コロナ禍で苦しむラーメン店 乗り越えるヒントは「屋台」にあり 静岡・伊豆の国市

 先が見えないコロナ禍で苦境が続いているラーメン店。 倒産件数は今年の1月から先月まで全国で34件と過去最多のペースで増え続けています。3密を避ける為に店に客が戻って来ないことが原因の一つだと言われています。

画像: コロナ禍で苦しむラーメン店 乗り越えるヒントは「屋台」にあり 静岡・伊豆の国市

 先が見えないコロナ禍で苦境が続いているラーメン店。 倒産件数は今年の1月から先月まで全国で34件と過去最多のペースで増え続けています。3密を避ける為に店に客が戻って来ないことが原因の一つだと言われています。
   
 そんな中、元気なラーメン店が伊豆の国市の伊豆長岡にありました。昔ながらの屋台ラーメンです。3密を回避出来るオープンテラスで、本格的なラーメンを味わえるこの店。金曜、土曜と週末だけのオープンですが、多くの客が訪れます。

「屋台のお祭り感を大事に」

 店主が住む伊豆市修善寺。 麺屋台かじまやの店主、吉島一大さん(47)。従業員はいませんが、常連客に助けられながら店を続けています。この屋台も常連客の力を借りて完成。

Q 屋台を始めたきっかけは?
麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「ずっと同じ店舗にいるのが苦手。自分は出歩くのが好き」

 神奈川出身の吉島さんは独学でラーメンを学び、 沖縄で10年間、店舗型のラーメン店を営んでいました。その後、知人の進めで静岡に移住。7年前から屋台ラーメン店を始めました。

麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「味に関しては自信があるけど。それよりも屋台のお祭り感を大事にしている」

 この日は水曜日。週末に向けて自宅でスープの仕込み中。クチコミで人気になった屋台ですが、緊急事態宣言中は、休業する日が多かったと言います。
 
麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「GW中は毎日やろうと思ったけど、営業出来なかった。気持ち的にダメージを食らいました。他の店舗なら家賃は高いし、従業員もいるし、自分以上につらいだろうなと思った」

「バッテリー、壊しちゃった」

画像: 「バッテリー、壊しちゃった」

 また、営業が始まる週末を迎えます。あいにくの雨模様。開店3時間前。自宅から食材や鍋などの調理器具を屋台に運びます。 吉島さん1人で…。
 
 と、ここでトラブルが…

麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「バッテリーを壊しちゃった。雨だからバッテリーを外していた。家で充電していた。プラスとマイナスを間違えて配線してしまった」

 バッテリーがなければ営業は出来ません。急きょ、バッテリーを持っている常連客に連絡。とりあえず、現地で合流する約束をしました。

店を開くのは、まんじゅう店駐車場…代表「屋台村みたいにしたい」

画像: 店を開くのは、まんじゅう店駐車場…代表「屋台村みたいにしたい」

まんじゅう店の駐車場を無料で借りる

 伊豆市修善寺から車でおよそ20分、伊豆の国市長岡。吉島さんはまんじゅう店の駐車場を借りて屋台を開いています。

Q 駐車場代は?
麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「快く貸してもらっている。神様です」

 温泉街として有名な伊豆長岡で80年前から店を開いている黒柳。吉島さんが神様と呼ぶラーメンが大好きなまんじゅう店の代表。

ディレクター:なぜ無償で貸している?

まんじゅう店代表:「観光地、特に(伊豆長岡)温泉街があまり潤っていないので、屋台村みたいになったらいいなと思って」

常連客の手助けで…

画像: 常連客の手助けで…

 店の常連客がバッテリーを持ってきてくれました。電気はつくのでしょうか? つきました。

常連客:「困った時は 自分の出来る限りのことは手伝ってあげたい」

麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「何かと持ってきてくれる。テーブルが無い時も『使ってください』と持ってきてくれた」

 客に支えられている吉島さん。3密を避けるようにと言われるようになった今年の5月にはこんな出来事が…。

一番困るのは「忘れ物」

画像1: 一番困るのは「忘れ物」

麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「ここ(駐車場)にお客さんがくる。駐車場が広い。お客さんにテーブルとイスを持ってきてもらった。軽トラで来て荷台で食べている。親子で来てキャンプテーブルで食べた。面白い雰囲気になった」  
 常連客との絆はより深まったと吉島さんは言います。
   
ディレクター:屋台の営業で困ることは?

麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「忘れ物。愛知県のイベントに出店した時に、タレを忘れた。スーパーで食材を集めた。ミキサーや計量器も安いものを買った」

 色々ありましたがいよいよ開店。ですが…

麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「のりを忘れた!」

自宅に戻る時間はないのでコンビニへ。その直後!

客:「いないじゃん。座って待ってよ」

麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「のりを忘れちゃったんで買ってきました」

客:「良かったよ。店がやってて」

画像2: 一番困るのは「忘れ物」

 この日は魚貝塩ラーメンの1種類。トッピングにもこだわりが…

麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「チャーシューです。結構人気なんです」

客「炙りがおいしい」

屋台に客が集まってきました。 この店では、醤油ラーメンやみそラーメンなど営業日ごとにメニューを変えて提供。1人で作るには80杯が限度だと言います。  店主こだわりの塩ラーメンは、レモンがポイント。あののりものっていますよ。

 寒い中でのラーメン。体が温まりますよね。

ディレクター:屋台でラーメンを食べたことがある?

客:「そんなにない。ここぐらい」
「うまい。途中でレモンを絞ると味が変わっておいしい」

 開店から30分が経つと屋台は客で埋まりました。噂を聞いて初めて訪れた人も…

初めて来た客20代:「カッコいい。見たことがない。自分の世代ではどこにもない」

 こちらは毎週通っている常連客。

常連客:「1週間のご褒美」

 客と店主のコミュニケーションが深まるのも、屋台の魅力。この雰囲気こそが吉島さんがこだわる「お祭り感」です。

画像3: 一番困るのは「忘れ物」

 店主の仕事を増やさなために、客が容器を片付ける。印象的な光景が広がっていました。  午後11時閉店。全ての片付けが終わる頃には日をまたいでいました。

ディレクター:屋台ラーメンは続ける?
麺屋台かじまや店主 吉島一大さん:「天職だと思っている。色々な国で屋台をやりたい」

 苦境が続くラーメン業界。コロナ禍を乗り越えるヒントが屋台にありました。  

            10月24日放送