魔法のピッチ…IAIスタジアム きっかけは2人の監督 静岡市
その育成の秘密を探りました。
雷雨で中断した7月の大分戦。
ピッチには大きな水たまりができましたが、
雨が小降りになるとみるみる水が引き始め、
プレーに何の支障もない状態まですぐに回復。
キャプテン立田のゴールなどで、清水エスパルス
の今シーズン初勝利を呼び込みました。
ピッチの水はけのよさの秘密は?
長年このピッチを管理してきたのが、
グリーンマスターズ清水の佐野忍社長です。
ピッチの水はけの良さの秘密はどんなところに?
佐野社長
「まず芝生の下にある。これ砂でできてるんですけど、
そこにどんどん水が染み込んでいくようなグラウンドに
すること。2つ目はその水を集めて、できるだけ早く外
の出口にもっていく」
ピッチの下に埋められている特別な排水管は
管の底を波型にすることで
流れるスピードが速くなるようになっています。
ピッチの下は?
そして、最も重要な水が染み込む速さをアップさせる秘密は、
芝生の下の砂にありました。
佐野社長
「ここには芝生の根が腐ったり、
芝生を刈ったカスがたまったり、
外からほこりが飛んできたりして最初の砂から
いろんなものが混じって変化してきてる。
もう20年たってますから、
グラウンドが上がってきたけれども、
層にはなってない。
バームクーヘンみたいにはなってない」
層ができてしまうと、境目に水が溜まってしまい、
水はけが悪くなってしまうそうです。
また佐野さんは砂にある物質を混ぜる工夫もしていました。
佐野社長
「粒があるのわかります?本当はピンク色しているんですけど、
セラミックなんですよ。多孔質って言って
セラミックの中に空気を持つような穴を
いっぱい持たせたやつがあって、
それを入れてるんですよね。
そうするとこの中に空気をためる力がつく。
それと同時にこれを入れておくことによって
水の通り道もできるんです」
この水はけのいい土壌に、芝生はびっしりと根を張っていました。
佐野社長
「いま振りましたけど、ここからこの間って振ってもちぎれてない。
ということはこの間に根がしっかりある。」
さらに水で洗って砂を落としてみると…
佐野社長
「見えてるのありますね。これが地面の下の太いやつ。
ここの層が厚いとクッション性がいいんですよ」
選手への思い 芝生でチームに貢献
選手への負担が少なく、
目指すサッカーのスタイルに合った芝を作って
チームに貢献する。
佐野さんがこう考えるようになったのは、
ある監督との出会いがきっかけでした。
佐野社長
「Jリーグがスタートした30年くらい前は、
芝生をいかに品質を良くしていくかということろに
主眼をおいて管理して、できるだけ傷めないように、
そうっとそうっとというような管理なんですよね。
そうではないと。ホームチームが勝てるような
ピッチにしてくれなければ何の意味もないと言われたのが、
当時いたアルディレス監督。
そのあとを受けてやったペリマン監督」
チームのリクエストに応えなかった佐野さんは
ペリマン監督に
「芝生をなくしてしまえ。そうすれば芝生のことを考えなくて済む」
とまで言われたそうです。
佐野社長
「ショックですよ。だってサッカーって天然芝の上で
やるもんだって皆さん思ってる。
それをいらないって本場の人たちに言われたんだから、
どれだけ私たちはチームを邪魔してるんだと、
抵抗勢力なんだった思ったんでそれはショックでしたね。」
ベストピッチ賞9回受賞
2人の監督との出会ったことで、
佐野さんは「ホームアドバンテージ」を作ることを
意識するようになりました。
そしてペリマン監督の退任から3年後、
スタジアムは芝生を全面改修。
芝を短く刈れる品種に変えるとともに、
冬芝と夏芝が入れ替わるオーバーシードという方式を取り入れ、
これまで計9回の「ベストピッチ賞」を
受賞するまでになりました。
そして佐野さんは「ホームアドバンテージ」を実現するために、
スタジアム以外の部分にも気を使っています。
佐野社長
「選手って一番長くプレーしているところは練習場なんですよ。
ですから、三保の状態とここを出来るだけ近くすることによって、
より一層アドバンテージが生まれる。ですから三保とここってい
うのは、出来るだけ近い状態いするんだと、そういう管理はして
るんですね」