5月に結審する方向で調整が進められていて、判決は8月ごろとみられています。
小川秀世弁護士:「これだけの審理の時間をかけたというのは、こちらとしては裁判所に出来る限り警察の違法捜査に踏み込んでもらいたいという思いが強い。ねつ造なり、証拠をかくすということについて出来る限り踏み込んでもらいたい。そういう判決をいただきたい」
担当記者解説
石田アナ:「それでは取材をしている社会部キャップの難波記者に聞きます。あすから公判が再開されますが、弁護団長を務めた西嶋弁護士の訃報が入ってきました。西嶋さんは弁護団にとってどういう存在だったのでしょうか」
難波記者:「西嶋さんは多くのえん罪事件や再審事件に関わり、初の死後再審となった徳島ラジオ商事件や県内で起きた島田事件で死刑囚の再審無罪を勝ち取るなど弁護団の中で最も経験豊富な人でした。弁護団の小川事務局長によりますと、会議の重要な局面では、西嶋さんが方針を固めるとみんな賛同するというほど実務的にも精神的にも柱だったということです。5月で調整されている最終弁論も務める予定だったので、判決を前に亡くなられたことは非常に残念ですが、弁護団として袴田さんの無罪獲得にむけ、ぶれずに公判に臨むということは変わっていません」
石田アナ:「あすから公判が再開されますが、ポイントはどこになりますか」
難波記者:「そして最大の山場と言えるのが3月25日から3日連続で予定されている証人尋問です。犯行着衣とされている5点の衣類についた血の色が赤みが残るのかどうか。双方が法医学者らを証人として呼び、立証します。5点の衣類は捜査機関によってねつ造された可能性があると再審請求審で指摘されているので、証人の証言を裁判所がどう判断するかによって判決にも大きな影響を与えることになりそうです」
石田アナ:「判決はいつぐらいになりそうでしょうか」
難波記者:「現在、5月に結審する方向で調整が進んでいます。弁護団の小川事務局長によると判決は8月ごろになるのではないかとしています。袴田さんは3月に87歳に、姉のひで子さんも2月には91歳になります。残された時間はそう多くないので、いたずらに審理が長期化することだけは避けなければならないと言えます」