ようやく動き出す清水港防波堤建設事業 集中事業でも完了まで10年
しかし今年度国の補助を受け集中的に事業を進めることが決まりした。
「清水港上空です。南海トラフ巨大地震が発生すると最短2分で津波が到達すると言われている清水。
しかし、港周辺には津波を防ぐ施設は何もありません」
清水港の江尻、日の出地区。
およそ3.6キロに渡って、津波を防ぐ施設が何もない「無堤区間」となっています。
この周辺の防潮堤建設計画は、東海地震対策が進められていた1980年ごろからあったといいます。
しかし、港湾地区は土地や施設の所有者が複雑で、使用目的も多様なため調整が難しく、県もなかなか手を付けられずにいました。
ところが・・・。
「2011年3月11日 東日本大震災」
あの巨大津波を契機に清水でも切迫感が強まり、防潮堤建設の機運が高まりました。
2015年に県は、専門家や地元自治会の代表者らを集めて検討会を開き、施設の概要やデザインの案をまとめました。
しかしそのあとに立ちはだかったのが「予算の壁」です。
〇県港湾整備課 杉本文和課長インタ
「富士山がきれいに見える場所なので、景観も踏まえると多額の事業費がかかるということと、デザイン的にもいろいろな思いがあってそれをまとめることがうまくいかなかった。」
この状況が昨年度の国の動きで一変します。
国土強靭化を進めるために国が新たに創設した「津波対策緊急事業」。
今年度、清水港周辺の津波対策がこの事業の承認を受け、10年間の集中事業として53億円の予算の半分を国が補助することが決まりました。
この件では川勝知事も・・・
「どうしてもやらなければならない仕事だったので、ようやく国の交付金を活用させていただき計画を立て、安全な地域を県としては整備していくと。」
今回の事業では、大型商業施設エスパルスドリームプラザから巴川河口までの1.8キロに、高さ2.5mの防潮堤などを建設。
発生頻度100年から150年のレベル1の地震に対応できる高さです。
レベル2の最大級クラスの津波が来ても避難の時間を確保できる粘り強い作りにするといいます。
地域の津波防災対策に頭を悩ませていた地元自治会の関係者も、ようやく動き出す事業に胸をなでおろしています。
〇清水・浜田地区連合自治会 植野克秀会長
「やっとかという感じ。話を聞いてからもう6年たっている。その間がどうだったのか疑問にも思いつつやっとここまで来たのかなと。」
ただこの事業で課題とされているのが、景観の問題です。
観光を売りにしているみなとまち清水。
ここに高さ2.5メートルの防潮堤ができてしまうと海の眺望が楽しめなくなってしまいます。
「そこで採用が検討されているのが、透明のアクリル板を使った津波防護施設です。
これならば、景観を損なうことなく、天気のいい日には富士山を眺めることもできます」
津波の水圧にも耐える強度を持ったアクリル板を使った防潮堤。
ここ数年、沿岸部の景観問題を背景に東北などで設置が進み、県内では、焼津港とここ静岡市の用宗港に設置されています。
「こちらも最新の津波防護施設なんですが、津波が来た場合、波の力によってこの板が立ち上がり、高さ2mほどの防波壁になるという仕組みです」
県内では用宗港だけに設置されている「フラップゲート式」の陸こう。
普段は港への行き来ができて、非常時は自然に閉鎖できるのがメリットです。
清水港での計画では、こうした最新の設備の導入が検討されています。
〇県港湾整備課 杉本文和課長インタ
「地盤から2.5m自分の身長よりも高い防潮堤が計画されている。
閉塞感や光が届かないとか、自分の身長より高いと一気に飛び越えられないので、海への行き来、避難するときにも通り道がなくなるとか、いろいろな面でマイナス面があるので、それを解決する方法としてはいい工法」
今年度は、地盤調査などを行ったあと、夏ごろに専門家や地元との話し合いの場を作り、設計デザインを固めるということです。
10年間での完了を目指す集中事業ですが、地元には複雑な思いもあるようです。
〇清水・浜田地区連合自治会 植野克秀 会長
「住む人間にとっては10年は非常に長い。よその地区は浜松方面も焼津も仕事が進んでいる。
それに負けずに貿易港ですから清水もいいものを早く作ってほしいと願っている」
「地元では10年は長いという思いもある。前倒しするつもりは?」
「前倒しできればいい最終的な絵が共有されていればそれを早めるというのはこれまで静岡県は常にそういうスタンスでやってきたのでそういうスタンスで臨みたい」
ようやく動き出した清水の防潮堤建設計画。
防災と港の賑わいの両立という難しい課題を抱える県は、10年計画を掲げながら、できるだけ早い完成を目指します。