シカの衝突事故を防げ JR身延線あの手この手の対策 静岡

 近年、個体数が増え続け人里にも姿を現すシカ。交通機関に影響することも増えています。JRではあの手この手の工夫を凝らしています。

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シカの衝突事故を防げ JR身延線あの手この手の対策 静岡

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 線路沿いで鳴る甲高い音。シカを寄せ付けないための「忌避音(きひおん)」と呼ばれるものです。というのもJR富士駅から甲府駅を結ぶ身延線は…。

Q.シカとぶつかって遅延することってよくありますか?
通学に利用:「ありますね。それで学校に来られない人がいて、ちょっと授業の時間がずれたりとか。仕方ない、シカだけに」

通勤に利用:「乗っていて(シカに)ぶつかったのは1回。砕けるような音。ガゴガゴガゴみないな」

 身延線のシカとの衝突件数はここ10年で年々増加。2020年度は1月時点で175件に上ります。衝突して死んだり足が折れたりしたシカは、JRの現場の職員自らが線路の外に運び出します。

JR東海身延保線区 森田嵩章さん:「かわいそうだなと思うので、何とか列車に当たらないように対策を立てて、シカも守っていきたい」

 乗客を安全に運びシカも守りたいという気持ちから、森田さんが直々に提案したのが忌避音です。シカが警戒するときの鳴き声、と犬の鳴き声を混ぜ合わせています。シカが音に慣れるのを防ぐため、あえて鳴らしっぱなしにせず、列車が通る前だけ鳴る仕組みです。

 おととし11月から始め、シカの衝突件数と目撃件数は8割の削減に成功しました。

 こうした事態の原因となっているシカの増加について専門家は。

シカを研究する 静岡県立農林環境専門職大学 小林信一教授:「端的に言えば食べ物が豊富。人間が作っている農産物が豊富なので、それを食べることによってシカが増えている」
 
 県によるとシカによる県内の農業被害額は年間6000万円を超えます。個体数が増えたシカとの衝突を防ぎ乗客を安全に輸送するため、身延線ではほかにも対策を講じています。こちらは夜の身延線。なんとシカが舐めているのはレール。

小林教授:「鉄分が欲しいということで、舐めに来るんじゃないかと。シカは草だけではなく葉っぱも食べますけどもそれが主食で、それ以外は調味料みたいなものなんですかね。人間でいうと、そういうものとして必要」

 鉄道の車輪とレールがこすれたことで出る鉄粉を求めて、レールを舐めるといいます。そこで身延線沿線では、シカが安全な場所で鉄分補給をできるようにするため、レールから4~5メートル離れた獣道にシカ専用の鉄キャンディーを設置。鉄キャンディーは雨風にさらされても3カ月以上はもち、無味無臭でミネラル分が豊富です。

 またこちらは2メートルの柵の隙間。

原川朋華記者:「線路上には足ツボマットのような突起があり、私が歩いてみても角が刺さってとても歩きにくい」

 ほかにも、シカが歩くと足が抜け落ちてしまう8センチ四方の網を敷いて、シカが線路に入らないような対策など工夫が満載です。

JR東海身延保線区 酒井通孝区長:「将来的にはこういったものを、ロケーションに応じて色々と組み合わせが決まってくると思いますので、最適な組み合わせを設定して、できる限りお客様にご迷惑をおかけしないよう努力していきたい」