静岡市の住宅地にも「買い物難民」? 山間地だけではない「移動スーパー」需要 その人気の秘密とは…
ドライバー:「こんにちは!」
子ども:「この車のやつ、荷物運んでるんだ」
移動スーパー「とくし丸」
子どもも気になるこの車。静岡県内チェーンのスーパー「ヒバリヤ」が行う移動スーパー「とくし丸」です。ニンジンやトマトなどの新鮮な野菜や、色とりどりのフルーツ。さらにはお寿司まで。お客さんがカゴいっぱいに商品を入れる様子は、まさにスーパーそのもの。
買い物客:「おっ、すごいじゃん。メークイーン、高いね」
ディレクター:「ジャガイモはそうですね」
買い物客:「ジャガイモね、今すごく高い」
客(父親)」:「ブドウ食べる?安いね、結構」
孫:「ブドウ食べる」
祖母:「食べてみる?これにしよっか」
孫:「じゃあね、ブドウはね、公園で食べよう」
この車を走らせる、ヒバリヤの内藤さん。その1日は朝の積み込みから始まります。テキパキと手際よく並べられていく商品。その数はおよそ800点。価格はどれも「店頭価格プラス10円」です。
「御用聞き」の役目も
ヒバリヤ
内藤浩和さん:「とりあえず店に並んでいるものは、だいたい(置いている)って感じ」
ディレクター:「ひと通り何でもあるような状態?」
内藤さん:「そうですね『移動スーパー』なので」
内藤さんこだわりの商品の数々。置かれているのは定番品だけではありません。
客:「こしあんにしよっか。いっぱい買っちゃったね。大人数だから」
こどもの日が近いということで「かしわ餅」も。旬のものまでフォローされた品揃えに、初めて利用したという女性は…
女性客:「こんなにいっぱい商品があるとは思わなかったので。納豆と、リンゴ、それと油揚げ。それと、これです!(干しいも見せて)」
ただ、時にはこんな場面も…
客:「あれ持ってないしょ?バスの…バスなんだっけ?」
内藤さん:「マジックリン?」
客:「マジックリン」
内藤さん:「ないや」
客:「今度持ってきて」
置かれていない商品も頼めば用意してくれる「御用聞き」の役目も人気の理由です。
「買い物難民」は静岡市の住宅地にも?
こうした移動スーパーは県内でも増えてきています。先月には浜松市とイオンなどにより、浜松市の山間部・天竜区でも始まりました。
客:「普段は川根の方に行ったりとか、川根(のスーパー)は20km近く」
客:「浜松まで行くときに、その途中で買ってくる。1時間半から2時間」
記者:「車で行くんですか?」
客:「そうそう」
高齢化や過疎化が進む山間地におけるサービスというイメージも強い「移動スーパー」ですが…実は、それだけではありません。「とくし丸」が回っているのは、静岡市の住宅街です。
客:「買い物に行くのに、ちょっとしずてつ(ストア)まで、遠いじゃないですか。帰りがね、もう買っちゃうでしょ。重いもんでついついね。リュックはいっぱい、両手には(袋を持って)、だもんでついついね、待ってます(とくし丸が)来るのを」
農林水産省は、最寄りの店舗から500m以上あり、自動車を利用できない65歳以上の高齢者を「食料品アクセス困難人口」と定義。県内では、65歳以上の5人に1人以上があてはまり、山間部に留まらず県内各地に広がっています。
こうした中、ヒバリヤでは6年前から「移動スーパー」をスタート。今では静岡市、島田市、富士宮市で6台が稼働しています。内藤さんが運転する「とくし丸」は、この日静岡市の住宅や施設など9カ所を回りました。
客の楽しみは買い物以外にも
軽快な音楽に誘われるように、続々と集まって来るお客さんたち。皆さんの楽しみは、買い物だけではないようです。
客:「近所の人たちだからね、顔見知りの人が来ないとね、『あれ、どうしたのかな?』って心配したりして、電話したりして」
また、お客さん同士でこんなやり取りも…
男性客:「うちのカミさん、きょうめまいがしちゃったんだって」
女性客:「いやいやいや、大丈夫?」
男性客:「腹減ったなと思ってたらさ、これ(音楽)が聞こえたもんでさ。ひもじいよ、男じゃ」
女性客:「(料理)できないもんね」
男性客:「(マスクを指して)こういう状態なもんだから、全然家にこもって出ないの。便利だよ。だってうちはそこだから、そこからこれだけだから」
とくし丸の1日の売り上げ目標は、およそ8万円。これをクリアすれば、ヒバリヤでは移動スーパーを維持できると言います。1日を終え、内藤さんは…
ヒバリヤ
内藤浩和さん:「ひとりひとりの顔を思い浮かべながら、来週はこれを持っていかなきゃいけないとか、今いるお客様にきちっと、いいものや季節に合うものをちゃんと提供できれば、今のベースはキープできるかなと思います」