【土石流2年】「あの時を忘れちゃいけない」…復興支援団体が手作りの新聞を市内全世帯に配布へ 復興計画は二転三転で被災者は怒り爆発 静岡・熱海市
「テンカラ新聞」
伊地健治アナウンサー:「伊豆山の人たちに情報を発信するために、高橋さんたちが作っている新聞、それが、こちらテンカラ新聞です。発災から2年後の7月3日に新聞に折り込まれる物を特別にお借りしてきました。この新聞には、今も被災地の支援を続ける、さまざまな団体からの言葉が寄せられています」
6月30日、高橋さんは刷り上がった「テンカラ新聞」を新聞販売店に届けました。来週月曜、熱海市のほぼすべての家庭に配られます。新聞をつくった理由を、高橋さんに聞きました。
復興支援団体テンカラセン代表 高橋一美さん:「(災害の)風化防止もあるんですけど、あの時を忘れちゃいけないし、あの時、どれだけの人が携わって、どれだけの人が、大変な思いをしたのか、どれだけ今を大変な思いをして過ごしているのか、被災した人も、していない人も、熱海全体が知るべきだと思うんです。なので、伊豆山だけでなく熱海全域に、全戸配布という形をとっています。伊豆山で何か新しいことが起きるたびに記事にできるように、まい進していきたいと思います」
復興計画が二転三転
そうした中、熱海市が去年つくった「伊豆山復興まちづくり計画」の方針が、二転三転し、住民からは、批判の声が上がっています。
もともとの「復興まちづくり計画」は、市が、被災した土地を買収したのち、宅地造成を進め、分譲する、というものでした。しかし、今年5月、熱海市は地盤の復旧工事などは被災者が行い、その費用の90%を、市が補助するという「見直し案」を発表しました。
6月、熱海市役所で行われた説明会では…。
被災者:「買収分譲方式から補助金方式に変わりましたよね。なぜ1回目でこれが出てこなかったのか? 本来だったら、もっと1回目からいい案を出してくれて、みんなでやろうよということになる。説明が新聞等に出て、議会でも議員さんがいろいろな話をして、で、説明会が今あるというので、順番がおかしいような気がする」
被災者:「どれだけの手続きとか、業者との折衝が必要かなどを1回資料をいただいて、それでも負担は軽い。むしろ分譲方式よりも早く家を建て直すことができますよという根拠を示していただきたい」
被災者:「そもそも信頼関係が成り立っていないんですよ。もっと対話する場があってもよかったと思う。そういう場が少ないし、信頼関係がない中で、いくらこういう議論を重ねても不信感しかないですよ」
被災者:「話は進んでいないし、なんだか行ったり来たりの話で、この年になると全然分からなかった」
被災者「2年間何やっていたのって。(熱海市は)説明する回数が少なすぎますよね。何かあってからの対応って、後手後手が多すぎる」
被災者:「直接こうやって被災者と話す、意見を聞く、声を聞いてくれる機会があまりにも無さすぎた結果だと思う」
静岡・熱海市 斉藤栄市長:「きょう率直に厳しいご意見を踏まえて、信頼関係ということがあったが、一つ一つ皆様からいただいた要望や、もちろんできることできないこともあるが、誠実に対応していくことでしか応えられないと思っている」
熱海市は、今後も説明会を開き、復興計画への理解を住民に求めていくとしています。
伊豆山で、多くの被災者と接している高橋さんは、熱海市は、住民に対して、特にお年寄りに対して、より丁寧に説明をする必要があると指摘しています。
復興支援団体テンカラセン代表 高橋一美さん:「説明会を開くにあたっても、高齢者向けの説明会をしなければ意味がないでしょ、と。説明書、要旨をつくるにあたっても、30代が分からない説明書を60代、70代が分かるわけないんですよ。あなたたちが作ったものを、あなたの親に説明して、親が理解できたならやっと高齢者たちが、伊豆山の人たちが分かるレベルなので、それをふまえて、もう1度考えてもらいたい。明確な答えが出ていないので、首長なり行政が、もう少し明確な答えを出してもらえると、おばちゃんち、おじちゃんちも、もう少し明るい言葉がでるんじゃないかなと、すごく思います」
住民の帰還は9月の見込み
「警戒区域内」の一部の住宅では、ガスや水道など、ライフラインの復旧が進んでいて、9月には住民が帰還できる見込みです。
復興支援団体テンカラセン 代表 高橋一美さん
Q.高橋さんにとって「復興」というのは、どういう伊豆山になったら「復興が終わった」となる?
A.「えー、復興…、そうですね、町がきれいになったから終わりっていうのは絶対ないと思う。住みやすくなったところで、心の平安は訪れていないと思うし、なんですかね、またそこで1人1人、訪れて、声を聞きたいですね」