廃止から90年 よみがえる御殿場馬車鉄道 写真を元に独自の図面で製作・復元
後世に伝えたい
客車を引っ張って線路を行くのは、1頭の馬。御殿場市教育委員会に残る「御殿場馬車鉄道」の写真です。明治31年から、現在の御殿場市と小山町の間およそ18キロを結び、現在のバスのような役割を果たしていたといいます。しかし鉄道網の発達とともに、次第に利用客が減り、昭和の初めにその役割を終えました。
この馬車鉄道を復活させようと、取り組んでいるのが「御殿場馬車鉄道研究会」の勝又祐介さんです。
勝又祐介さん:「私を含め、御殿場に昔、馬車鉄道が走ってたということを知ってる方のほうがごくわずか。ちゃんと歴史を事実として後世に伝えたいという思いから」
想像しながら図面起こし
そして、製作を引き受けたのが、メーカーの技術者だった富士宮市の佐野直文さん。自宅にはずらりと機械が並び、これまでも鉄道模型などを手がけてきました。そんな経験豊富な佐野さんも、馬車鉄道の製作は大きな壁がありました。
佐野直文さん:「ちょっと手の届かない存在でしたね。馬車鉄道は。資料がまったくないというのは、全くないのに等しい。古い写真が数枚あるだけ」
製作に欠かせない、図面などの資料がほとんど残っていなかったのです。そこで、写真をもとに想像しながら独自に図面を書き起こすことに。考えては作り、作っては考え…。床にチョークで図面を書きながら作業を進めたことも。
佐野直文さん:「ほとんどがそういうやり方ですね。良いのか、悪いのかわからないけど。、同じ部品を作れったって出来ないです。図面消えちゃってますからね」
完成まで半年
1日のほとんどの時間を馬車鉄道の製作に費やし、試行錯誤を繰り返しながら、かけた時間は実に半年。ようやく馬車鉄道の客車が完成しました。
Q、出来栄えは?
佐野直文さん:「元の形がはっきりしてないから、100%っていうことは言いたいけど、言えないです。ただし、みんなの力で大勢の力を借りて、これ以上のものを作るのは大変だろうな、というところまでは行ったと思っている」
そして12日。お披露目会が行われました。出来上がった客車は木製で長さ3.5メートル、幅1.5メートル。8人が乗ることができます。前後にはブレーキをかける御者(ぎょしゃ)が乗るデッキが設けられています。廃止からおよそ90年。御殿場馬車鉄道がここに復活です。
製作資金はクラウドファンディング
12日は、製作資金を集めるクラウドファンディングに賛同してくれた人たちが集まり、さっそく試乗。馬の手配が間に合わず手押しとなりましたが、趣のある光景が線路上によみがえりました。
観客(小山町から):「よくこれだけ出来たな、ということが実感としてわかった。素晴らしいものだと思います」
観客(埼玉県から):「これだけの作りで、令和の時代にしっかり再現されたというのが、ましてクラウドファンディングでやれたというのは本当に素晴らしいこと」
子供たちが興味をもってくれたら…
半年かけたプロジェクトが、ようやく実を結びました。
勝又祐介さん:「まさかこんなに大変だなんて、始め思ってなかったんです。感慨ひとしおの一言につきると思います」
佐野直文さん:「あの笑顔っていうのが、僕は期待してました。大人の人の笑顔もさることながら、子供の笑顔ってのは純粋ですからね。僕自身もニコニコしながら見せていただきました。これを使って、子供たちに興味をもってもらうとか、昔こんなのが御殿場走ってたんだよ、教材資料に使っていただきたい」
今後はイベントなどで、実際に馬がひいて運行するということです。