大井川鉄道は運休中… でも「サヨばあちゃんの休憩所」は閉めません
台風15号で大井川鉄道は運休に
諸田サヨさん:「味付けのおかずが多いから、これはあっさりと塩で焼く」
諸田サヨさん、86歳。大井川本線・家山駅のひとつ先、復旧のめどが立っていない区間にある抜里駅で食堂を営んでいます。その名も「サヨばあちゃんの休憩所」。週末のお昼だけ営業し、観光客らに食事を提供しています。
諸田サヨさん:「この辺りからこちらの畑がずっと沢沿いにね、がれきがいっぱい流れ込んで」
大雨によって近くにある上手川(うわてがわ)が氾濫。駅舎に被害はありませんでしたが、濁流は道路や周辺の茶畑に流れ込みました。本来ならこれから観光客が増える時期ですが、鉄道が運休していることで抜里駅周辺はいつになく物静かな状態に。それでも、諸田さんが食堂を閉めることはありません。
諸田サヨさん:「ご予約の方がいれば、前もって準備もできる。そうでなくても皆さんふらりとサポーターの方が、毎週土日はサポーターの方が何人かいらっしゃるので、その方と一緒に畑をやったり、草取りしたり、面白いことも遊びも一緒に兼ねてやったりしながら、どうせ生きているんだから、楽しい人生を過ごしたいと思っているから一緒になってやっていこうかと思います」
今週も「サポーター」が…
「サポーター」とは、「サヨばあちゃんの休憩所」のファンのこと。こちらはサポーターの一人、清水徹さん。
諸田さんの手伝いをするために時間を見つけては、島田市から車で40分ほどかけて訪れているそうです。
清水徹さん:「手伝っている私たちも刺激をもらって、なんていうのかな、一日充実した気持ちになって帰れる」
諸田さんは駅舎の隣にある畑で野菜を育てています。食堂で使う“メイドイン抜里”の食材です。清水さんが里芋の収穫にチャレンジしますが…。
諸田さん:「こういう掘り方をするもんで、私が言うんだけど」
清水さん:「ほれほれ」
諸田さん:「正規の掘り方でないこれ、本当はね。正規の掘り方っていうのはこういうふうに取ってさ、こういう残った芋がないように、きれいに芋が出るんだけど、お兄さんは」
清水さん:「危ないな」
諸田さん:「芋が出てくるんだ」
愛のある言葉でダメ出しを受けていました。
食堂には6人の予約が…
諸田サヨさん:「おいしいご飯炊きたいでね」
この日、食堂には6人の予約が入っていました。普段は諸田さん一人ですべて準備しますが、今回はサポーターが手伝ってくれることに。
諸田さん:「お餅が紫(の包み紙)がいいけどな、紫がお寿司にしたらちょっと地味だけどな。これ、ピンクにしたいな」
女性:「おいなりさん、油が付いているから」
女性:「あ、変えられないや。ピンクは?」
諸田さん:「ピンクをおにぎり」
正午過ぎ、予約したお客がやって来ました。
諸田サヨさん:「こんにちは、いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
皆さん、四国からはるばるやってきたそうです。食堂が久々に明るい声に包まれました。
四国からの観光客は…
諸田サヨさん:「お昼は皿いっぱいに、その日に作ったものを全部お出しして皆さんにお腹いっぱいたべてもらってお代を500円いただいております。よろしくお願いします。これがサヨばあさんの仕事です」
女性:「材料はほとんどこの地域で?」
諸田さん:「材料はほとんどこの隣の畑から」
女性:「収穫したものですか」
諸田さん:「お野菜はここの」
女性:「カボチャから」
四国からの観光客:「お味噌汁にずいき(里芋の茎)が入っていましたよね。あれが季節のね、ずいきなんてあるものだけど、実際には下のお芋しか今食べないでしょ。ずいきが売っていないし、幼い頃に酢の物に、そんなものにした思い出がありますので、あ、ずいきが入っていると思って、すごい、さすがって感じでよかったです」
諸田サヨさん:「助けてくださる方は立派な人たちが多い。私が教わるくらい。私一人では大きなことはできない。お願いするとお手伝いさんが駆けつけてくれる。だから大勢(お客が)集まっても困らないのが本当に皆さんのおかげなんですよ。いつも感謝感謝です。足を向けて寝られないくらいうれしいことです。本当にありがたいことです」