「牧之原の竜巻が吉田に移動したとは考えにくい」…複数の竜巻が同時発生か 自衛隊派遣めぐり浮き彫りになった新たな課題も 【静岡竜巻被害から1カ月】

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 竜巻被害から5日で1か月。被災現場では住民の証言や映像から、複数の竜巻が同時に発生するトルネード・アウトブレイクが起きた可能性が浮上しました。吉田町大幡にある建設会社。鉄筋の入った3階建ての建物にも大きな被害がありました。

「これが飛ばされた休憩室なんですよ」
Q.ここに当時人がいた?
A.「そうそう。1人がいて。そのまま飛ばされちゃった」

竜巻の大発生「トルネード・アウトブレイク」か

 中にいた男性は右ひざを骨折する重傷。今も休職しているといいます。この会社の防犯カメラの映像です。竜巻のあった9月5日。午後0時半ごろから次第に東からの雨風が強まります。その強さがピークを迎えた午後0時59分17秒に停電。映像が途絶えます。従業員は停電の直前ある音を聞きました。

従業員:「ヒュンヒュン言い出してバンって(電気が)消えた」

 その直後近くの交差点では会社の軽乗用車が横転しました。時刻は午後0時59分34秒。竜巻の影響とみられます。交差点近くの住宅では…

住民:「東のほうから風が入ってきて、家の中を風が通って西側に風が通ってガラスが割れた」

 その隣の家でも…

隣家住民
Q.ご自宅の瓦が西のほうに飛んで行った?
A.そう、そう、そう

 近くの飲食店で撮影された映像です。画面右側、東の方角から西に向かって強い雨風が。

川崎豊記者:「あちら東側にはブルーシートに覆われた被害家屋が見えます。そしてその手前物干しざおがあるところ、この建物2階建てだったんですが、この2階部分が竜巻に飛ばされて、ブロック塀に触れてさらに西側まで飛ばされたということです」

 建設会社。付近の住宅。いずれも東から西に向かって風が吹き、物が飛ばされていました。建設会社から500メートルほど西に位置するこちらの家。竜巻の瞬間が撮影されていました。

 東からの雨と風が吹き続け竜巻に巻き込まれたのが午後1時1分40秒。午後0時59分34秒に交差点で車が横転したおよそ2分後に500メートル西で竜巻に巻き込まれたことになります。一方、牧之原市では午後0時57分に西から東に移動する竜巻が映像にとらえられています。つまり、ほぼ同じ時間帯に正反対の方向に進む竜巻が起きたことが分かってきました。

防衛大学校 小林文明教授:「牧之原で起こったものが、その後吉田町に移動したというのはなかなかこれ考えづらい部分がありますよね」

 気象学から竜巻を研究する防衛大の小林文明教授。吉田町と牧之原市の竜巻は「別のもの」という見方を示した上で、静岡で竜巻の大発生「トルネード・アウトブレイク」が起きたとみています。

防衛大学校 小林文明教授:「1日10個以上の竜巻を生む事例をアウトブレイクって言ってますけどもね。トルネード・アウトブレイクと言ってもいいようなことがやっぱり静岡およびその周辺で起こったと」

 990棟の住宅に被害が及んだ牧之原市では復旧作業がいまだ進められています。

 足場が組まれ修繕作業が行われたり、ショベルカーで解体作業が行われている場所も。日常を取り戻すのには、まだまだ時間がかかってしまいそうです。

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自衛隊派遣めぐり新たな課題も浮上

 そんな中、牧之原市が発災後、県に自衛隊派遣を求めたものの、実現しなかったことがわかっています。

静岡・鈴木康友知事:「自衛隊に打診した。しかし自衛隊としては今回の案件については派遣の条件を満たさないということで、派遣をしないという方針だった」

 「自衛隊が派遣を断った」と説明していた静岡県。これに対し、異なる見解を示したのが、陸上自衛隊のトップです。

陸上自衛隊 荒井正芳陸上幕僚長:「自治体等により対応が可能であると34連隊と県との間で認識共有がなされたことから、災害要請が発出されなかったと承知している」

 正式な派遣要請は受けていないとして、事前調整の段階で、災害派遣の要件を満たさないことを県とも共有していたとの認識を示しました。

静岡・牧之原市 杉本基久雄市長:「そこは齟齬があるのはどうなの?と思う。7日に知事が来た時に知事に直にお願いした。そしたら知事は『分かりました。要請します』と言ったが、結果的に自衛隊の発表だと要請は来ていない」

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 3日、取材に応じた静岡県の危機管理監は自衛隊が一方的に断ったともとれる見解を撤回し謝罪しました。

静岡県 酒井浩行危機管理監:「改めて内部で確認したところ、自衛隊との調整の中で県から自衛隊に対して今回の事案については非代替性にかけることを述べていたことが判明しました」

 担当者が事前調整を意見交換程度と認識していたことが原因だと説明しました。

酒井浩行危機管理監:「我々の組織の中で意思疎通がしっかり出来ていなかったことは、しっかり反省して、今後このようなことがないように対応していきたいと考えている」

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