180℃の継承~浜松・天錦三代の天ぷら② なぜ行列は絶えないのか 百名店の天丼に隠された86歳職人の執念
浜松にある老舗の天ぷら店「天錦」。人気のグルメサイトでは、3.66の高評価を獲得。この暑さにも関わらず、お昼時には行列ができる人気店です。
客「衣が少し薄目で、その分素材の味を楽しめるのがよかったです」
客「重くないというか、あっさりしていて、好きです」
お客さん達を唸らせる、絶品の天丼とは?
Q:美味しく揚げるコツは?
利幸さん「衣をちょっと薄めにして、揚げたてを食べてほしいですね。薄めの衣のほうが、素材が生きます」
まずは、エビやキスなどの天ぷらを揚げます。「ネタがすっと上にあがってくると、出来上がりの証拠です」。さらに、音や色の変化を見極めながら、独特のリズムで、天ぷらを仕上げていきます。
そして、お店の名物、卵の黄身の天ぷらを揚げる際に、あの達人技が。高温の油の中に、指を突っ込みながら、揚げるんです。
利幸さん「ネタの形をそろえるのに、指を使いますね」
指を添えて、そっと油の中に入れないと、卵の黄身が割れてしまうのだとか。ご飯は、天丼に合うように少し硬めに炊き上げています。ここに、先ほど揚げた卵の黄身や、大葉。エビの天ぷらなどを、盛り付けたら。自家製の丼つゆをたっぷりと。そして、ここでもう一つの達人技が!
フタをくるっと1回転させて、かぶせたら、余分なつゆを切って完成させるんです。こうすることで、天ぷらとご飯に、まんべんなくつゆが染みわたり、美味しく仕上がるそうです。この華麗なテクニックに、お客さんは。
客「いや、すごいなと思いました。見てて楽しいですね」
利幸さん「お客さんも楽しんでほしい。時々落とすけどね」
完成したのが、こちらの天丼。エビの磯辺揚げに。卵豆腐の天ぷら。丼には、キスに、大葉。エビが4本乗って、ボリューム満点。エビの衣はサクサク。中は、ぷりぷりに仕上がっています。絶妙な火加減で揚げられた、卵の黄身の天ぷらは、とろりととろけ。濃厚な旨味が、口いっぱいに広がります。
客「美味しいです、初めて食べた食感です。」
客「ここでしか食べられないので、美味しいです。」
さらに、イカの大葉巻きに。クリームコロッケ。大葉の梅肉はさみ揚げなど。11種類の味が楽しめる、天ぷら定食も評判です。
利幸さん「やっぱり天ぷらは難しいですね。きょうは上手に揚がったぞという日は、少ないですね。ですから、今でも勉強です」
Q:利幸さんはいつから料理の世界へ?
A.「中卒で、昭和30年から」
利幸さんは、中学校卒業後、15歳から和食の道へ。腕を磨き、30歳の時に、念願の自分の店をオープンさせました。
利幸さん「ある程度、自分の力を試したいじゃないですか。そこから始めてみました」
今は、二代目で息子の幸司さん。そして…。利幸さんが、天ぷらを揚げる姿を真剣な眼差しで、見つめる青年がいました。
Q:こちらはどなた?
A.「孫です」
Q:お名前は?
A.「幹汰と言います。」
Q:親子三世代で店を経営している?
利幸さん「はい、そうです。いいですね、将来が楽しみです」
幸司さん「なかなかいいものです。もちろん喧嘩は絶えませんが、性格的にみんなが違うので」
元々店を継ぐ気は無かったという幹汰さん。東京の大学でスポーツ医療を学んだ後、複数の企業から内定をもらっていたそうですが、ある日、こんなことを考えたそうです。
幹汰さん「本当にこのままサラリーマンになるのがいいのかな、本当に自分がそれやりたいのかなっていう思いと、頭の片隅にあった“実家継がなくていいのかな”っていうのを考えて、やっぱり実家を継いで自分でやってみたいと思った」
東京の和食店で3年間修行した後、2年ほど前から、実家で働き始めました。この息子の決断に、父・幸司さんは。
幸司さん「居酒屋でみんなで飲んでいる時に“店継ぐよ”って言ってくれて、嬉しかった。“継いでよ”ってひと言も言っていなかったので、このまま僕の代で終わるかなと思っていたところに、その言葉だったので」
利幸さん「本当にうれしかったですね。これからまだまだこのお店が続くなと思って」
幹汰さん「天ぷらだけしかないので、うちは。それが全てなので、僕が継いで大丈夫かなという不安と、やらなきゃっていう、プレッシャーですね」
幹汰さんは、去年から、お昼の営業を、任されているそうで。そこでは…。
男性客「最初に来た時からだと、30年ぐらいですかね。」
男性客「30年ぐらいは来ているんじゃないかな。」
長年通う常連客に、三代目・幹汰さんの味は、受け入れられているのでしょうか? さらにおじいちゃんから受け継いだ、あの達人技も!
幹汰さん「手は全然やけどはしていないです」
Q:本当は熱いですよね?
幹汰さん「たまに熱いときあります」