「ブレーキだけで下るのは難しい」 観光バス横転27人死傷事故の現場を『バスで走る』 静岡・小山町
事故を起こしたバスの重量はおよそ16トン。検証では13トンのバスを使用して、「ふじあざみライン」を走行します。
フットブレーキはほとんど使わず
メーカーや車種によって違いはありますが、一般的に大型バスには「フットブレーキ」のほかに、補助ブレーキとして、エンジンの排気を抑える「排気ブレーキ」と、タイヤに伝える動力を弱める「リターダー」が備えられています。「排気ブレーキ」と「リターダー」はハンドル横のレバーで操作し、「フットブレーキ」は乗用車と同じように足元のペダルを踏む形です。
Q.フットブレーキを使う割合は感覚で全ブレーキのうちの何割ぐらい?
運転手「どうでしょう? 割合は難しい。なるべくブレーキを使わないような操作をするというか…」
Q.今、この状態でフットブレーキは使っている?
運転手「使っていません」
フットブレーキを使うと「エアー」を消費
3つのブレーキはいずれも「圧縮エアー」と呼ばれる空気圧を利用した仕組みです。ブレーキを使うと「エアー」を消費し、反対にアクセルを踏めば補充されます。
捜査関係者によると、今回の事故ではフットブレーキの使い過ぎによってブレーキが利きにくくなる「フェード現象」が発生した可能性が高いということです。
2つの補助ブレーキは一度に消費するエアーはそう多くありませんが、フットブレーキは強く踏み込めば踏み込むほど、多くのエアーを消費します。
Q.ブレーキを使いすぎるとエアーはなくなっていく?
西島代表取締役「なくなりますけど、そんなに急にはなくならないです」
Q.実際にこういった急な勾配の坂を下ってフットブレーキを多用すると、エアーがなくなることがある?
西島代表取締役「ありますね」
アラームが鳴るのは「フェード現象」の前触れ
Q.エアーがなくなるのはどうやってわかる?
西島代表取締役「運転席のところに警告灯が付きますので、ブザーがなると思う」
停車した安全な状態で、フットブレーキを強く踏み続けてもらうと…。
アラーム「安全なところに車を止めてください」
Q.これは今どういう状態?
西島代表取締役「もうエアーがなくなっているから、(車を)止めてくださいという警告」
これまでの捜査関係者への取材で、事故の前にバスの車内で何らかの警告音が鳴っていたことがわかっていて、ブレーキ関連のアラームとみられています。
西島代表取締役「(アクセルを踏めば)回転が上がるので、エアーは貯まるが、下り坂でアクセルは踏めない。誰しもがそう」
アラームが鳴るのは、いわば「フェード現象」の前触れ。アクセルを踏めない状況でブレーキを使い続ければ、いずれは全く利かなくなります。
そして、バスは事故現場付近へ…。
「ここでセンターラインがくっきり見えてきました。今下り始めて15分が経ったところです。事故現場に近づいてきました。下りカーブがちょうどここで、いったん勾配が緩くなるところです。見えてきました。山側の斜面が大きく削れているのが分かります。花が手向けられています。ここがバスが突っ込んで横転した場所です。ここは一回、勾配が緩やかになって、ちょっと上っていますね。少しここの場所、くぼんでいました。ずっと下りだったんですが、下りが緩やかになって、ちょっとくぼんで上る手前が事故現場でした」
Q.(出発から)わずか10分から15分くらい、そのぐらいの時間でフットブレーキを多用しすぎて利かなくなることは起こり得るもの?
西島代表取締役「今までの経験上ではない。僕が運転手とした場合ですよ。今回の事故じゃなくて、今までの経験上では僕らはなかったと思います」
Q.例えばフットブレーキを多用していても?
西島代表取締役「使い過ぎた場合はあるでしょうけど、あの距離でブレーキだけで下るというのは難しいでしょう。カーブがきついので、たぶん速度が出ちゃう。かなりの速度を出したら、あそこへ来る前にもうたぶんおかしくなっている気がするんですよね」
番組で行った独自検証。同業者が事故を起こした場所を走って感じたこととは…。
すそのバス 西島則夫代表取締役
「単刀直入に言わせていただければ、やはりカーブがきついので、やはりあそこは低速で下るという。そこの辺の、要するに運転手の技術力ですかね。時間は別問題としてね。だから普通に走れば普通にこうやって来られるので、心の構えというんですかね、その運転手に26歳という若さで、そういう構えがあったかどうかは分かりませんが、やはり自分自身がああいう立場になった場合であれば、やっぱり速度は重視してやりたい」