「消しゴムはんこ」で街に笑顔を 静岡・熱海市に移住した津久井智子さん 業界の第一人者の思いとは…
消しゴムはんこ作家の津久井智子さん
熱海市のギャラリーで開かれた、「消しゴムはんこ」のワークショップ。
「まず削っちゃってから、あとから三角にとるもできるので無理せず黒い線の形通りにのこすことを優先して…」
講師を務めるのは、消しゴムはんこ作家の津久井智子さん。15冊の著作があり、中には翻訳されて
韓国や台湾などでも出版されている本もある業界の第一人者です。埼玉県出身の津久井さんは、2013年に熱海市に引っ越してきました。
津久井智子さん:「東日本大震災があったときに、先行きがこのまま東京でちっちゃいマンションで暮らして、やってくイメージができなくなったときに、あちこち探して、熱海がすごく気に入ってしまって、海もあるし、山もあるし、新幹線も停まるし」
津久井さんは、およそ19年前から消しゴムはんこ作家として活動しています。
津久井智子さん:「大学出てから初めてお金をもらって作るようになったときに、誰も比べる相手がいなかったので、すごく珍しいことだったから、下手でも面白がってもらえたというか周りの大人の人たちも、面白そうだからと言っていろんなことをやらせてくれたりしたので珍しかったからやってこれたような気もします」
制作は、絵を消しゴムに写すところからスタート。絵に沿ってカッターナイフで彫っていきます。彫り終わった消しゴムに専用のインクをつけて…、完成です。
津久井智子さん:「手近な材料で、簡単に道具はそろうし、始めやすい、とっつきやすい遊びだと思うんですけど、意外と簡単ではないところだと思います。
やってみるとなかなか思い通りには最初からできあがらなくて、くやしくて何回もいろんな彫り方試して、いくうちにちょっとずつ、自分の書いたとおりの画のはんこがつくれるようになってくるいう楽しさがたぶんくせになると思います」
インクを変えれば、布や木、皮、ビニールなど何にでも押せるのが、消しゴムはんこの特徴です。津久井さんの作品は、和菓子など様々な商品のパッケージデザインとして採用されています。複数のはんこを組み合わせると、立派なアートに。津久井さんが始めたころに比べて、最近では消しゴムはんこの裾野が広がっているのを感じています。
津久井智子さん:「私の本を見て始めてくれた方がいっぱいいて、中にはプロになられて自分でも本だされた方とか、テレビで教えてる方とかいるので、その人たちのおかげでずいぶん広まったなと思います」
高速船に津久井さんの作品が
熱海港に入港する高速船「セブンアイランド愛」号。
三浦徹記者:「高速船の船内です。こちらの階段を見てみますと、多くの魚が現れます。この魚消しゴムはんこによるものなんです」
海の中を表現したという内装は、津久井さんがプロデュースしたものです。
津久井智子さん:「海底の水族館みたいにしようと思って、ちっちゃい魚がこっちの入り口とこっちの入り口からはいってきて、ここでちょうど出会いました…みたいにしたくて、そういうストーリーにして、ちょっとここで愛が芽生えましたみたいな感じです」
ドックに1週間泊まり込んでデザインしました。
東海汽船 旅客営業部長
柳場厚さん:「船のリニューアルをする際に、内装をすべて新しくするというところなんですけど、これがただの壁紙じゃもったいないなということで、津久井さんに壮大な絵を書いていただこうということでお願いした。絵の前で写真を撮られていく方がかなりいらっしゃいます」
港の売店には、「ご船印」と呼ばれる乗船を記念したスタンプも置かれていて、これも津久井さんの作品です。
参加者の出来栄えは…
ワークショップも終盤。参加者たちは、自分のはんこを押して出来栄えを確かめます。
参加者:「先生がていねいに教えてくださったので、70点くらいでしょうか」
参加者:「はんこをつくったら、はんこを紙や布に押して自分の身の回りのものとして、楽しむことができること、それが楽しいです」
参加者:「あまり上手ではないですが、彫刻に興味があって、それはちょっとむずかしいんですけど消しゴムはんこは割と手軽に、できるものだなと思って」
参加者:「人にプレゼントする時に押すと、はがきにちょっと押すとよろこばれるとか、そういう多様性、いろいろなものに使えるのがいいですね。Tシャツとかに押したり何にでも応用できるのがいい」
新型コロナの感染状況が落ちいていることもあり、津久井さんは以前のように直接人と触れ合いながら
教える機会を増やしています。活動の原動力となっているのは、街を、熱海を元気にしたいという思いです
津久井智子さん:「オンラインでやってもいまいち臨場感がなかったりダイレクトな反応がもらえなかったり、お客さん同士のコミュニケーションがなかったりするので、やっぱり直接教えるほうがやりがいはぜんぜんありますね。ニッチなカルチャーなので、知ってる人だけが楽しければいいのかなと思うんですけど。
自分ができる手作りとかデザインで、街を楽しく彩るお仕事ができるって、すごい幸せなことだなと思います。笑顔になってもらえたら、一番幸せですね」