台風10号、専門家は「犠牲者出なかったのは偶然」 高潮ハザードマップをどの自治体も作成していない静岡県

先日の台風10号でも、気象庁から高潮への警戒が呼びかけられました。しかし、この高潮のハザードマップがあるのは、全国でもごくわずかで、静岡県ではまだ作られていません。去年の台風19号で高潮の被害を受けた静岡県焼津市では、ハザードマップにない危険にどう備えるか試行錯誤が続いています。

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1999年には熊本県で12人が犠牲に

 去年10月、伊豆半島に上陸した台風19号。静岡市清水区や焼津市の沿岸部で広い範囲が浸水しました。特に焼津市では163棟が床上浸水の被害を受けました。その原因となったのが高潮です。

 高潮は、台風などが接近した時に気圧の低下と風により海面が上昇する現象です。沿岸部の海抜の低い土地では、台風の進路によってどこでも被害が起きる恐れがあるといいます。

近年、人的被害はありませんが、1999年には熊本県の旧不知火町(現・宇城市)で12人が犠牲になっています。

専門家「ほぼ津波みたいな現象」

静岡大学防災総合センター 牛山素行教授:「見た目のイメージとしてはほぼ津波みたいな現象。津波も海水面が高くなる。昨年も(19号で)そこまで広域的な被害とか犠牲者が出なかったが、それは偶然の結果というべき。犠牲者が出ることも十分ありうる」

去年の台風で高潮が押し寄せた焼津市では…

石田和外アナ:「焼津市の小川港です。去年の台風19号では、こちらから高潮が押し寄せました。そして木屋川も大雨で逆流し、ちょうどこのあたりから浸水が始まったということです」

 その時に近くで撮影された映像です。道路が川のようになり、住宅に押し寄せました。

床上浸水した男性:「(店先の)そこまで来たことは何回もある。これを越すことはなかった、水浸しですよ。(床上)12センチだから畳が浮いて」

 これまで経験したことのない浸水被害。地元自治会の嶋芳正会長は、高潮対策に頭を悩ませています。こちらは自治会でまとめた去年の台風19号で浸水したエリアです。しかし、市が公開しているハザードマップでは、木屋川周辺は浸水しない想定になっています。高潮のリスクについて反映されていないからです。

焼津市港第14自治会 嶋芳正会長:「高潮のデータが入り込んでいない中では、このハザードマップでは安心して自分たちの対策にはできない。それを見て信用するのはやめてくださいと」

高潮ハザードマップ掲載は132自治体だけ

 全国で高潮ハザードマップの整備が本格的に始まったのは、水防法が改正された5年前。現在、国交省のホームページに掲載されているのは、九州や瀬戸内海を中心にわずか132の自治体だけ。

 静岡県内はまだどの自治体も作成していません。

静岡県河川企画課 望月嘉徳課長:「静岡県は海岸線だけでも500キロを超える延長があるので、それぞれの施設の利用、管理者と連携しながら地区を分けて検討を進めている。静岡県としても遅れをとらないように鋭意進めて、なるべく早く公表できるように進めていきたい」

こうした状況に専門家は-。

静岡大学 防災総合センター 牛山素行教授:「(ハザードマップに)色が塗っていないところも安全とは言い切れない。ただ、どこで何が起こるか全く見当がつかないということではなくて、海岸付近の低い土地、山寄りのところでも川と同じくらいの高さのところは水の影響を受けると理解するといい」

焼津市港第14自治会 嶋芳正会長:「あそこに橋がある 今年度はそこからこの橋のあたりまで」

 高潮被害を受けた小川港周辺では、主に津波に対するハードの整備が進められています。

 地元ではこのほかに木屋川の河口に水門の設置を要望していますが、行政の予算も限られ、計画のめどは立っていません。

 自治会では、各町内会ごとに去年の浸水個所を検証し、行政の指示を待たずに事前避難することも検討しているといいます。

焼津市港第14自治会 嶋芳正会長:「自分たちが自然を知って、どういう状況の時に判断しなければならないかを、自分たちで知恵を出しながら状況をつかんで対応していく」

画像: 高潮ハザードマップ掲載は132自治体だけ