水害を防ぐ逆転の発想「水に浮かぶ家」に新たな可能性 浜松市
1階部分が水没した家。ソファや机が水に浮いています。
一方、こちらの家。家そのものが浮かんでいます。リビングの家具に変化はありません。 浜松市の住宅メーカーが開発した「水に浮かぶ家」です。
浜松市の住宅メーカー「一条工務店」。全国で、年間約1万4000棟の新築住宅を手掛けています。南区にある工場では、「耐水害住宅」が体験できます。文字通り水害に耐えることができる住宅です。
林アナ 「今、注水が始まりました。ものすごい勢いでこの家の周りに水がたまり始めています。見るだけだとかなりの量ですね」
こちらの体験ブースでは、35立方メートルの水を一気に流し込みます。
しかし、一体なぜ、この家を開発したのでしょうか…。
一条工務店開発責任者 萩原浩さん
「この話は今から5年前に遡るが、鬼怒川の決壊という大きい水害がありました。その時に実際に被害にあわれたお客様がいて、新築住宅で水害にあった時の悲惨さというか、ダメージというのは、本当に大変なこと。それを私たちの技術で何とかしようということで始まって、5年かかってここまで来た」
開発のきっかけは、近年、全国で毎年のように大きな被害が出ている水害でした。
浸水しない秘密は床下に
水を入れ始めてから5分ほどが経過…。
林アナ
「今、サッシを超えてきました。水位がサッシを超えているんですが、水が全然内側へ入ってきていないです」
水に囲まれても浸水しません。その秘密は。
「耐水害住宅」が浸水しない理由の1つが、家の床下の換気口に隠されています。 通常の換気口は水位が上がると床下に水が流れ込みます。一方、耐水害住宅には水が入り込みません。
一条工務店開発責任者 荻原さん:「今この状態で外側についているものです。普通は換気をとるための穴が開いているだけなので、外の水位が上がれば水が全部基礎の中に入って、最終的には床上浸水になる。それを防ぐために内側に工夫があって、この白の部分ですね。水の浮力でこの内側にあるパッキンが浮上してくる」
他にも、浸水の原因となるのが、浴槽やトイレからの下水の逆流です。この逆流対策のため、特殊な弁がついた排水管を設置しています。
水没しないよう「浮かせる」という逆転の発想
これらの浸水対策に新たに今年加わったのが、「水に浮く」という技術。水位が上がってくるにつれて、浮きあがっていきます。
林アナ
「120センチを水位が超えてきました。この体験棟の建物の浮上の目安の水位だということで、建物が浮いてくるんですかね…、あ、ちょっとここ見てもらえますか? 動いているのわかりますかね? 小刻みに今、あ、あ、浮いていますね!」
水没しないように家を「浮かせる」という逆転の発想。
一条工務店開発責任者 萩原さん 「ただ浮かせたときに一番問題なのが、建物が移動するということ。船を係留するのと同じで、建物の四隅に設定した鋼管杭と建物を連結して、移動しないような仕組みを今回導入した」
家はワイヤで敷地内に打ち込まれたポールとつながっていて、浮き上がっても流れ出さないようになっています。
浸水を防ぐだけでなく、浮かび上がって、水没も免れる住宅。常識にとらわれない新しい形と可能性を示しています。