【なぜ】シラスが異例の豊漁 2か月で去年越え・100トン見込み 歴50年ベテラン漁師も驚き「海の変化」とは… 静岡・田子の浦漁港
静岡県富士市の田子の浦漁港。午前5時すぎ、まだ薄暗い港からシラス漁の船が次々と出港していきました。波しぶきをあげながら海へ向かった船は、およそ30分後、漁場に到着。漁師たちが網を引き始めると、その表情が一気に引き締まります。「回ったでしょ。(網で)引っ張っていく」
3人がかりで一気に網を引き上げると、中から現れたのは、ピチピチと跳ねる生シラスの大群でした。
港に戻ると、銀色に輝くシラスがカゴいっぱいに敷き詰められていました。「物が変わったね」「変わったよ。いいシラスになってきた」漁師たちからは、質の良さを実感する声が相次ぎます。漁師歴50年の芹澤豊さん(68)はこう話します。「ここ5年で一番いい。今年はもう40トンを超えている。このままいけば100トンはいく。」
実際、田子の浦では今シーズンの漁が始まってからわずか2カ月で、去年1年分の漁獲量を上回る“異例”の豊漁となっています。
日によっては、1回の操業で400キロから500キロの水揚げもあるといいます。一方で“豊漁ならでは”の変化も。「たくさん取れれば単価は下がる。去年より値段は落ちている」市場価格はやや下がっているものの、それでも港には活気があふれています。
漁港近くの食堂でも、その影響がはっきりと表れています。
開店前から10人以上が列が。目当ては“朝どれ”の生シラス。「苦みが少なくて甘い。ぷりぷりでおいしい」「去年は不漁だったから、今年は食べようと思って来た」来店客からは、そんな声が聞かれました。
大量のシラスをぜいたくに盛り付けた人気メニュー「日本一丼」も、今年は安定して提供できています。「去年はほとんど出せなかったが、今年は何日も提供できている」と店側も手応えを感じています。
なぜここまでの豊漁となっているのでしょうか。専門家は、シラスの親にあたるイワシの産卵数の増加と、生まれた稚魚の生存率の高さを挙げています。その背景の一つとみられているのが「黒潮大蛇行の終息」です。海の流れが変わったことで、イワシにとって過ごしやすい環境が広がった可能性があります。
さらに、沿岸で発生している赤潮も影響しているといいます。赤潮はプランクトンが大量発生した状態で、シラスにとっては“栄養の塊”。餌が豊富にあることで、成長や生存率の向上につながっている可能性があると指摘されています。
記録的ともいえる豊漁。その背景には海の変化がありました。