天ぷら店「油の急激な値上げに直面」 生花店「55年で初めて…」 物価上昇直撃の中の日銀総裁「値上げを受け入れている」発言が波紋

 6日、都内で講演した日銀の黒田総裁。その中で飛び出した発言が物議を醸しています。

画像: 天ぷら店「油の急激な値上げに直面」 生花店「55年で初めて…」 物価上昇直撃の中の日銀総裁「値上げを受け入れている」発言が波紋

日本銀行 黒田東彦総裁:「日本の家計が値上げを受け入れている間に、良好なマクロ経済環境をできるだけ維持し、これを来年度以降のベースアップを含めた賃金の本格上昇にいかにつなげていけるかが当面のポイントである」

 家計が値上げを受け入れ始めていると分析した黒田総裁。その理由については…。

日本銀行 黒田東彦総裁
「ひとつの仮説としては、コロナ禍における行動制限下で蓄積した『強制貯蓄』が、家計の値上げ許容度の改善につながっている可能性があります」

街では…

画像: 街では…

 この発言について、静岡の街で聞いてみると…。

静岡市民 30代
「黒田総裁はちょっと一般とかけ離れているなと思った。やっぱりもうちょっと市民に触れてほしいというか、もっと我々世間の目線に立って物事を考えてほしい、いろいろな政策を打ってほしいなと思う」

浜松市民 40代
「少なくとも私や私の周りが(値上げを)容認しているとは思えないし、聞いたこともない。実際に外出するのが難しい時期はあったので、それによってお金を使わない時期があったのは確かだが、それが強制貯蓄かというと、それはうなずけない」

 黒田総裁は先週、物価高騰の実感について、こう語っていました。

日本銀行 黒田東彦総裁
「私自身スーパーに行ってですね、物を買ったことがありますけれども基本的には家内がやっておりますので、包括的にですね、物価の動向を直接買うことによって感じ取っているというほどではありません」

油は1年半で2倍近くに 天ぷら店「こんな急激に上がるのは初めて」 

画像1: 油は1年半で2倍近くに 天ぷら店「こんな急激に上がるのは初めて」

西尾梓アナウンサー
「わー、おいしそうな天丼ですね。ただ、こちらの天丼も原材料高騰の影響を受けているといいます。」

 こちらは静岡市にある1879年、明治12年創業の老舗天ぷら店。味や食感の決め手となる油にはこだわりがあります。ごま油と大豆油を独自の割合でブレンドしていて、その比率は100年以上変わっていないそうです。

 しかし、その欠かせない油は急激な値上がりに直面しています。

 大豆油は去年3月ごろ、一斗缶18リットルで3800円だったのが、今は5600円ほどに。来月からはさらに1000円上がると通知が来ているということです。

画像2: 油は1年半で2倍近くに 天ぷら店「こんな急激に上がるのは初めて」

天文本店 萩原康宏 五代目店主
「50年ぐらい仕事をしているけど、こんな急激に上がるのは初めてです。天ぷら屋は油をけちれないものですから、うちの場合、大豆油とごま油と、もう決めているものですからメーカーを変えるとか、そういうこともできないです」

画像3: 油は1年半で2倍近くに 天ぷら店「こんな急激に上がるのは初めて」

 これまでは値上がりする前に、油をまとめ買いするなど対策してきました。しかし、今はまとめ買いも追いつかないほど、値上がりのペースが早いといいます。

 さらに、油だけでなく、天ぷらを揚げるのに欠かせない薄力粉も高騰。光熱費の負担も増加しています。これまで商品の値上げは我慢してきたと言いますが…。

天文本店 萩原康宏 五代目店主
「工夫しようがないというのが現状でして、油もじゃあ何回も同じ油を使う、揚げるかと言ったらそういうこともできないですし、やっぱり最終的には価格に転嫁するか、そのぐらいしかないですよね。少し借り入れでもして、(値段が)上がる前にまとめて少し買うかとか、それぐらいしか考えられないです」

ロシアのウクライナ侵攻で花の輸入が減り

 私たちが生活する中で、直面している値上げの波。その影響は多岐にわたっています。

イシベフラワーセンター 石部敏江さん
「私も55年ぐらいお店をやっていますけど、本当にこんなに赤字が出た年は初めてです。大赤字が出てしまいました」

画像1: ロシアのウクライナ侵攻で花の輸入が減り

 店の大赤字に表情を曇らせるのは、静岡市にある生花店の店員です。

 これまでは主に葬儀用に花を提供していましたが、コロナ禍で葬儀の規模が小さくなったことで売り上げが減少。そこに追い打ちをかけたのが、仕入れ価格の高騰です。

イシベフラワーセンター 石部敏江さん
「私たち東京からも仕入れているものですから、そこから送ってくる運賃も値上げさせてくださいという手紙が来ていまして、そういう点で上がってしまう。ガソリンが上がったのに対してね」

 また、ロシアのウクライナ侵攻によって海外から花を輸入しづらい状況になったことで、国産の花も仕入れ値が上昇。

 花を包む包装紙の価格も上がっているといい、花の販売価格は全体で2割ほど上がっている状況だといいます。

画像2: ロシアのウクライナ侵攻で花の輸入が減り

イシベフラワーセンター 石部敏江さん
「本当に困っています。お客さんに迷惑がかかっていますから。値段が上がると本当に皆様に申し訳ないという気持ちですけど、お店の方としてもある程度上げないと運営できないものですから、そこがつらいところです」