早春の味・伝統の水かけ菜が食品衛生法の改正でピンチに 静岡・御殿場市
静岡県の御殿場市や小山町特産の漬物、水かけ菜。6月から販売が許可制となることで地域の味が今岐路に立たされています。
鮮やかな緑。
みずみずしさも伝わってきます。
難波亮太記者:
「御殿場市と小山町の特産、水かけ菜です。ほのかな苦みが口に広がり歯ごたえもしっかりしていておいしいです」
刈り取りの終わった冬場の水田で、富士山の豊かな湧水を利用し、育てた菜の花を塩漬けにしたものです。
これが食卓に並び始めると北駿地域に春が訪れます。
今、この早春の味が岐路に立っています。
ファーマーズ御殿場では
ファーマーズ御殿場・下田雅彦店長:
「こちらがファーマーズ御殿場の地場産農家さんの漬物コーナーになります。5月中旬以降こういう状態で、農家さんの施設許可の問題で、間近に迫ってこういう状態」
本来、多くの漬物が並ぶショーケースは、隙間が目立ちます。
その要因が食品衛生法の改正です。
2012年に北海道で8人が死亡した浅漬けを原因とする集団食中毒をきっかけに、漬物の製造販売が、これまでの届け出制から、許可制になったのです。
その猶予期間が5月いっぱいで終わり、6月から保健所の許可がなければ、直販所や道の駅などに出荷できません。
ファーマーズ御殿場・下田雅彦店長:
「今までだと50人ぐらいいた方が半分ぐらいになってますね」
Qそれはお店にとってはどうなんですか
「非常に痛いです手痛いですね」
出荷をやめた人は
許可を取るためには、専用の手洗い場など衛生面の基準をクリアした施設整備が必要で、その経費が負担となり、出荷をやめるという人が相次いでいるのです。
こちらの勝又咲江さん(52)もその一人です。
3年前から台所で漬けた大根などを出荷してきましたが
勝又咲江さん:
「うちの場合は野菜がメインで生産していますので、酢漬けとか漬物は大体1割ぐらい。そのために別で生産場所とかを作らなきゃいけないというのは、資金面でも大変です。ちょっとそこまではかけられない」
改装に踏み切った人は
水かけ菜生産組合で副会長を務める勝又良治さんは、自宅横の納屋の改装に踏み切りました。
勝又良治さん:
「こちらにですね、ワンレバーで動く水栓手洗い場ですね。それから、ここが水かけ菜を漬ける前のシンク。で、ここで漬けこむ台ですね」
改修費用にあてたのは御殿場市の補助金です。
市は去年8月から12月まで、漬物生産者を守るため、設備投資にかかった経費を100万円を上限に補助しました。
勝又良治さん:
「これ改装するだけでもだいぶかかってるんです。100万円じゃ足りないんです。ですからそれを考えたときに、これだけ出してあと何年できるかなということなんですけど。御殿場の水かけ菜は特産ですから、作って残したいと」
御殿場市は
市はこれまでに34件、2200万円余りを補助しました。
御殿場市農政課 遠藤英樹課長:
「人の口に入るものですので安全安心な食べ物というのは一番大きなものになると思います。そういったところをクリアしながら、なるべく多くの方が漬物に携われるように、市として考えていかなきゃならない」
市では今後も補助金事業の継続や、農協と協力して
伝統の味を守る考えです。