温泉旅館に若者を…アフターコロナ見据え高校生がプロデュース キーワードの『チル』とは? 静岡・伊豆の国市
「窓の近くにハンモックとかあったほうが」
「あー。確かに。ふかふかのソファーとか」
「で、プロジェクターを座りながら見る」
旅館の部屋の内装について、支配人と意見を交わす高校生たち。ここは伊豆の国市・伊豆長岡温泉にある、創業58年の旅館「おおとり荘」。館内は落ち着いた雰囲気で、年配の方に人気のある宿泊施設です。
温泉旅館のPR動画 制作したのは高校生
それが…
●高校生制作の動画
軽快な音楽に乗せて踊っているのは、伊豆長岡の現役の芸者。そして、若者がスケートボードで滑り、ダンスで魅せる。
この動画は、東京にある、ファッションやヘアメイク、グラフィックなどを学ぶ専門スクール「バンタンデザイン研究所」の高等部のメンバーが制作した「おおとり荘」のPR動画です。
先月、この動画がユーチューブで公開されると、それに反応した若い世代などから、100件を超える問い合わせがきました。
温泉旅館と若者向けの動画という、一見、対極に位置するような組み合わせ。この動画が作られた経緯について、「おおとり荘」の支配人はこう話します。
おおとり荘 原勝政支配人(56)
「県民割のおかげで、お客さんもだいぶ戻ってきました。大変うれしく思っていますけど、通常に戻ったときにどうなるかというのを常に考えてやらないと、その辺のシフト、考えたときにこういった若いお客さんの力も必要だと思って」
アフターコロナも見越して、客層を若年層にも広げたいという温泉旅館。一方で、コロナのため、制作した作品の発表の場が少なくなっていた高校生たち。その両者がタッグを組んだことで、この動画が誕生しました。
動画のキーワードの『チル』とは…
学校の講師らの監修のもと、高校生たちはヘアメイクや衣装のスタイリング、そして出演も担当。動画に出演した角川花さん(高3)は。
角川花さん(高3)
「〝チル〟なイメージの撮影というのが、結構意外とはまっていて、普段一緒に学校生活を送っている友達との撮影だったので、楽しかったです」
ここで出てきた「チル」という言葉がキーワード。「チルい」とは、「リラックスする」とか「落ち着く」という意味の英語「Chill Out(チルアウト)」を語源とした若者の言葉。高校生たちは、この「チルい」をテーマにPR動画を制作しました。
高校生(3年)
「まず若者と老舗旅館という時点で結構かけ離れているじゃないですか。だからこそチルという、さらに若者しか使わないであろう言葉を組み合わせることで、面白さが出るんじゃないかなって思って」
動画では「おおとり荘」を改名して「おおチル荘」ということに。これには支配人も。
おおとり荘 原勝政支配人(56)
「これが当初の企画書です。びっくりなんですけど、ここで名前変えましょうみたいな。おおチル荘といって、ちょっと言葉がですね、おおチルというのは、えって思いまして、昭和の人間なんで、どきっとしちゃいますよね、おおチルというのは。ただ「チル」という言葉というのを若い子はみんな使っているので、付いていこうと」
動画と連動してキャンペーン
「おおとり荘」では、この動画と連動して、特別宿泊プラン「おおチル荘 宿泊キャンペーン」を始めました。女性用浴衣の無料貸し出しや、料理長特製の映えスイーツなどの特典がついてさらに通常料金よりも最大で40%もオフになるプラン。
普段40分2000円の家族風呂も無料で使えます。すでに予約が、20代から家族連れ、カップルなど6組入っていて、高校生たちがプロデュースした効果が、早くも出てきています。
おおとり荘 原勝政支配人(56)
「こんなに急に注文が入るとは思っていなかったので、こっちも逆に戸惑っています。職員とか周りの人間が言ってくれないことをズバズバ言ってくれるというのは、意見としてというよりも、何か考えさせられることが非常にあるので、その辺に関しては勉強になるなということと、取り入れられる事は取り入れていきたいなとは思っています」
現在行われている県民割を使えば、5000円の割引と2000円のクーポンがついてくるという追い風もあり、おおとり荘と高校生たちは、このプロデュースによって去年よりも売り上げ1.5倍の増加を目指しています。
部屋もプロデュース テーマは「チルい部屋」
そして、動画に続き、第2弾となる仕掛けも始まりました。
●部屋でやりとり
高校生:「わー、すごい」
原支配人:「ここをどうするとかね。例えばこんなカバーも、なんか昭和的なのがいいのか、もうちょっと何かしたらいいのか」
高校生:「鏡とか欲しいよね。」
高校生:「あ、確かに。」
高校生:「こことかに。ちょっと大きめな鏡。若い子はいいですよね」
今度は、支配人から高校生たちに部屋を一室プロデュースして欲しいという依頼が出されました。もちろんテーマは「チルい部屋」。その狙いについて、原支配人は。
おおとり荘 原勝政支配人(56)
「学生さん達じゃないと言わないような意見がやっぱりあるので、例えば、職員にどうしたいこうしたいって言ったら、当たりさわりないようなそんなのお金かかるから無理だよとか、/なんか守りから入ってくるんで、(高校生は)自分が泊まるんだったらという感覚で言ってくれるので」
高校生たちから、早速アイデアが出てきます。
●部屋でやりとり
角川さん:「テレビじゃなくて、スクリーン。プロジェクター。」電気とかも、なんか周りにカラフルな、LEDみたいなちっちゃい、ちょっとおしゃれな」
高校生:「かわいい。おしゃれ」
高校生:「ミラーボール付ける。クラブになる」
この日、初めて部屋を見た高校生たち。どう、「チルい部屋」にプロデュースしていくのでしょうか。
角川花さん(高3)
「静岡って、富士山とかもあって結構日本のイメージが強いと思うんですけど、そういう日本のイメージが強いところに、そういうチルなものとか、インテリアとか取り入れたらすごい面白いなって思いました」
「おおとり荘」も、早速、高校生のアイデアを取り入れて、今はコロナで使っていない館内にあるスナックから今月中に、ミラーボールをこの部屋に移設することを決めました。
部屋全体については、今、高校生たちがプランを練っていて、提案が来たところで、改装に着手する予定です。
おおとり荘 原勝政支配人(56)
「あまりコストもかけられないので、その中で一番ベストを選ぼうと思っていまして、若い子も、まず喜んでもらうという事が先決ですけど、目上の方も、これもなかなかいいねと思えるようなものも作っていきたいなと思っているので、若い子たちに案をもらいながら、新しい部屋というのを作り上げていきたいなと思っています」